マギアンティア世界統一暦・1555年・7月23日・午前9時00分・マギアンティア世界・中央世界第一文明圏・ユーラシアン大陸東側・中央世界第一文明圏・ユーラシアン大陸・ゲルニアン帝国・フェリス侯爵家領海・ローレライ大海洋にて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



 マギアンティア世界統一暦・1555年・7月23日・午前9時丁度のこと、キリヤ公国連合国の統合司令官兼キリヤ公国連合国の総海軍の提督であり、ナデシコ自治統合軍・ナデシコ自治統合海軍の総司令官でもある山本五十鈴。



 勇治がキリヤ公国連合国軍部の中でも、一番に信頼を置いて居る人物達、その3人の軍幹部をトップに頂き、国軍の運営を任せて居る。



 他の軍の幹部の二人とは、足柄・一輝・宗輝国防大臣。元足柄室町幕府征夷大将軍王を務めていた元アマテラス神皇国の皇で有り、剣聖将軍と言われる程の腕前を持っている人物である。



 彼女はキリヤ公国の勇治のヘッドハンティングの誘い受けると、次期政権を担う者は、織田・和紗・信長であると考えて居た事も有って、既に隆盛を失い、勢いを無くした足柄将軍王家には、先が無い無いと見て居た彼女は、先祖が苦労して開府した足柄幕府王朝政権をあっさとり閉じて見せたのである。





 今は元征夷大将軍王と言う経歴を活かす形で、キリヤ公国連合国の国防大臣と国防大臣旗下のキリヤ公国近衛軍の3軍を預かる国の軍幹部にして、国防政策を担うキリヤ公国宰相内閣府と言う政府重鎮の一人である。





 もう一人は、統合副司令官兼陸軍元帥の板垣妙子。





 ナデシコ自治統合軍の陸軍総司令官でも有り、キリヤ公国連合国軍の全ての副総司令官にして陸軍元帥でもある。



 キリヤ公国連合国軍首脳幹部として、3番目に位置して居る重要な人物で有り、一輝と五十鈴を支える人物でも有るのだ。







 そして、最前線に立って号令を発するのが総司令官である五十鈴だ。



 撫子皇国でも指折りの天才と謳われた彼女と、その彼女に絶大な信頼を置くナデシコ自治統合軍の将兵達。



 そんなキリヤ公国連合国軍の中でも、今現在に措いて最強の軍勢たるナデシコ自治統合軍を預かる彼女だからこそ、勇治は最前線での戦争に関して、五十鈴にキリヤ公国連合国軍の全ての戦力の権限を預けて居るのだった。







 その五十鈴が率いるキリヤ公国連合国軍・第一連合自治方面軍・ナデシコ自治統合軍・ナデシコ自治統合海軍艦隊。



 その艦隊は、ナデシコ地方自治州区州都・横須賀市の中にあるキリヤ公国連合国とナデシコ自治統合軍を含めた、全ての総司令部が置かれて居る所でも有る横須賀鎮守府に集結けさせて居た、三つの艦隊を海上からゲルニアン帝国の東側の領海にあたる。



 ローレライ大海洋の洋上へと侵攻させるへく、侵攻予定のあった全艦隊を一斉に北上させて居た。





 ナデシコ自治統合海軍艦隊は、全部で5つの方面艦隊が有る。



 本土防衛も有るので、キリヤ公国連合国本土防衛に、二個艦隊を残し、外征をさせる為に必要な3個艦隊をに分けて、進軍を開始する。





 ナデシコ自治統合海軍艦隊の攻撃目標は、ゲルニアン帝国・南東方地方のフェリス侯爵領の沿岸地域一帯で、主な攻撃候補先としては、キリヤ公国本国と接して居り、チバヤン州州都であるキラサラズ市が在るガントー地方を含めた沿岸地域。 



 その北部地域で、同じく沿岸地域である港湾工業として栄えているバンドー地方とその州都であるクルサレ市、此処は陸運と海運を活かした貿易と工業で栄えている所でも在る。

   



 ナデシコ自治統合海軍艦隊は、キリヤ公国秘密工作諜報情報部局からの諜報偵察活動での得た情報から、この辺り一帯の沿岸部を朝鮮戦争で国連軍が取った仁川上陸作戦と同じ様に、ゲルニアン帝国・南東方地方のフェリス侯爵領の沿岸地域一帯に対して、一大海上奇襲上陸作戦を計画遂行しようとして居た。





