次の日、朝練前のセイ先輩と三木先輩はどう見たって恋人同士のじゃれ合いにしか見えなかった。
 三木先輩がセイ先輩のシャツの背に手を入れて、跳び上がるセイ先輩を見てまた笑う三木先輩。
 セイ先輩だって文句を言いつつも結局は隣に座って二人で手を繋いでいる。

「こらーっ!!お前らキャプテン同士、体育館で堂々とイチャついてんじゃねぇぞーっ!!愛だの恋だのでイチャイチャしたいならせめて体育館から出ろ!」

 トモ先輩が叫ぶと、二人は一緒に笑い出した。
 その二人の前に立ったのは菊川先輩。
 何かを言いつつ、ため息を吐いて三木先輩の腕を引いていた。
 菊川先輩に引きずられながら三木先輩は笑ってヒラヒラと手を振る。
 その姿にフッと笑ってからセイ先輩はスゥッと息を吸った。

「朝練、始めるぞ!整列っ!」

 男バスがエンドラインに並んで挨拶を終えた後で走り始めると、俺はいつもの舞台前に立ってノートを広げる。
 準備を終えてコートに向き直ると、女バスもラインで並んでいるのが見えた。
 また目を合わせて舌を出し合っている二人。
 それに気付いた菊川先輩がため息を吐くのを見てモヤモヤが募る。
 そんな顔してないで、こっち見て!!
 叫びたくなるのを堪えていると、不意に先輩がこっちを向いた。

「……もう笑いましょうよ」

 もうこれ以上あの顔を曇らせて欲しくない。