「先輩、好きです」

 腕の中に閉じ込めたままついに言葉が溢れ出す。
 ギュッと先輩も俺の背中に手を回してしがみついてきて、俺たちはしばらく初めてしたキスの気恥ずかしさを誤魔化すようにただ抱き締め合っていた。
 できるなら先輩の口から気持ちを聞いてみたい気もする。
 でも、ちょっと怖くて……だけど、最近はかなり笑って素を見せてくれることが多くて舞い上がるような言葉を聞けそうでもある。
 ただ、それは無理強いしたくなかった。
 理想を言えば、先輩も自然に溢れ出たような言葉が聞きたい。

「……先輩、そろそろ寒くないですか?」

 さすがにこんな二月の上旬にいつまでも外に居させるのは心配で顔を覗き込もうとするが、先輩はギュッとまだ俺の胸にしがみついてきた。

「無理……むしろ、暑い」
「それはそれで心配ですけど?」

 そうやって無理矢理引き剥がしてみると、まだ耳まで真っ赤にして眉を寄せた先輩と目が合う。
 その黒い瞳に吸い寄せられるようにリップが光るピンクの唇に近づいた。

「待っ……」

 グキッと音がするほど勢いよく顔を押されて呻く。

「もー!何でそんな手慣れてるの!?」
「俺、初めてでしたけど?」

 バシバシと叩いてくる手首を掴むと腰を屈めて顔を寄せた。

「え?」

 そろりと顔を上げた先輩の頬にキスをすると、ボンと音でもしたかの勢いでまた顔が赤くなる。

「どこが初めてよーっ!!」

 ワタワタしている先輩がかわいくて仕方ない。