その陣容は以下の通りと成って居る。



 第一戦隊司令官・山本五十鈴提督(大将)(キリヤ公国連合国の統合司令官兼海軍提督)。



第一戦隊副司令官・烏柿肇大佐。





 第一戦隊の巨大な撫子型戦艦・1番艦撫子を旗艦として、長門型戦艦・長門、伊勢型戦艦。伊勢。



 重巡・高雄、愛宕。空母・赤城、加賀。



 軽巡・川内、神通、那珂、矢矧。



 駆逐艦・吹雪、白雪、初雪、深雪、松風の艦隊は、フェリス侯爵領地の中心地でもあるチバヤン州の主都のキラサラズ市。



 第二戦隊司令官・南雲夕霧中将。第二戦隊副司令官・小沢美月少将。



 第二戦隊は、戦艦・武蔵、長門型戦艦・陸奥。



 空母・翔鶴、瑞鶴。重巡最上、三隈。



 軽巡・球磨、多磨、北上、由良。



 駆逐艦・陽炎、不知火、舞風、黒潮、親潮、早潮の艦隊は、北側のコビア州の主都ミトナン市へと向かって居る。



 第三戦隊司令官・角田晴海中将。第三艦隊副司令官山口多美少将。



 第三戦隊・戦艦・大和、伊勢型戦艦・日向。





 空母・蒼龍、飛龍。重巡・利根、筑摩。



 軽巡・阿賀野、香取 名取、大井。



 駆逐艦・東雲、白雲 磯波 春風、朝風等の艦隊は、ゲルニアン帝国陸軍が使用して居る味方の支援の為に、様々物資が置かれ、補給路の拠点でもあるラシノ州の主都であるヨコダ・ハマ市に進路を取っていた。



 因みにナデシコ自治統合海軍の戦隊と言う編成とは何か?



 ナデシコ自治統合海軍艦隊では、第○○地方統合戦闘艦隊の略称名が第○○戦隊と略されて居る呼び名の事である。





 そのナデシコ自治統合海軍艦隊が北上侵攻して居る中で、ハコダテ国境要塞戦線のナデシコ自治統合陸軍とゲルニアン帝国軍は、尚も両者ともに攻めあぐねていた。





 軍の質と火力で勝るナデシコ自治統合陸軍と兵力で勝るゲルニアン帝国軍の攻防は一進一退であった。





 特にゲルニアン帝国軍は、数で圧倒して居るだけで、その被害は甚大だった。



 両者は戦線の整理を行う為に2日ほど休戦し、再度戦うとの会談が持たれて居た。







 それは何故か、これは単純な話で、死体の山が邪魔をして居て、そのままして置くと邪魔で邪魔で仕方が無く、戦争所では無いのである。



 ナデシコ自治統合陸軍側も物資の補給が必要だった事も有って両者は、遺体の整理と補給を兼ねた一時的な休戦に両者は合意したのである。





 ハイレンツ・グデーリアン将軍も軍勢を一時後退をして、軍の再編制余儀無くされていた。



 このハコダテ国境要塞の会戦は、この世界で史上初めての最大数の戦死者をたった1日で出した最初の記録を残す結果と成って居る。



 そんな派手な戦いが行われている中で、遂にナデシコ自治統合海軍艦隊に由るゲルニアン帝国・南東方地方のフェリス侯爵領の沿岸地域一帯への総攻撃準備が整った。



 同じくゲルニアン帝国海軍ローレライ大海洋東部艦隊もキリヤ公国連合国へと侵攻する為に海軍艦隊を進発させて居たが、両者は偶然にもローレライ大海洋の海上でかち合ってしまう。



 フェリス侯爵領へと攻め入るナデシコ自治統合海軍艦隊。



 逆にキリヤ公国本国本土へと攻め入ろうとするゲルニアン帝国海軍ローレライ大海洋東部艦隊。



 両者はローレライ大海洋のゲルニアン帝国・フェリス侯爵領の領海にて激突する。

 



