アースティア暦 1000年・西暦2030年・6月7日・午前2時25分頃・アースティア世界・ユーラシナ大陸・ユーラシナ大陸中央地域・シベリナ中央地方・パイプ・ライン大河・パイプ・ライン大河中央流域地方・ブラキュリオス湖・アルガス公国・レジェンダリア州・ レジェンダリア諸島東部・カントルナ島・カントルナ砦・カントルナ砦上空・グリクス地方軍艦隊にて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「オバム大佐殿。」
「ニホン・ドラグリアの連合航空隊が、我が方の空挺艦隊に接近しつつ有り、総指揮を執って居るのは、恐らくエリノア・ドラグリア白龍大帝かと思われます。」
前線副司令官のラオウ・ケビン中佐は、迎撃に出て来たと見られる日本・ドラグリアの連合航空隊の総指揮がエリンだと推測したが、これは全くの誤解だった。
彼らグリクス地方軍艦隊及びグリクス地方軍団の者達は、皇帝の位に相当するエリンの大帝と言う独特で特異な位の地位から、そう判断してしまって居るのだった。
更には言えば、日本とドラグリアの両軍は、即席の連合体制であり、完全な連合航空隊を組んでは居ないし、寧ろドラグリア面々は、行きかがり上、仕方なく船に乗せて居るだけで、彼女達は勝手に出撃を決めて、この戦いに挑んで居るだけなのだ。
この世界での戦争では、前線での軍の指揮権利の順番は、先ずは皇族・王族と成って居て、次に軍権があるのが国軍の大臣に司令長官、上級将校や下級の大尉以上の士官等である。
他国の元首や将兵が個々の指揮権にて、肩を並べて攻撃を仕掛けて来る等と言う事態は、帝国軍側の者達に取っては、想像の範疇の外に有る考え方なのであった。
まぁ、彼らの頭の中で、エリン達が日本艦隊であるダバ派遣艦隊と同行して居るのは、単なるエリン本人の気紛れで、戦に参加するのも半ば面白半分な遊興的な行為である事なんて分わかる筈も無いのである。
それは兎も角として、帝国やその同盟諸外国群は、エリンの事を天災並みにの脅威として、それだけ恐れて居ると言う事なのだ。
「くっ、あの気紛れで快楽放蕩主義なロリババアめがっ!!!」
「何時も何時も面白半分に戦に、ちょっかい出して来おってっ!!何て傍迷惑なっ!!」
全く持って仰る通りです。
彼女の母国でも「男でも出きれば落ち着くのでは?」等と影口を叩かれて居ると言われて居た。
其れくらい暴れて遊ぶのが好きな性分なのである。
しかし、あの気性を許容出きる男は果たして居るのだろうか?
何て言われちゃって居る残念なロリ年増であった。
「構わんっ!!全軍の将兵には、死ぬ気で戦えと伝えよっ!!」
「各全艦っ!!全砲門っ!!撃ちかーたよーいっ!!」
「はっ!!全軍に通達っ!!全砲門砲撃よーいっ!!」
「でないと命が幾つ有っても間に合わんっ!!」
「生き残る為になら手を緩めるなっ!!」
「撃てえええええぇぇぇぇぇーーーーーっ!!死ぬ気で迎え撃てえええええぇぇぇぇぇーーーーーーーーっ!!」
前線司令官のオバム大佐と前線副司令官のラオウ中佐等は、自ら乗船している旗艦である緑色に塗装されているドッコス・ギアレス級空挺戦艦オクト・パレスの前部3連装主砲2門と下部2連装主砲の砲撃を開始させて行く。
ドドドーンッ!!ドドドーンッ!!ドドドーンッ!!ドドドーンッ!!ドドドーンッ!!
ドドドーンッ!!ドドドーンッ!!ドドドーンッ!!ドドドーンッ!!ドドドーンッ!!
