マギアンティア世界・中央世界第一文明圏・ユーラシアン大陸東側・アマテラス列島地方・アマテラス神皇国・尾張国・美濃国境周辺地域にて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



聖徳寺での織田・和紗・信長と斉藤道三との会談は、恙なく終わり、斎藤・帰蝶は織田家へと友好の証として養女として差し出された。



 身の回りの品々や新生活に必要な 必要な家具や雑貨等も送られ、オマケに帰蝶と道三方に近しい侍女と護衛姫武士達も付けられ、さながらその様子は嫁入りとして他家に輿入れをするのが如くと後年の和紗の事を綴った歴史書、織田・和紗公記おだ・わみょうこうきと言う歴史書には書かれて居る。



「それでは父上、今までお世話に成りました。」と淡々と別れの挨拶をする帰蝶。



「うむ。何事も織田家の方々と和紗殿の言う事を良く聞いてな。」



「和紗、娘や付き添いの近習達のこと、くれぐれも宜しく頼む。」と深々と頭を下げて頼む道三。



「分かって居るマムシ。だから精々長生きをしてくれっ!」



「恐らく俺の親父殿は、そう・・・長くは無い。」



 和紗は、薄々父である織田信秀の寿命が風前の灯火である事を悟って居た。



「くくくくくっ!!そうじゃのう。ワシの目が黒い内は、今川を始め、斉藤と織田に敵対な行動を取る輩なんぞの好きにはさせんぞっ!!」



「たがらそれまでにサッサと対抗が出来るだけの体力を付けるのじゃぞっ!!」と言うと、二人は別れた。





それから2時間くらいたった後の事であった。





「信長さまああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーーっ!!信長さまああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーーっ!!」



「信長さまああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーーっ!!信長さまああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーーっ!!」





「信長さまああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーーっ!!信長さまああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーーっ!!」



「信長さまああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーーっ!!」と大声で叫ぶ者が、和紗が率いて居る軍勢の行列を呼び止めて駆けて来る。





「止まれえええええぇぇぇぇぇーーーーーーっ!!」と槍を持って制止させるのは、和紗の馬周り衆として仕えて居る前田・利美・利家であった。





「何者だっ!!」



「ハァハァハァハァハァハァハァハァ・・・・・んはっ!!ハァハァハァハァハァハァハァ・・・・はっ!はいっ!!私は尾張国・中村で、百姓をして居る木下家の木下・陽菜と言います。是非とも信長様ご家来に成りたくて来ましたっ!!」



「帰れ帰れ帰れっ!!今は仕官募集はして居らんっ!!」と追い払おうとする前田・利美。



 和紗も陽菜の顔付きを見ると冷たい言い放つ。



「貴様は戦どころか、武士には向いては居らん。畑を耕すか商家にもで奉公していた方が向いて居る。」



「その格好を見たところ、どこぞで手に入れて来た、高そうな大小の刀二つを腰に下げて居るが分不相応にしか見えん。」



「・・・・・ですが、どうしても信長様の家来に成りたいんですっ!!道三様との会談や富田宿場町の行列を見て、只者では無いと悟り、こうして馳せ参じて参った次第なのです。如何かっ!!お願い申し上げますっ!!」と地面に頭を擦り付ける様にして頼み込む陽菜。