「全艦隊、配置に着きました。」





「第二戦隊・第三戦隊ともに、各地の海上にて、敵艦隊と睨み合って居ます。」





 ゲルニアン帝国海軍は、木造鉄張り帆船で大砲が上下20砲門ある。



 それら3万隻を各港に、1万隻づつ配置して居た。



 一方のナデシコ自治統合海軍艦隊は、一列目に駆逐と巡洋艦、二列目重巡と戦艦、三列目空母艦隊で固められて居た。



 両者の全艦隊の船体を横に向け合いつつ、全各砲門を使用すべく、部隊内での互いの砲門同士を敵艦隊に向けられて居た。



 圧倒的な火力と防御力を誇る鋼鉄の大艦隊と大規模な数を誇る帆船型戦列艦隊達による大海戦が始まろうとして居た。





 総司令官である五十鈴は、手始めに空母機動部隊の発艦を命じた。



「先ずは、空母機動部隊の航空隊から発艦よっ!」



「了解です。こちら総旗艦撫子っ!」



「全ての空母艦隊に通達するっ!第一航空隊全機発艦開始っ!!目標は敵艦隊と敵城塞基地の全てっ!」





 全空母機動部隊の全航空隊に出撃を命じ、各航空隊は甲板から次々と大空へと飛び立って行く。





「おらおらっ!とっと出やがれ。」



 山口多美は、乗艦して居る空母飛龍の艦橋からマイクで檄を飛ばしていた。



「多美は、血の気が多くて相変わらず煩いわね。マイク無しでもこっちまで聞えるわよ。」



 随伴して居る第三戦隊の旗艦・大和の艦橋まで、多美の怒鳴り声が響き渡って激しく叫ぶ声に、角田晴海は呆れて居たりする。





 空母からゼロ戦と97式艦上攻撃機がフル爆装で飛び立って行く。





 上空に飛び立った航空隊は、眼下に見下ろして見えたのは、ゲルニアン帝国海軍の大艦隊だった。



「おい。」



「何だ、あれは?」



「鳥か?竜か?」



 何か飛んでる程度にしか見て居なかったゲルニアン帝国海軍の兵士達は、ナデシコ自治統合海軍艦隊の空母機動部隊から発艦した。



 その数は、一艦隊で252機。



 各艦隊の合計で756機の戦闘機を発艦させていた航空隊を海上艦隊から眺め見て居た。



「艦攻各機っ!突撃っ!」



「ゼロ戦各機も爆弾投下開始っ!」



 先ず最初に仕掛けたのはゼロ戦隊だった。



 頭上からひゆううううううぅぅぅぅぅぅーーーーーーーーっと爆弾の雨をゲルニアン帝国海軍艦隊に降らして行く。



「うあああああぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!」



「ひいいいいいぃぃぃぃぃーーーーーーーっ!!」



 ゲルニアン帝国海軍の帆船型の戦列艦隊は次々と船を真っ二つにされて沈んで行った。





 当然ながら、彼らに対空砲なんかの装備は、全く装備されて居る筈も無い。



 一方的に爆撃を恐怖と共に喰らう事と成ってしまって居たのであった。



「くそっ!撃てっ!撃てええぇぇーーーーっ!」



 ドーンドーンと大砲を撃ち込んで、雷撃しようと立ち向って来る97式艦上攻撃機は、怯む事無く魚雷を水面に投下して行く。



 ゲルニアン帝国海軍ローレライ大海洋東部艦隊エーリッヒ・レダン提督は、キリヤ公国本土へと攻め入ろうとして居たが、ナデシコ自治統合海軍艦隊の侵攻力の早さに出遅れしまった為に、フェリス侯爵領のローレライ大海洋領海沖での大海戦と成っしまった。





 其処で彼は仕方なくフェリス侯爵領のガントー地方領・チバヤン州の主都のキラサラズを守る為に、キラサラズ市の沖合いから200キロ付近で艦隊を展開し、艦隊の指揮を執って居た。



「エーリッヒ提督閣下っ!敵が空の彼方から現われ、我が艦隊は大混乱であります。」



「くそっ!!まさかこの様な非常識な方法で攻撃して来るとは・・・・・・」



 其処へ、ダダダダダッ!!と機銃が撃ち込まれた。



「くっ!!」



 エーリッヒ提督は寸での所で機銃を躱す事に成功し、この状況を打破する事が出来ない事に苛立って居た。



「くそっ!このままでは・・・・・・・」



「提督閣下殿っ!あれをっ!」



「ん?何だあれは?」



 エーリッヒ・レダン提督配下の副官の指差す方向に現われたのは、山本五十鈴が率いるナデシコ自治統合海軍艦隊・第一戦隊の姿だった。



 チバヤン州の主都のキラサラズ市の沖合い一杯に広がる敵艦隊に対して、山本五十鈴率いるナデシコ自治統合海軍艦隊も半包囲して艦砲射撃体勢を取るべく艦隊を展開して居た。



「第二戦隊、第三戦隊ともに展開完了っ!何時でも撃てますよっ!五十鈴さんっ!!」



「了解よっ!肇っ!」



「照準あわせっ!!目標っ!!ゲルニアン帝国海軍・ローレライ大海洋東部艦隊っ!!」



「了解っ!!目標っ!!ゲルニアン帝国海軍・ローレライ大海洋東部艦隊っ!!」



「全艦隊っ!全砲門左弦うーちーかーたよーいっ!」



「全砲門左弦うーちーかーたよーいっ!」



「「・・・・・・・・撃てええええええええええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!」」



 五十鈴と肇の二人は、マイクに向かって大声で、ナデシコ自治統合海軍艦隊の全艦に向けて発砲を命じた。



 ズドドーーーン!!と言う凄まじい砲撃を音が、この海域全体に響き渡る。



 砲撃から着弾までの時間を時計で見ていた肇は「だんちゃーくっ!!今っ!!」と叫ぶっ!!