ドドドーンッ!!ドドドーンッ!!ドドドーンッ!!ドドドーンッ!!ドドドーンッ!!
ドドドーンッ!!ドドドーンッ!!ドドドーンッ!!ドドドーンッ!!ドドドーンッ!!
ドドドーンッ!!ドドドーンッ!!ドドドーンッ!!ドドドーンッ!!ドドドーンッ!!
宇宙戦艦の姿に酷似している魔導空挺戦艦の一斉砲撃、その勇姿を日本人が目の当たりにしたのなら、その光景は、数多あるSF作品の世界を思い浮かべるだろう。
その砲撃の中を空挺竜母艦から竜騎士航空隊が、雄々しくそして、勇ましい姿で発艦して行く。
竜騎士の眼下には、空挺帆船戦艦が200隻を先頭にして、空挺巡洋艦30隻、空挺駆逐艦60隻らが迎撃体勢を取るべく北へと前進して行く。
空挺帆船戦艦が200隻が東周りに迂回コースを取りつつ、帆船型特有の船体であるが故に、砲門が左右に10門つづ配置されて居る。
それらの砲門を敵に向けるべく、船隊と船隊を真横に向けられる様に航行して行く。
準備が整った先頭の戦艦から随時砲撃を開始されて行くのだ。
逐一報される偵察竜騎士からの報告を基にして、暗闇の敵を捉える為、照明魔法であるライトを撃ち出し、各砲台や遠距離武器や魔法等を敵目標方向へと狙いを定める。
「グリクス地方第一空挺帆船戦艦隊・1番艦隊砲撃よーいっ!!」
「目標っ!!ニホン・ドラグリアの連合航空隊っ!!」
「攻撃はじめえええええぇぇぇぇぇーーーーっ!!」
「てえええええぇぇぇぇぇーーーーーーーっ!!」
ドドドーンッ!!ドドドーンッ!!ドドドーンッ!!ドドドーンッ!!ドドドーンッ!!
ドドドーンッ!!ドドドーンッ!!ドドドーンッ!!ドドドーンッ!!ドドドーンッ!!
ドドドーンッ!!ドドドーンッ!!ドドドーンッ!!ドドドーンッ!!ドドドーンッ!!
ドドドーンッ!!ドドドーンッ!!ドドドーンッ!!ドドドーンッ!!ドドドーンッ!!
ドドドーンッ!!ドドドーンッ!!ドドドーンッ!!ドドドーンッ!!ドドドーンッ!!
グリクス地方第一空挺帆船戦艦隊・1番艦隊の砲撃が凄まじい砲炎を吐出し、そして、砲音を轟かせ、敵へと撃ち掛け始めたのである。
「くくっ、このわしを前にして、良い度胸なのじゃ!!!」
「単にエリンが怖くて、自棄ぱちに成ってるだけなんじゃ・・・・・」
「何か言うたか?」
「はぁ・・・・(自覚が有るんなら私に威嚇しないでよう・・・・はぁーあー、胃が痛い。)」
何時も気紛れに付き合う自分の身にも成ってと訴えたかったユキカゼであった。
ドドドーンッ!!ドドドーンッ!!ドドドーンッ!!ドドドーンッ!!ドドドーンッ!!
ドドドーンッ!!ドドドーンッ!!ドドドーンッ!!ドドドーンッ!!ドドドーンッ!!
ドドドーンッ!!ドドドーンッ!!ドドドーンッ!!ドドドーンッ!!ドドドーンッ!!
ドドドーンッ!!ドドドーンッ!!ドドドーンッ!!ドドドーンッ!!ドドドーンッ!!
ドドドーンッ!!ドドドーンッ!!ドドドーンッ!!ドドドーンッ!!ドドドーンッ!!
