「大丈夫ですか?」

 今回は迷わず向かった中庭。
 やはりそこのベンチに先輩は座っていた。

「んー……意外と大丈夫でちょっとびっくりしてる」

 笑う先輩の顔は本当に無理をしている様子はなく、確かにどこか清々しさも感じる。

「なら、言ってたケーキ……食べに行きます?」
「うーん……もう少しここで風に当たってていい?」

 こんな寒い中?とは思うが、俺も付き合うことにして隣に座った。
 今日はお互いにコートも着ている分まだマシだ。
 でも、時間が経つとやはり寒くなってきて襟元を合わせると、菊川先輩がくしゃみをした。

「やっぱり寒いんじゃないですか」
「うん……一月の寒さナメてたね」

 プルプル震える先輩を見て俺は自分のマフラーを先輩に掛ける。

「いや!いいって!」
「俺が気になるんで」

 遠慮する先輩の言葉は聞かずにマフラーを巻くと、先輩は隠れてしまった口元を指で下げながらこっちを見上げた。
 そのかわいらしい仕草に胸を撃ち抜かれる。

「そこの自販機で温かいもの買わない?」

 ドキドキしながら少しでも暖を取りたくて頷いた。
 せめて、と思いつつ買う先輩の風除けになると先輩に笑われる。

「ごめんね。寒い中付き合わせて」

 ココアを二つ買った先輩は俺にも差し出してくれて笑った。

「何言ってるんですか」

 缶の暖かさが染みる。
 飲んだらケーキまで入らないよな?と思いつつ、今はその温もりを感じながら喉を潤した。