「思ったよりデレッデレにはなってないな」
「どういう意味だよ」

 朝、共に自転車を漕ぎながら学校に向かう途中、力也に言われて眉を寄せる。

「流星ってバカップルになりそうじゃん?」

 それでも平然と言ってくる力也。

「何だそれ」
「だってめっちゃ尽くすだろ?」

 確かにその自覚はあって口を噤んだ。

「菊川先輩が相手だからかなぁ?付き合ってるなんて、言われてもあんまわかんないけど……もっと常にくっついてたりデレたり、甘々になるかと思ってたんだけどな」

 実際、部活終わりはベッタベタにくっついているし、帰ってからもメッセージのやり取りとか電話はしていて甘々な状態ではあるがそうとは言えない。
 力也の指摘通りだなんて認めたくなくて……菊川先輩が本当は甘えん坊だなんて知られたくなくてただ黙る。

「セイ先輩たちはしょっちゅう手繋いで歩いてんのに……お前らはそんなの一切ないとか……意外だったわ」

 むしろ、セイ先輩たちは一緒に居る時は自然とくっついているらしいが、それぞれの時は連絡も何も一切しない。
 俺たちはしょっちゅう連絡し合っているが、二人きりにならないとくっつくことはない。
 これはどちらが甘々なのか?
 少し考えてすぐにどうでもよくなった。
 朝練で学校に行けば先輩に会える。
 今はただ早く先輩に会いたかった。