直も激しい砲撃を続けるグリクス地方軍艦隊。
その中へと突っ込んで行く日本・ドラグリアの連合航空隊の攻撃は、エリンのドラグバスターの先制攻撃を撃ち放ちながら始まった。
「ワシに刃を向けるその度胸に免じて、特別な褒美じゃっ!!ほーれっ!!存分に味わうが良いぞっ!!」
エリンの巨大な口が開く。バチバチと音を立てて口内は、眩い光りと稲光が弾けている。
敵に取っての死の光、それがドラグバスターだった。
「ドラグバスタアアアアアアアァァァァァァァァーーーーーーーーーーーーっ!!」
バシユユュュュュューーーーンっ!!ドドドドドッっ!!ババババッ!!ドッカアアアアアァァァァァーーーーーーーーーーーンッ!!!!
エリンが手加減して居るとは言え、ドラグバスターの閃光受けたグリクス地方軍艦隊は、丸でSFアニメ作品の高出力ビーム兵器の攻撃を受けたかの様に爆散して行く。
人ならざる種族特有の人知を超えた強さが其処には有った。
エリンの攻撃は一瞬にして、100隻は吹き飛んだだろう。
その光景をわかり易く例えるのなら、とある宇宙世紀世界に登場して来るコロニーレーザー級の光線で吹き飛んだと言えば良い筈である。
そう、彼の世界のとある少年が言う様なその光は、決して憎しみの光でなく、只、敵を撃ち貫く光なのである。
「うわっ!!いやーっ!!何度見ても恐ろしいっすねっ!!」
「全くですよ。あれじゃ帝国軍の将兵が可愛そうですね。」
お調子者の柏崎二射とクールでイケメンの速水勝二尉達は、エリンの撃ち放ったドラグバスターの威力と爆散して行く敵艦隊や竜騎士航空隊の様相見て、思わず同情の言葉を口にしてしまう。
「がはははっ!!こりゃ、弾代が浮いて助かるなっ!!」
「サシバリーダーより各機へっ!!」
「大帝陛下が切り開いて下さった通り道だっ!!全機、全力で突っ込むぞっ!」
神谷一佐が率いる空自航空隊の各機は、エリンの撃ち放ったドラグバスターによって陣形の空白と成っているグリクス地方軍艦隊の前線艦隊の数ヶ所に目掛けて突撃して行く。
ダダダダダダダッ!! ダダダダダダダッ!! ダダダダダダダッ!!
ダダダダダダダッ!! ダダダダダダダッ!! ダダダダダダダッ!!
ダダダダダダダッ!! ダダダダダダダッ!! ダダダダダダダッ!!
ダダダダダダダッ!! ダダダダダダダッ!! ダダダダダダダッ!!
ダダダダダダダッ!! ダダダダダダダッ!! ダダダダダダダッ!!
各機の20ミリバルカン砲が唸りを上げる。
すれ違う空挺戦艦や竜騎士が駆るワイバーンを次々と討ち貫いて行く。
「ぐはっ!!」
「わあああっ!!」
「何て早さだっ!!」
運良く避けれられた又は、狙われなかった者達は、後に続くドラグリア勢の白龍人と白龍達によって噛み千切られ、爪で引き裂かれたりされて無残な最後を遂げて行くのだった。
「くそっ、只さえ厄介で最悪な白竜人共だっ!」
「それに加え、ニホン軍の鉄龍が加わると手が付けられんっ!!」
「おいっ!!今度は左から来るぞっ!!」
「全騎散開っ!!」
仕掛けたのは、速水二尉の部隊である。
「逃がすものかっ!!!」
ダダダダダダダッ!! ダダダダダダダッ!! ダダダダダダダッ!!