其処に後ろから大声で後を追う一団が現れる。



「おーいっ!!」



「陽菜あああああぁぁぁぁぁーーーっ!!」



 現れたのは、蜂須賀・頃代と前野・恵那を先頭にして駆けて来た幼馴染み達や陽菜の呼び掛けに応じた様々な階層の者達であった。





「ハァハァハァハァ・・・・・・待ってよ。陽菜ちゃんっ!」



「幾ら何でも、急ぎ・・・・はっ!!」と前野・恵那は和紗の顔を見ると慌てて平伏する。



 それに続けて蜂須賀・頃代と100名近くの仕事仲間達が平服した。



 陽菜の織田家への仕官は既に仲間たちの間で結論が出て居るので、この場に居る仲間達中には、異論を唱える者達は居なかった。



「貴様らは、其処のサル娘の仲間か?」と和紗は尋ねる。



「はっ!!はいっ!!尾張国・美濃国等を股に掛けて積み荷の運搬業や傭兵仕事を請け負って居ります蜂須賀党を率いて居ます。蜂須賀家・長女、蜂須賀・頃代と言います。」



「馬借衆と川浪衆を生業として居る前野家・長女の前野・恵那です。」





「・・・・・・・くくくくくっ!!アハハハハハハっ!!面白いっ!!」



「犬千代っ!!」



「はっ!!」



「この者達を足軽侍大将・浅野・将右衛門・長吉の下に付ける。」



「召し抱えるのですか?」



「こやつは使える。たったの一声で付き従うか、味方に付きたいと言う輩が現れるのは、このサルの才能だっ!!」



「ですがっ!!」と犬千代は言う。



 其処に陽菜は、和紗に自らのセールスポイントを必死の言葉で、売り込みを訴えた。



「私はっ!!一年前から今年に至るまで、今川家・遠江国の国人衆である松下・佳代・之綱さまに仕えて居ました。」



「この腰に差して居る大小の刀は、松下家を去る際に、之綱様から餞別にと頂きました。」



「だ、そうだ。サルっ!!松下は何故、才が有る貴様を家中に留め置かなかったっ!?」



「無宿人である事と農家の出である事が、家中の武士と奉公人達に疎んじられた為と分かって居りましたので、夜半にコッソリと自分から出て行こうとした所。」



「之綱様に呼び止められ、その場で私に誤って、送り出して下さいました。」



「それは勿体無い事をしたな。今川も松下も、サルを召し抱えて居れば、この俺の首を討ち取れたやもしれんのになっ!」と不敵に笑いながら言う和紗。





「!?」



(まさか、この村娘にそれだけの価値が有るのか?」と首を傾げる前田・利美は、和紗の一言に衝撃を覚える。



 陽菜に何らかの才有る事が、敵味方の優劣さえも決められる才能を秘めている事に・・・・・・・・・・・・・



「サルっ!!因みに、この俺が給金を全額持つから人を集めろと言ったら、何人くらい集まるのだ。無論、性別・出自は問わん。」



「・・・・・・・そうですね。私と頃代と恵那の伝手を使えば、ざっと500人は呼び掛けられるかと、日数と資金がおればもっともっと集められます。」と言い切る陽菜。



「くくくくくっ!!アハハハハハハっ!!そうかっ!そうかっ!出来るか?」



「為らばもう少し色々とサルと話がしたい。他の者共は、浅野・将右衛門の下で練兵の訓練やサルから沙汰を待って居ろっ!」



「サルには暫く、その才に見合った仕事を振る為に、試用期間の間だけ草履取りを命じるっ!」と言うと、和紗は馬上を切り替え居城地である尾張国・那古野城へと行列を進発させた。



「えっ?」和紗が取り決めた破格の待遇・・・・それも近習に近い供回り成れとの言葉に呆然としてしまう陽菜。



「おいっ!!良かったな。下手をすれば首をバッサリだったぞっ!」と言う犬千代こと、前田・利美。



「やっ!!やったああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーー!!陽菜っ!お供を致しまするうううううぅぅぅぅぅーーーーーーーっ!」と駆けて行く。



 その後ろには、呆然として居た頃代と恵那達。



それは歴史を・・・・人生を変えた始まりでもあった事に、驚きを隠せずに啞然としたまま、歩みだす。



「おいおい、嘘でしょうっ!!」



「陽菜、やったのね・・・・」



 他の者達も織田家へと纏めて仕官が出来る事に大喜びで行列に続いて行くのであった。



マギアンティア世界・中央世界第一文明圏・ユーラシアン大陸東側・アマテラス列島地方・アマテラス神皇国・尾張国・織田・和紗・信長居城・那古野城にて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・





それから暫くして、その年の秋も深まった季節の13月末の事である。



 陽菜は、織田・和紗・信長の居城である那古野城の城下町で暮らし始めた。



 那古野城は、和紗が産まれた年に、父織田信秀から与えられた城である。



 尾張国・清州市・清州城の守護大名王家であった斯波義統の家老家たる織田家の居城は古渡城で、和紗の両親や幼い姉弟らは、其処で暮らして居る。



 陽菜は織田家の足軽侍大将・浅野・将右衛門・長吉配下の足軽組頭へと抜擢されて居た。



 武家奉公でのスタート地点で普通なら足軽から始めるのが当たり前で在る所を頃代と恵那達を連れて居た事が認められ、陽菜がそのまま様々な出自からなる部隊のリーダーと成る事が命じられて居た。



