月曜日になって……

「おはよ」

 朝練の準備中、声を掛けてきてくれたのは三木先輩。

「おはようございます」

 挨拶を返しながら三木先輩が居るということは……と菊川先輩を探してしまう。
 すると、三木先輩はくすくすと笑い出した。
 
「キクのこと、よろしくね!」
「はい!」

 即答した俺に満足そうな顔を見せると、三木先輩は準備をしている菊川先輩の方を見る。
 俺もそっちに視線を向けて眺めていると、三木先輩はゆっくり息を吐き出した。

「私はキクをいっぱい傷つけちゃったから……ごめんね」

 先輩が謝ってくるのをただ黙って聞く。

「キクと小嶋を応援しようと思った時もあったのに……結局私は小嶋と……一番残酷だよね」

 少し眉を寄せた三木先輩はそのまま両手で抱いていたボールに力を込めた。

「俺は感謝してますよ」
「え?」

 俺が本音をぶつけると、三木先輩は目を見開く。

「そのお陰で先輩はこっちを向いてくれたんで!」

 笑うと、先輩もフッと力を抜いた。

「凄いなぁ。吉井くんは」

 ポーンとボールを真上に投げるとキャッチして笑う。

「そうですか?」
「ずっと想い続けて振り向かせちゃうんだもん」

 またボールを両手で持った三木先輩に言われて、笑うしかなかった。

「先輩が誰を見ていようと好きだっただけですよ」

 俺の諦めが悪かっただけ。だが、

「そんだけ“好き”って言えるのがそもそも凄いよ!」

 先輩に言われて、そういうもんか……ととりあえず会釈を返した。