いつもの中庭のいつものベンチ。

「……何かご機嫌じゃない?」

 隣に座る先輩に見上げられて、ギュッとその小さな体を腕の中に収める。

「だって先輩があまりにもかわいいから!」

 しっかり抱き締めると、先輩は照れたらしく俯いて俺の胸に顔をくっつけてきた。
 朝練と夕練中のあのキリッとした顔とのギャップにまたグッとくる。

「本当……何でそんなかわいいんですか」

 思わず溢すと、先輩は真っ赤な顔を少し上げてフルフルと首を横に振った。
 その眉が寄っていて、戸惑っているようなその姿もかわい過ぎて悶える。
 どんな先輩もかわい過ぎてヤバい。

「キス、していいですか?」

 色々堪え切れなくなってきて聞くと、先輩はピクッと跳ねてそろりとこっちを見た。
 そして、すぐにまた俺の胸にくっついて隠れる。

「先輩?」

 答えを聞きたくてもう一度言おうとすると、

「何でそんなの聞くの……」

 先輩は耳まで真っ赤にしながら小さ過ぎる声を出した。

「しちゃダメですか?」

 ちょっと落ち込んでそれが声にも出てしまうと、先輩は俺の腰辺りをギュッと握ってくる。

「……そうじゃなくて……」

 どんな顔をしているのか覗こうとすると、先輩はフィッと顔を背けて逃げた。

「……じゃあ、してもいいんですか?」

 逃げられたことで耳になったそこに聞いてみる。
 すると、ビクンと大きく跳ね上がった先輩はこっちを見て目が合うと、真っ赤な顔のままポカポカと俺の胸を叩いてきた。