「三機撃墜。」
「すげーな速水。お前の操縦は、この世界でも天才的なテクだ。」
「ホンとだよ。」
柏崎二射と長谷川一尉の二人が、実戦でも決してブレる事の無い活躍と腕前を見せ付けている速水二尉を誉め称える。
「誉めて貰えるのは光栄ですけど、そっちにワイバーン8機向ってますよ。」
「柏崎っ!!左側4機任せたっ!!俺は右側を受け持つっ!!」
「了解っ!!」
それぞれの隊が抜群の連携を取りつつ、空自とドラグリア隊は、圧倒的なスピードを活かした乱戦へと縺れ込む。
「やれやれ、あれでは我々の獲物の取り分が随分と減ってしましいましたね。」
「では大物に脅しを掛けつつ、2・3艦程度なら大型艦を撃墜して構わんだろう?」
「やれやれ、池田さんも相変わらずだな。」
池田空将補は、元部下である柴本幸弘一佐・塩谷光三一佐を引き連れて、F-2の機体性能が得意とする対艦攻撃を仕掛ける事に決めた。
実はこの攻撃を行う理由は、何故かと言うと、敵の方がが多すぎて、正直言ってアリが像の足に群がって齧り付いているに等しい。
仕掛けて居るのアリ側は、グンタイアリ並みに強力な強さを誇って居ると言える。
そんな理由から来る攻撃で、少数で指揮官への牽制と威圧を仕掛ける事を狙っての戦艦への攻撃であった。
「オバム大佐、大変でありますっ!」
「どうした?」
「青い鉄龍5騎、西方向より本艦へと接近中。」
「東方向からもエリン大帝と7騎の白竜人が接近中です。」
「ええいっ!!くそっ!!!最悪の事態だっ!!!」
「何でも構わんっ!!!徹底的に撃ち掛けろっ!!!」
「最早っ!!我らが生き残る事は、運を天に任せるしかないっ!!!!」
「撃て!!撃てっ!!撃ちまくれっ!!!!」
「矢を射掛けろっ!!!」
「我らはファイヤーボールだっ!!!」
オバム大佐の指揮下に有る魔導空挺戦艦隊は、空自航空隊とエリン等への必死の抵抗を試みた。
だが、青と白の二つの物体群は、彼らの必死の攻撃をヒラリとかわしながら懐へと迫って来て居た。
「くっくっ、池田の小僧め。面白そうな手口よのう。」
「実に楽しそうなのじゃ!!」
「どーれ、このわしも混ぜて貰うぞっ!!!」
エリンは池田空将補の動きを見て、グリクス艦隊中心部への攻撃が、どう言う意図のに有るのかを悟り、それに同調する。
しかし、その賛同し、行動に同調する理由は、単に面白そうだからだった。
だが、二人のこの行動は、オバム大佐達に少なからず心理的な重圧感と威圧感に苛まれ、その胸中は恐怖へと追い込まれて行くのだった。
「ほう、良い読みだなっ!!」
「流石は大帝にして、年の功だっ!!」
「各機ターゲットロックっ!!」
「「「FOX1!」」」
ピーーッと言うロックオンが鳴り響くと同時に対艦ミサイルをオバム大佐の直営艦隊周囲辺の魔導空挺戦艦群へと向けられる。
ゴオオォォォーーーっと言う噴射口から噴射炎と煙を吐出しながら、狙い定められている目標へと突っ込んで行く。
「右舷の空挺巡洋艦イルデ、アルデ、ウルデ、大破っ!!!」
「高度を維持できない様子。各艦が落下して行きますっ!!」
「更に左舷のカルバ、キルバ、クルバがエリン大帝率いる一隊が放ったドラグバスターにより、消滅しました。」
「くそっ!!化物共め・・・・・・」
オバム大佐は冷やりとした汗を掻きつつ、恐怖と動揺に満ち溢れている顔で艦橋から悪夢の様な戦場の光景を見せ付けられていた。
「水上艦隊並びに地上部隊も苦戦の様子。お味方にも多大なる損害が出て居るとの事です。」
「まだだっ!!まだ損害が2割程度だっ!!!この程度で、退く訳にはいかんっ!!!」
カントルナ島の上空は、乱戦状態に入っている。
優勢は完全に日本・シベリナ連合側に有った。