 ゲルニアン帝国海軍ローレライ大海洋東部艦隊は、ナデシコ自治統合海軍艦隊の勇壮なる姿を見て、只々呆然と立ち尽くすしか無かった。



「ああっ!あれは、あっあっ、ああっ、あれが戦艦っ!?戦艦だとっ!?」



「そんなバカなっ!?鋼鉄の塊がっ!魔法技術力を無しで、いや魔法を使ったとしても、あれだけの大きさの船体が水の上に浮いて居られる筈がっ!!」



「鋼鉄の・・・・鋼鉄の大戦艦隊・・・・・・・・・」



「何て、大きさだ・・・・・・・・・」



「あっ、あっ、あっ、あっ有り得ない・・・・・・・・」





ズドドーーンッ!ズドドーーンッ!ズドドーーンッ!ズドドーーンッ!



ズドドーーンッ!ズドドーーンッ!ズドドーーンッ!ズドドーーンッ!



ズドドーーンッ!ズドドーーンッ!ズドドーーンッ!ズドドーーンッ!



ズドドーーンッ!ズドドーーンッ!ズドドーーンッ!ズドドーーンッ!







 海上にズドドーーンッ!ズドドーーンッ!ズドドーーンッ!ズドドーーンッ!と言う音が響き渡る。



 彼らの目には、鋼鉄戦艦隊の一斉砲撃の砲煙が見えた。



 次の瞬間、ゲルニアン帝国海軍は、艦隊戦力の7割を失ってしまう。



「全艦隊っ!!撃ち方ッ!!止めえええぇぇぇーーーーーーーーーっ!!」



「撃ち方っ!!止めえええええぇぇぇぇぇーーーーーーーーーっ!!」



 十分に敵艦隊を壊滅させた、五十鈴は砲撃を止めさせた。



 ゲルニアン帝国海軍が居た付近の海上付近の煙が、海風で晴れて行く。



「目的を果たしたわ。続けて敵拠点の制圧戦に移行するわ。」



「各隊へ通達っ!上陸戦準備っ!」



「はっ!!各隊に通達っ!陸戦隊と制圧部隊の上陸の準備をっ!」



「それと肇っ!駆逐隊と軽巡は、敵艦隊の将兵達の救助の用意をっ!」



「あっ!そうだったわ。これ以上捕虜を取るのは面倒くさいから、戦う気の無い逃げる敵は、追わなくて構わないわ。」



「了解です。戦後処理で面倒なのは、捕虜の管理と戦後復興ですからね。」



「そう言う事ね。空母機動艦隊は、上陸支援の為に軍事施設への空爆を要請っ!」



「但し、政庁たる城は狙うに及ばずよ。」



「都市部の空爆前には避難勧告は?」



「はっ!空母機動部隊に由る空爆警告の為のビラ巻きは、先ほど既に向かいました。」



「結構っ!!勇くんは、絨毯爆撃をするような国家は碌な国じゃ無いって言って居るわ。彼の故郷がやられた事を自分が建国した国ではやりたくないようね。」



「流石は我らが宗主国王と言った所ですね。それには同意します。」



「では上陸作戦準備が整う45分間を停戦時間とし、これ以降の逃げ遅れの責任はゲルニアン帝国政府とフェリス辺境侯爵領の領主側に在る物とする。」



「各自は上陸作戦に備え、粛々と任務に励む様に・・・・・・」



「はっ!!」





 勇治は空爆や艦砲射撃、上陸作戦による民間人への被害を最小限に留めたいと考えて居たが、警告しても如何にも成らない責任は取る積りないとして居た。



 五十鈴には最小限の退避時間と指定地域への避難に、避難を促すビラを空母機動部隊の航空部隊にさせる事にして居た。



 一方のゲルニアン帝国海軍ローレライ大海洋東部艦隊の提督を勤めていたエーリッヒ・レダン提督は、この海戦で運良く生き残り、港から船を捨てて、スタコラと撤退したと言う。







