力也と分かれて家に辿り着いたところで菊川先輩からメッセージが届く。

『終わったけど……もう帰っちゃったよね?』

 メッセージなのにちょっと伏し目がちで言ってチラッとこっちを見る先輩が見える気がした。
 いつも先輩がそうだからかもしれない。

『会えるならすぐ行きますよ?』

 返信すると、すぐに電話がかかってきた。

『今どこ?』

 声を聞いただけで嬉しいのはおかしいだろうか?

「ちょうど家に着いたとこです」

 自転車をしまうのはやめて家の前でハンドルに肘をつけて体重を掛ける。

『ならもう……』
「俺が会いたいんですよ!」

 シュンと少し声のトーンを落とした先輩の言葉を遮った。

『お昼まだでしょ?お腹空いたんじゃないの?』

 そう言いながらも声が少し嬉しそうなことに先輩は気付いているだろうか?

「それは先輩もでしょう?行きますよ!」

 答えながら自転車の向きを変えると、俺はそのまま駅に向かって走り出した。
 待ち合わせる駅を決めてからはスマホをポケットにしまって自転車のスピードを上げる。
 先輩に会える!
 しかも、先輩も待っていてくれる!
 その向かう間までドキドキして楽しいなんて!
 まだ寒い二月の始めなのに、俺はそんなの気にすることもなく全力で自転車を漕いだ。