兵力の数の優勢は、ローラーナ帝国・グリクス地方軍に分が有る。
だが、兵器の質と特異的な能力を持っている白竜人族が居る日本・シベリナ連合同軍に、戦局の主導権を完全に握られて居る状態だった。
オバム大佐は、従来の戦争の仕方から来る戦場での有り方から算出した戦術と戦略の判断をして居る。
一方の日シベ合同作戦軍は、日本が提供して居る現代戦での不可欠な科学装備と何百年分の戦争の歴史から来る最新から古典的な戦い方までの膨大な情報を有して居た。
この事が、戦いの趨勢を分けて居たと言えた。
詰まり、日本側の各種道具等の提供物の貸し出しと情報戦がチート過ぎた訳なのだ。
この差は非常に大きく、この実力差を如何にかしようとも数年程度で埋まる実力差では無いのだった。
「オバム大佐、偵察竜騎士隊から報告です。」
「新たに北から敵艦隊を確認っ!!」
「国旗と軍機の何れも太陽旗に鋼鉄艦隊っ!!」
「新たなニホン艦隊ですっ!!それも7隻との事ですっ!!」
「ちいっ!もう、来たのかっ!?」
「恐らくその艦隊は、数日前にバラン少佐とやりあった艦隊だっ!!」
「では、二つのニホン艦隊は、今し方に合流したと言う事ですね。」
「ぐっ、どうする・・・・・」
其処へ彼らにも朗報が入る。
「後方よりドッコス・ギアレス級空挺戦艦オクト・ガレオンを確認。」
「その他多数の艦影を見えたとの報告が入りました。」
「後方から更に多数の竜騎士航空隊が接近して居ります。」
後方の見張りからの朗報とは、グリクス地方軍の本隊が現れたとの知らせだった。
「ガミトフ閣下だっ!!皆者っ!ガミトフ閣下が参られたぞっ!!!」
「踏ん張れっ!!大勢を持ち直せっ!!」
「ガミトフ閣下の御前で、見っとも無い姿を晒しては成らんっ!!」
オバム大佐は、指揮下に有る全軍に向けて奮起する様に促す。その動きに逸早く反応した者達が居る。
「むむっ!?池田!!」
エリンは、池田空将補に状況が変わったと手短に伝える。
池田空将補も「その様ですな。」と答え、戦局が変化したと同じく悟ったのだった。
池田空将補とエリンの両名は、この戦場に漂う動きと雰囲気と自らの感で、何かを悟ったらしい。
両署は直接に通信は出きなくとも、何と無く通じ合っていた二人。
池田空将補は、直ぐに無線で現場指揮官である神谷一佐に言う。
「神谷。そろそろ潮時らしい。直ぐに全機を引き上げさせろっ!!」
「??引き上げ?・・・・・・」
「ああ、成るほど・・・・・了解っ!!!」
神谷も悟ったらしい。
池田空将補とエリンの両名は、これ以上は相手を追い詰め過ぎと判断したらしい。
「こちら池田だっ!!置鮎一佐っ!!我々は、もう一中てをしたら、撤退する。援護を頼む。」
「ブラキュリオス湖上空で警戒監視中の偵察機から報告が有りました。敵の援軍、又は後続軍がやって来たようですね。」
置鮎一佐も上空を警戒中の各偵察機からの偵察報告で、敵の動きを分析し、風向きが変わったと結論付けていた。
「そうだ、これ以上の交戦は、相手の方に踏ん張られると、とても厄介だ。」
「この戦いは当初から色々と此方側の方が有利だが、時として、戦場での勢いと言うは、厄介と言える。」
「窮鼠猫を噛むと言う奴だよ。だから撤退の援護を頼む。」
「流石は国際合同演習で、米軍・ロシア軍・中国軍を手玉に取った池田さんだ。」
「ちょうど今、此方も各地で、撤退体勢に移ろうとして居る所でしてね。」
「三石の奴も援護を受けて撤退に入る所ですよ。」
「本作戦に参加している全自衛隊及び合同軍各位へ、こちら特科大隊指揮所。」
「MLRS及び88式地対艦誘導弾の発射準備完了。何時でも攻撃可能です。」
「こちら前線指揮所、了解。指示を待てっ!!」
「置鮎一佐、準備が整った。」
