「好きです」

 そのまま告げると、繋いでいない方の先輩の手が俺の腰に少しだけ触れる。

「本当にきみは……」
「好きです!」

 だが、もう一度言うと先輩は俺の胸をそっと押した。

「だから、吉井くんのこと考えちゃうようにはなったけどそれが好きかは……」
「俺のこと、嫌いではないんですよね?」

 眉を寄せた先輩に腰を屈めて距離を近づける。

「それは……まぁ……」

 逃げることはなかったのが嬉しかった。

「なら付き合って下さい!」
「いや……」

 戸惑う先輩に更に押す。

「すぐにちゃんと“好き”って言わせてみせるんで!」

 だって、ここで引くなんてできないから!
 諦めきれなかった先輩がこっちを向いたかもなら、そのまま引き寄せたかった。
 もうあんな辛そうな顔しないようにこっちを見ていて欲しい!

「……吉井くん、そんなアツいタイプだったっけ?」
「先輩のことで冷静になんて無理なんですよ!」

 フッと笑われて、真剣に返す。
 驚いたような顔をした先輩はすぐに表情を緩ませた。

「本当、おもしろいよねぇ!吉井くんは!」

 笑う先輩がこっちを見上げる。

「そうやってもっと笑わせますよ!」
「え?」
「だから、俺と付き合って下さい!」

 戸惑いを見せつつ、でも、頷いた先輩を俺はしっかり抱き締めた。