 マギアンティア世界統一暦・1555年・7月23日・午前9時40分・マギアンティア世界・中央世界第一文明圏・ユーラシアン大陸東側・中央世界第一文明圏・ユーラシアン大陸・ゲルニアン帝国・フェリス侯爵領・レイチェル・フェリス騎士爵領・ガントー地方・ガントー地方領・チバヤン州・主都キラサラズ市・キラサラズ城内にて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・







 戦果に巻き込まれようとして居る一帯は、ゲルニアン帝国貴族であるフェリス辺境侯爵が、ガントー地方の中心地として治めて居る領地だった。



 此処ガントー地方領の一つであるチバヤン州領は、ゲルニアン帝国のフェリス辺境侯爵の一族であるレイチェル・フェリス騎士爵が治めて居る所で、キリヤ公国連合国との戦争が無ければ、とても静かで穏やかな土地である。





 この辺り一帯を治めて居るフェリス家は、800地域もの領土が在るゲルニアン帝国でも典型的な大領主の一族で有る。



 その大領地の貴族一族に、その後の行く末を決める歴史的な転機が迫って居た。



「これはもうダメね。戦い方の思想と兵器や軍事力が違い過ぎると言う話の次元じゃないわよっ!」



「根本的な部分で、ゲルニアン帝国とは比べ様が無いわ。」



「それに先ほどの避難勧告と避難指示指定場所が書かれて居たビラ紙。」





「これは欺瞞と攪乱を目的とした物では無いわ。彼ら・・・キリヤ公国連合国側は、確実に自分達が強いと言える。いいえ、言い切る・・・言い切って居るからこその警告なのね。」





「レイチェルお嬢様のご判断で、既にキラサラズ城内やキラサラズ市郊外へと領民の避難は、既に完了して居ります。」



「我が領軍の護衛は、しっかりと?」



「はい。仰せの通りに・・・・・・・・・・」



「良いわ。後は・・・・・・・」



 居城たるキラサラズ城内の中心に建てられた、地上7階立て洋式の館城が在る。



 その5階に在る執務室の部屋から、遥かな他の海上での海戦の様子を双眼鏡を使いながら見て居たレイチェル。



 キリヤ公国軍の有り得ない強さを見せ付けられ、驚きを隠せずに居た。





 彼女はナデシコ自治統合海軍艦隊の山本五十鈴が発した避難勧告と避難指定場所が書かれて居る所全てに、市民達を避難させる事を決め、キラサラズ城内にも近隣に住まうあらゆる階層の人々を受け入れるだけ受け入れていた。





 その他の非戦闘員や自領の将兵達は、町の郊外へと避難させて居る。





 ゲルニアン帝国本国軍には、敵の攻撃に由る市民の巻き沿いは、後々の統治に支障を来すとして自領将兵を市民の護衛と称して、市街郊外へと避難させる事に成功して居た。

 

 その避難が終わったばかりのキラサラズ城内で、レイチェルは嵐が過ぎ去るのを祈りながら待って居た。



「はぁ~、本当に・・・一体全体、中央政府や皇帝陛下は、何を敵に回したのよ。」



「お陰で我が領地と民達は、良い迷惑よっ!」



 レイチェルが、恨めしそうに帝国中央政府と皇帝に悪態を吐いて居ると、その瞬間、ひゅううううぅぅぅぅぅ、ドッカーンッ!!と言う爆撃と砲撃が軍施設に向けて攻撃を受けていた。



「きゃっ!!」



「くううっ・・・・・・」



「お嬢様っ!」



「大丈夫よっ!!でも・・・・・・」



 爆撃の衝撃が城まで響き渡り、レイチェルはビックリして、可愛らしく転んでしまう。





 肩まである金髪のミディアムロングヘアーの髪型が大きく乱れて居た。



 大丈夫だとは言うが、余りの恐ろしさに腰を抜かしてしまったらしく、真っ青な顔付きで、地べたに転んでしまった、気が強そうな感じの歳若い女の子は、その場で天井から降って来た、埃をホンの少しだけ被ってしまって居た。