 だがしかし、平時は雑用係も同然の仕事が課せられ、今は地震による那古野城の倒壊の修繕工事の仕事の真っ最中。



 秋ごろから始まった石垣や城壁、建物など修繕工事をさせられて居た。



 元々雑用仕事を得意とするアマテラス地方の馬借衆・川浪衆・傭兵衆らは、地方の大名王家・国人衆からの支払いに応じて、公共賦役に参加して居る家々が多かった。



 那古野城の修繕工事を取り仕切って居たのは、織田家の召し抱え宮大工頭領家・岡部又右衛門と言う30歳の厳つく渋い風貌の顔付き男。



その頭領の下で汗だくに成って働く陽菜達。



「はぁ~鈍い。鈍い過ぎるよ。これじゃ半年経っても修繕工事が終わりゃしないっ!」と愚痴る陽菜。



「そう言わないでよ、陽菜ちゃん。」



「そうそう、此処の取り仕切りは岡部様なんだから、此処に来るまであたしらがやって居たやり方なんて、進言しても聞き入れ貰える訳がない。」



 自分達がやって居たやり方と余りにも違って、工期が長く、作業効率も鈍すぎる織田家宮大工衆達の働き振りに、思わず溜息を吐いてしまう陽菜達。



「ほう、サルっ!お前達のやり方ならば、どれ位の工期で出来るのだ?」と不意に声を掛けて来た者が居た。



 それに気が付いて振り返った頃代と恵那達は、その人物の顔を見ると、大慌てで平伏してしまうが、陽菜は・・・・それには全く気が付かないまま会話を続けてしまう。



「そうですね。このままの人数を使える為らば、準備に半月、工期計画作業に3日、作業に7日半から8日在れば完璧に出来ますね。」



「だそうだぞっ!!又右エ門っ!」



「・・・・・・」と和紗に言われ、陽菜に厳つい顔つきで睨み付ける又右エ門。





「えっ!?」と振り返る陽菜は、大慌て平伏する。





「どんな急いでも半年間以上は掛かるのが建築と言う物です。それを僅か一月も掛からずにやろうと言うのは、バカか天才の所業と言う物。」





「では又右エ門、このサルめは、バカか天才か、その何方らだと言うのだ?」





「はっ!!先ずはやらせて、身の程を分からせば、自ずと答えがハッキリとするかと・・・・・・・・・」





「サルっ!!」



「はっ!ははっ!!」





「資金と人員を貸してやる。何だったら又右エ門らを下に付けてやるから、好きなように修繕工事の差配をして見せろっ!!」



「出来なかったら・・・・・・・・・」と不敵な笑みを浮かべながら和紗は、陽菜を睨む。



「ははっ!!畏まりましたっ!!」とガタガタと震えながら承知する陽菜。





「くくくくくっ!!結果を楽しみして居るぞっ!!サルっ!!」と和紗は上機嫌で立ち去って行く。





「全く、お前と言う奴は間の悪い奴だな。」と声を掛けて来たのは、犬千代と幼名時代の名前が、未だに渾名と成って居た前田・利美であった。



「うあああーーんっ!!犬千代ちゃーん。」と抱き付く陽菜。



「どどどっ、どうしょうっ!!」と更に泣き付く陽菜。



 実は二人、役職が足軽組頭同士なので、住まいも足軽組頭専用の長屋が隣同士と成って居た事とお互いに出自や身分差を気にしない事から、会って間もないのにお友達に成って居たりする。



「ここっこらっ!!ななっ!!泣き付くなっ!!」



「ごめんね。犬千代ちゃん。」



「犬千代、何時も幼馴染みが迷惑を掛けている。」と冷静言う頃代と恵那の二人。



「お前達も、気軽に犬千代と呼ぶなっ!!」と言ってるが、名前に付いては今さらで在る。



「所で、さっき言った事は本当に出来るのか?」





「ええっと、さっきって修繕工事の事?」



「それならば問題ない。」と言う頃代と恵那。



「だったら、陽菜は、何でこんなにも泣いて居るんだっ!!」



「それはね。」



「ああ・・・・・」



「「単に信長様と岡部様らの鬼の形相に、ビビッて居るだけっ!!!」」と面白がる頃代と恵那であった。