ファミレスに入ってもなかなか手を離したくなかった。
 普段は人目があるとすぐに離されるのに、先輩も離さないのはここが電車で少し来た場所だからかもしれない。
 さすがに席に案内されてテーブルを挟んでからは手も離れたが、先輩がフッと笑みを見せただけで嬉しくなる。

「何?じっとこっち見て」

 その先輩がテーブルにある注文用のタブレットを手にしてこっちを見てきた。

「いや、かわいいな、と思って」
「は?何言って……」

 ブワッと一気に顔を赤くする様子なんて何度見てもかわい過ぎておかしくなる気がする。

「幸せ過ぎて、俺、死ぬんですかね?」
「勝手に死んで私を一人にしないでくれる?」

 ちょっと口を曲げると、先輩はポチポチと慣れたようにタブレットを操作した。
 注文を終えて、二人でドリンクバーに立って……人とぶつかりそうになる先輩を引き寄せる。
 見上げてお礼を言ってくる先輩と目が合って微笑み合って……現実?とこっそり腕をつねってみた。

「何してんの?」

 すぐにバレて笑っておく。
 先輩と居るのが嬉し過ぎて、何をしても幸せだと感じる不思議。
 二人で席に戻ると、先輩を座らせておいて俺はスープを取りに再びスープバーへと歩いた。
 二種類のスープを見てとりあえず両方つけて運ぶ。
 先輩はどちらを選ぶか考えながら席に戻ると、

「え?マジで?いーじゃん!カラオケ行かね?」

 明らかにチャラい二人組の男が先輩に声を掛けていた。