「レイチェルお嬢様。本当に大丈夫で御座いますか?」と、やっぱり心配に成って、近くまで駆け寄る侍従女長。



 彼女が手を貸そうと、レイチェルの手を取ろうとした時である。



「ああっ!!もうっ!こうなったら降伏よっ!」



「ええっ?!」





 レイチェルの秘書を務めて居る侍従女長は、主の突然の発言に困惑してしまい。



 キョトンとした目付きで主を見て居た。



「直ぐに降伏なさいっ!!!」



「ですが、それではお嬢様のお立場が悪く成ってしまいますっ!!!」



「皇帝陛下や本国政府から何を言われ、どんな処罰を受けさせられるのか判りませんっ!!!」



「もうっ!!!こうなったら皇帝も帝国政府も知るもんですかっ!!!」



「これ以上領内を荒らされたら、この私と民達が立ち直れないわっ!!!」



「例え戦争をし合って居る両方の国から見離されても、民が平和に暮らせるのなら、その方が良いわよ。見栄っ張りだけのチョビ髭皇帝と心中する方が冗談じゃないわよっ!!」



「貴女達の身の振り方くらいは、如何にかするから、心配しないで頂戴っ!!!」



「今現在、領内で戦って居る本国の帝国軍は、如何なさいますか?」



「城門を閉ざして知らんかを為さい。」



「もし、帝国本国軍が降伏の邪魔の為に、ちょっかいを出して来たら、その時は構わないわっ!!」



「そうなったら、我らはキリヤの連中に味方すると言って、大声で打ち掛かりなさい。」



「私達は、あの様な怪物染みた兵器を扱う国と戦って、帝国の為に犬死させる家臣も領民は、この地には1人も居ないわよ。」



 レイチェルは、近衛の女性騎士らに命じて、自領の騎士団に降伏と寝返りを命じたのであった。



 其処へ新たな動きの速報が入る。



「レイチェルさまっ!キリヤ公国連合軍が港へと上陸を始めました。」



「急ぎなさいっ!あの軍の進軍速度は尋常じゃないわっ!!」



「あの少年王は、降る者や真摯である者には、決して無下にはしないと聞く。」



「さて、この決断が我がフェリス家に、どんな運命を齎してくれるのかしらね・・・・・」





 レイチェルは、戦争前からキリヤ公国連合国と勇治に関する情報を正確に掻き集めていた。



 その結果、本国の重鎮達以上の情報を得て居たのである。



 特に軍事力と国内技術力の格差は、天と地の差くらいはあると言う調査結果の報告を聞いて居たのである。



 だが、現実は紙切れに書かれて居る以上に、恐ろしい物だと悟った様だった。





 後にフェリス家は公帝戦争後に勇治からこの地方を預かる侯爵位、ゲルニアン帝国の滅亡後には、大公爵と言う地位が与えられ、立憲君主制と民主国家制を敷いて善政を敷いたと言う。



 その切っ掛けは、この降伏でキリヤ公国連合国に降った事が切っ掛けだった。



 レイチェルは、勇治から後宮出入りを許され、正妃・側姫妃・側室妃・愛妾妃・伽役妃ので決められたキリヤ公国後宮法制度の中で、側姫妃と言う地位が与えられ、フェリス大公家の地位を磐石の物としたと言う。





 マギアンティア世界統一暦・1555年・7月23日・午前10時00分・マギアンティア世界・中央世界第一文明圏・ユーラシアン大陸東側・中央世界第一文明圏・ユーラシアン大陸・ゲルニアン帝国・フェリス侯爵家領・レイチェル・フェリス騎士爵領・ガントー地方・ガントー地方領・チバヤン州・主都キラサラズ市・キラサラズ海岸・キラサラズ港にて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・







 レイチェルが降伏を決意した頃、五十鈴はキリヤ公国連合国軍ナデシコ自治統合陸海軍を中心とした上陸軍を向わせて居た。



 上陸軍の各隊は、輸送艦・揚陸艇などに陸上兵器や兵士を積んで沿岸地域へと突き進んで行く。



 先陣を切って行くのは、特四式内火艇と言う三式中戦車をベースに作られた水陸両用戦車である。





 この特四式内火艇は、地球世界の史実には無い機体で、撫子皇国で特二式内火艇と特三式内火艇の改良版として造られた物である。





 上陸艇と一緒に海岸と船着場で、船を陸揚げする地点を見つけて上陸を開始した。



 ゲルニアン帝国の本国軍は、マスケット銃や弓で射掛けるが、鋼鉄の装甲と矢避けの盾に阻まれてしまう。



 数発ほど単装砲と戦車砲、それに機銃に小銃を撃ち掛ける事で、ゲルニアン帝国の将兵達は呆気なく殺れてしまう。



「よしっ、行け行け行けーーーーっ!」





「総大将に雇われた恩を返す絶好の機会だっ!!野郎どもっ!!モタモタするなあああぁぁぁーーーーーーーーーーっ!!」



 