其処に井上一佐から特科大隊の虎の子の準備態勢が整ったとの報せが届く。
「池田さん、本作戦での此方の手札は全て揃いました。」
「援護しますので、直ぐに撤退をっ!」
「了解した。神谷っ!撤退命令だっ!」
「サシバリーダーより各機へっ!!各隊は切の良い所で順次撤退するっ!!」
「殿は俺と池田隊で行う。」
「「「「了解っ!!!」」」」
空自航空隊は、海自艦隊の援護を受けつつ撤退を始めて行く。
エリンも殿隊の撤退時に、ドラグバスターで威嚇援護しながら、竜騎士航空隊を撃破し、相手を怯ませた。
それを追う度胸のある者は僅かであった。
戦場はいよいよ、最も難しい撤退戦へと移って行くのであった。
アースティア暦 1000年・西暦2030年・6月7日・午前3時15分頃・アースティア世界・ユーラシナ大陸・ユーラシナ大陸中央地域・シベリナ中央地方・パイプ・ライン大河・パイプ・ライン大河中央流域地方・ブラキュリオス湖・アルガス公国・レジェンダリア州・ レジェンダリア諸島東部・カントルナ島・カントルナ砦・東側ブラキュリオス湖水上付近にて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ダバ派遣支援艦隊に所属し、二つに分けられた艦隊の一つ、第4艦隊は、ダバ派遣艦隊の第1艦隊撤退を支援するべく、命令が有るまでの間、待機をして居た。
「こちら前線総司令部の旗艦かが。第4艦隊・旗艦あさひへっ!!」
「現在カントルナ島・カントルナ砦周辺にて、戦闘中の全艦隊、全部隊に対して撤退命令を下す。」
「第4艦隊は、同島周辺水域に突入し、敵艦隊への砦総攻撃の阻止と遅延作戦支援作戦に従事している第1艦隊及び味方陸上部隊の撤退を支援せよ。」
「此方あさひ。了解っ!!」
「第4艦隊に所属する各艦へっ!!これよりカントルナ砦総攻撃の遅延作戦支援作戦に従事している第1艦隊の撤退を支援するっ!!」
「第4艦隊全艦隊っ!!作戦水域へ突入せよっ!!!」
第4艦隊は、旗艦あさひ艦長の出撃命令が出されると、第4艦隊は、はるなを先頭にして、作戦水域へと突入して行くのだった。
一方、第1艦隊旗艦きりしまでは、15回目の周回突入攻撃をして居た。
「此方前線総司令部旗艦のかがっ!!」
「敵空挺艦隊に動き有り、敵援軍が現れ、此方に向って居るとの情報が有ります。」
「前線総司令部は、展開中の各部隊の撤退準備が整い次第、撤退命令を下します。」
「第1艦隊は、第4艦隊の支援を受けつつ、即時撤退行動に移って下さい。」
「第1艦隊旗艦きりしま了解っ!」
「撤退よっ!!!第4艦隊が現れたら北上して、そのま本隊と合流するっ!!」
「石井三佐との連絡を密にしてっ!!!」
三石二佐は、敵陣深くに切り込んで敵艦隊を混乱さて居るはやぶさ隊を取り残さない様にする為に、連絡を蜜にする事と撤退するタイミング計るのだった。
「第1艦隊を視認。主砲っ!攻撃始めっ!」
はるな艦長の攻撃命令で、73式54口径5インチ単装速射砲×2基が砲撃が始まると海自艦隊の撤退が始まった。
アースティア暦 1000年・西暦2030年・6月7日・午前3時15分頃・アースティア世界・ユーラシナ大陸・ユーラシナ大陸中央地域・シベリナ中央地方・パイプ・ライン大河・パイプ・ライン大河中央流域地方・ブラキュリオス湖・アルガス公国・レジェンダリア州・ レジェンダリア諸島東部・カントルナ島・カントルナ砦内にて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
激戦が続くカントルナ砦。
その東側では、砦の守備隊を逃がす為に、殿として居残っる予定の陸自中隊とクリス・ハンナ・リナの3人で必死に敵の大軍を防いで居た。
