「何でそんなのいちいち聞くの!?」
「はい?」

 掠れているその声を逃さないように聞きながら首を傾げる。

「そんなの聞かれたら……恥ずかしくて逃げちゃうでしょ!」

 こんな照れまくる先輩は反則じゃないか?

「じゃあ、聞かずにしていいんですか?」
「……ダメ」

 顔を寄せると、先輩は俺の顔に手を押し付けてきた。
 その手にチュッと音を立てるとビクッと先輩が跳ねる。
 そろりとこっちを見る姿がかわい過ぎた。

「どっちですか」

 笑ってしまうと、先輩はプクッと頬を膨らませる。

「……だって……ここ学校……」
「でも、部活終わり(こんな時間)だし、こんな寒い時に中庭(ここ)には誰も居ないですよ?」

 俯く先輩に再び近づいてその手を握った。
 先輩がこっちを見たお陰で絡む視線。
 間近にあって伸びたまつ毛の長ささえハッキリとわかる距離。
 初めてのキスに心臓をバクバクさせつつ、首を傾けながら角度を合わせて……フワッと触れた瞬間見たことないほど真っ赤になって逃げようとした先輩を引き寄せた。

「ダメ……見ないで」
「じゃあ、くっついてて下さい」

 ギュッと抱き締めつつ、俺だって一瞬感じた柔らかさを思い出して騒ぎ出しそうになっている。
 今、どんな顔になっているかわからなくて見られたくなかった。
 全く余裕はなくて、どうしたらいいかわからなくて……でも、嬉しくて、何度も反芻してしまって……。