 上陸戦を指揮しているのは、アマテラス神皇国からやって来た傭兵や没落してしまった武士や名家の元大名者達だった。





 彼らは忍びの里の者達や勇治からの移民船での公募での迎えで、キリヤ公国本国へと渡海が出きる話しを聞き付け、多くの者達が仕官したいと応募を申し出て来た者達である。



 彼らは声を高らかにして、大陸で一旗上げると名乗り出た者達だ。



 成り上がろうと士気旺盛であり、出世の為なら命を掛けて居た。



 その結果、元々少なかったキリヤ公国本国軍の陸軍や陸戦隊の兵が、一気に大量に増えたのであった。



 文字通りの渡りに船とは、この事だった。



 中でも雑賀の里からやって来た雑賀衆の棟梁てある雑賀孫一と、その娘である雑賀さやかの二人は、先陣を駆って出ていた。



 第二陣は第四武士軍団と第六武士軍団から成る尼子衆と山中衆の二人で、尼子勝美と山中鹿乃のコンビ。



 二人は果敢に戦に挑み、キラサラズ市に立て籠もるゲルニアン帝国軍を蹴散らして行く。





 キリヤ公国海軍に仕官した上総国・安房国の元大名王家である里見・七香・由堯は、自ら率いる艦隊に対して、勇治から里見艦隊と命名されていた。



 その構成員は、旧アマテラス系の武士とナデシコ軍の技官で構成された艦隊で、キリヤ公国海軍の地方隊に位置付けられていた。





 重巡洋艦安房を旗艦とし、巡洋艦2隻、駆逐艦4隻。計七隻の地方艦隊である。



「町の中心地に撃つなとの五十鈴総司令殿のご命令だ。港付近の軍艦や砲台、軍施設呑みを狙い撃てっ!」



「はっ、姫様っ!此度は旧里見水軍の初陣です。」



「しっかりと戦果を上げて、勇治陛下とキリヤ公国へのご恩に報いましょうぞっ!」



「キリヤ公国海軍・地方艦隊・里見艦隊の全艦隊へ告ぐっ!」



「目標っ!キラサラズ市内の軍関連施設っ!」



「うちーかーた始めっ!」



ズドドーーンッ!ズドドーーンッ!ズドドーーンッ!ズドドーーンッ!



ズドドーーンッ!ズドドーーンッ!ズドドーーンッ!ズドドーーンッ!



ズドドーーンッ!ズドドーーンッ!ズドドーーンッ!ズドドーーンッ!



ズドドーーンッ!ズドドーーンッ!ズドドーーンッ!ズドドーーンッ!



ズドドーーンッ!ズドドーーンッ!ズドドーーンッ!ズドドーーンッ!



ズドドーーンッ!ズドドーーンッ!ズドドーーンッ!ズドドーーンッ!



ズドドーーンッ!ズドドーーンッ!ズドドーーンッ!ズドドーーンッ!



ズドドーーンッ!ズドドーーンッ!ズドドーーンッ!ズドドーーンッ!





 里見艦隊が一斉砲撃を開始するのと同じく、ナデシコ自治統合海軍艦隊も沿岸部への攻撃を開始する。



ズドドーーンッ!ズドドーーンッ!ズドドーーンッ!ズドドーーンッ!



ズドドーーンッ!ズドドーーンッ!ズドドーーンッ!ズドドーーンッ!



ズドドーーンッ!ズドドーーンッ!ズドドーーンッ!ズドドーーンッ!



ズドドーーンッ!ズドドーーンッ!ズドドーーンッ!ズドドーーンッ!



ズドドーーンッ!ズドドーーンッ!ズドドーーンッ!ズドドーーンッ!



ズドドーーンッ!ズドドーーンッ!ズドドーーンッ!ズドドーーンッ!



ズドドーーンッ!ズドドーーンッ!ズドドーーンッ!ズドドーーンッ!



ズドドーーンッ!ズドドーーンッ!ズドドーーンッ!ズドドーーンッ!