「アルガス軍の馬車部隊、これが最後の出発便だそうです。」
「我々の撤退に使う車両は予定通り、高機動車3両。」
「牽引して有った120mm迫撃砲は、既にヘリで空輸し終えて居ます。」
砦内ではヘリ部隊が、展開していた陸自各部隊の隊員達を引き上げ始めていた。
東門の陸自中隊は、殿として引き上げタイミングを伺っていた。
既にアルガス公国軍の援軍部隊と砦守備隊は、部隊全員の引き上げが終わり、完全に撤退を終えていた。
「こちら黒田。カウント10で、撤退支援の為に援護攻撃を行う。」
「東門に居残って居る各員は、至急退避されたし、繰り返す、至急退避されたしっ!!」
「了解っ!」
「直ぐにクリス君達に伝えろっ!!!」
黒田宗近一尉が率いるアパッチ部隊による撤退支援の為に行う援護攻撃の最終勧告が砦東門に居残る陸自隊員らに伝えられる。
中隊長は、部下に更に敵の眼前で、敵軍の侵攻を防いで居るリナ達に撤退をする様に伝えろと命じた。
「クリスさーんっ!!あと10秒で戦闘ヘリが来ますっ!!」
「直ぐに撤退してくだーさーいっ!!!」
「戦闘ヘリ?」
「あー、あの風車みたいな回転翼で空を飛んで居て、固定した翼にいっぱい鉄槍がぶら下がって居る奴?」
「だとしたら、我らはこのままじゃ・・・・ガタガタブルブル。」
ハンナは、あの戦闘ヘリの凄まじい攻撃の嵐に巻き添いに成る事を想像して、思わず身震いし、恐怖してしまう。
「でも・・・・この目の前の敵を止めないと、あたし等の撤退なんてしている暇がないんじゃ・・・・」
「リナは下がれ、私が最後に・・・・・」
「いやいや、それじゃ、装備が重くて足の遅いクリスが・・・・」
「お前が魔法で援護してくれくれれば、何とか。」
「いや、身軽で火力あるあたしの方が。」
「そんな事を言ってる場合かっ!!」
「もう直ぐ戦闘ヘリとやら来るんだぞっ!時間が無いっ!」
「下手したら逃げられない。そしたらあたしが、アリスの奴に怨まれる。」
「良いから、私に任せろって。」
「だーかーらーっ!」
「それなら間を取って我に任せ・・・・・」
「アンタが残ると一番更に面倒に成るわよっ!」
「お前が残ると一番更に面倒に成るんだっ!」
うっわーっ!!いがみ合って居るのに、うっかりさんへのお笑いトリオの様なオチ役への突っ込みだけは、息ピッタリだ。
流石は幼馴染だと言った所だろう。
「ひっ、酷い言われ様であるっ!!」と魔導槍エクスプロン・ランサーを構えながら凹んでしまう。
其処に朗報が入る。
「こちらRCV隊。東門に居残る3名に対して、援護する。」
「クリスさーんっ!!左から援護しまーすっ!!撤退してくださーいっ!!」
どうやら自衛隊の何れかの幹部が気を回してくれたらしい。
「ふっ、無用な心配だったな。」
クリス達は、自分達が一先ず逃げられる時間を得た事に安堵する。
「だったら、アンタを盾にして逃げた方が正解だったかしら?」
リナは軽い冗談を言って後退しながらクリスをからかう。
「冗談言ってないで、逃げるぞっ!」
「ってハンナはっ!?」
リナのジョークに真面目に応えるクリス。ふと気が付くとハンナが何時の間にか居ない事に気が付く。
「あっち・・・・・」
リナは東門の方向に指を指す。
「早っ!!」
リナの指差す方向には、ハンナがスタコラさっさと逃げていた。
敵に向う勇ましさ、もとい、見栄を張った姿は何所へやらである。
余程アパッチの攻撃に巻き込まれるのが怖いらしい。
同時にRCV隊こと87式偵察警戒車隊からの25mm機関砲の援護射撃を始めた。
「要支援者3名っ!撤退支援射撃よーいっ!」
「撃てえええええぇぇぇぇぇーーーーーっ!!!」
ダダダダダダダダッ!!!ダダダダダダダダッ!!!ダダダダダダダダッ!!!