 5回程の砲撃で、粗方の軍施設と砲台類は沈黙してしまう。



 海岸や港には、上陸を阻止しようとゲルニアン帝国の本国の軍隊が集結し、戦いを挑もうして居た。





「敵がきたぞおおおぉぉぉーーーーっ!!」



 此処にもキリヤ公国連合国のキリヤ公国秘密工作情報部局者達が居る。





 第二部隊の甲賀霧隠衆の霧隠霧奈が一族一門を引き連れ、市民に化けて町の人や兵士らを煽って、逃げ遅れていた市民達を攻撃予定の無い安全な地帯へと誘導していた。



「こっちにも着ているぞーっ!」



「北西だっ!急いで町の北西へと逃げ込めーーーっ!」



「早くっ!早くっ!急げーっ!」



 パニックを起こして逃げ遅れていた市民達は、手荷物を抱えながらドッと駆けながら町を飛び出す様にして、逃げ出して行く。



 その中をドサクサに紛れる形で、コッソリと霧隠霧奈達は、立ち去って行くのである。





「雑賀隊っ!構えええええぇぇぇぇーーーーーーーーーーーーっ!!!」



「「「「「おうっ!!!」」」」」



「「「「「うおおおおおぉぉぉぉぉーーーーーーーーっ!!」」」」」





 揚陸戦隊の雑賀隊が38式歩兵銃2式を構えた。



 38式歩兵銃2式は、5発しか連続して撃てかなった38式歩兵銃の改良版で、15発のマガジンを上部に取り付ける工夫と改良等が成されていた。



 なので実際の史実に有った38式歩兵銃の形とはかなり異なったデザインと成って居るが、やはり何百発もの銃弾を撃ち出すのには、根本的に一から設計製造する必要が有った。



「「「「「撃てえええええぇぇぇぇぇぇーーーーーーーーーーーーーっ!!」」」」」





 パンパンパンッ!パンパンパンッ!パンパンパンッ!パンパンパンッ!パンパンパンッ!

 

 パンパンパンッ!パンパンパンッ!パンパンパンッ!パンパンパンッ!パンパンパンッ!







 パンパンパンッ!パンパンパンッ!パンパンパンッ!パンパンパンッ!パンパンパンッ!





 パンパンパンッ!パンパンパンッ!パンパンパンッ!パンパンパンッ!パンパンパンッ!





 パンパンパンッ!と言う発砲音が響くとパタパタとゲルニアン帝国兵や騎士達は倒れて行く。



「抜刀っ!!掛かれえええええぇぇぇぇぇーーーーーーーーっ!!!」



「うおおおおおぉぉぉぉぉーーーーーーーーっ!!!」



 敵の怯んだ所を山中隊と尼子隊が斬りかかる。



 強靭な刀を持った元武士達によって鎧事斬り付けられた帝国軍側は、徐々に追い詰められて行く。



「退けーっ!!退けーっ!!退けえええぇぇぇーーーっ!!」



 堪らず沿岸や港を防備していたゲルニアン帝国本国軍は、町から退却して行くのであった。



「えいえい、おーーーーっ!えいえい、おーーーーっ!えいえい、おーーーーっ!」



「えいえい、おーーーーっ!えいえい、おーーーーっ!えいえい、おーーーーっ!」



「えいえい、おーーーーっ!えいえい、おーーーーっ!えいえい、おーーーーっ!」



「えいえい、おーーーーっ!えいえい、おーーーーっ!えいえい、おーーーーっ!」





「えいえい、おーーーーっ!えいえい、おーーーーっ!えいえい、おーーーーっ!」



「えいえい、おーーーーっ!えいえい、おーーーーっ!えいえい、おーーーーっ!」



「えいえい、おーーーーっ!えいえい、おーーーーっ!えいえい、おーーーーっ!」



「えいえい、おーーーーっ!えいえい、おーーーーっ!えいえい、おーーーーっ!」







 主都キラサラズ市は、僅か3時間足らずの抵抗で陥落したのである。





「どうやら決着が付いた様ね。」



「お嬢様っ!キリヤ公国・第四武士軍団の団長である尼子久勝殿が、我らへの使者として、降伏を勧めて来て居ります。」



「先に使者を出した筈よ。そちらはどうなったのよ?」



「先の戦闘での混乱が激しく、城から一歩も出て行く事が叶わなかった様です。」



「直ぐに城門を開きなさい。用意して有った降伏文書を渡して、我らのキリヤ公国への恭順の意を示すのよっ!」



「はいっ!」



 事を急ぐべくレイチェルの秘書官は、大慌てで駆けて行くのだった。



 ガントー地方の地方地域領主たるレイチェル・フェリス騎士爵とチバヤン州領は、直ぐに城門を開いて、用意して有った降伏文書を勝美に手渡す。





 キリヤ公国連合国側は、彼女に対して無条件降伏を求めた。



 レイチェルは、それを了承したと言う。



 レイチェルは領内の統治資料の全てを持って、キリヤ公国連合国の首都である公王都・キリヤ市へと赴き、今後の処遇に付いて待つ事と成った。





 その後、キリヤ公国連合国は、南北から全軍を上げて、ゲルニアン帝国・フェリス侯爵領・レイチェル・フェリス騎士爵領・ガントー地方領を制圧。



 1週間後には同地方を手中に収めていた。



 また、帝国と接する同盟国も、キリヤ公国連合国から提供された武器や兵器と航空機による支援爆撃に由って、帝国南部の各地方を一づつ征圧して居る。





 正に歴史的な快挙と言える所業と成った戦いであり、マギアンティア世界中の諸外国を大いに驚かせたのであった。