ダダダダダダダダッ!!!ダダダダダダダダッ!!!ダダダダダダダダッ!!!
ダダダダダダダダッ!!!ダダダダダダダダッ!!!ダダダダダダダダッ!!!
ダダダダダダダダッ!!!ダダダダダダダダッ!!!ダダダダダダダダッ!!!
ダダダダダダダダッ!!!ダダダダダダダダッ!!!ダダダダダダダダッ!!!
「なっ、何なんだっ!?」
「右ですっ!右から攻撃ですっ!!」
「むうっ!!何処だっ!!どの辺りからだっ!?」
「分かりませんっ!!」
砦に攻め掛かって居るグリクス地方軍団のある一部隊の隊長は、突然の攻撃に面を喰らい、困惑して居た。
直ぐに味方に盾を構えさせつつ、指揮する高位の階級の上官らは地面に伏せる事で敵からの攻撃を何とか避け様として居た。
だが、それでも近くの味方の兵士等は、弾が盾を貫く金属音を響かせ、次々と討ち取られて行く。
敵の攻撃は丸で暴風の様に、暴虐な限りを尽くすかの様な攻撃を彼らに加えていた。
「こちらカントルナ砦最後尾。」
「要支援者3名の撤退と収容完了した。」
「そちらも撤退されたし。送れ。」
「了解した。送れ。」
「撃ち方止めっ!全車っ!順次っ!撤退せよっ!」
「殿者は、敵に牽制を攻撃を加えつつ撤退っ!」
「了解。」
ダダダダダダダダッ!!!ダダダダダダダダッ!!!ダダダダダダダダッ!!!
ダダダダダダダダッ!!!ダダダダダダダダッ!!!ダダダダダダダダッ!!!
ダダダダダダダダッ!!!ダダダダダダダダッ!!!ダダダダダダダダッ!!!
87式偵察警戒車隊は、最後尾車が敵に向かって牽制の射撃をしつつ、1号車から車両の方向転換をしながら、随時撤退を始めた。
3人が逃げ出した調度その時、黒田一尉率いるアパッチ部隊が、カントルナ砦東門の上空に現れる。
「カウント9・8・7・6・5・4・3・2・1。」
「撃てえええええぇぇぇぇぇーーーーーーっ!!!」
ブロロロロオオオオォォォォォーーッ!!!
ブロロロロオオオオォォォォォーーッ!!!
ブロロロロオオオオォォォォォーーッ!!!
ブロロロロオオオオォォォォォーーッ!!!
ブロロロロオオオオォォォォォーーッ!!!
ブロロロロオオオオォォォォォーーッ!!!
ブロロロロオオオオォォォォォーーッ!!!
アパッチの30ミリ機関砲が、カントルナ砦の東門に指し迫るグリクス地方軍団の上陸軍に対して、凄まじい暴風の如く襲い掛かる。
ある者はミンチにされ、死亡した事すら分からないままに幸福の内に天へと召され、運良く生き残った者は、身体の一部を引き千切られており、即死した方が楽だったと思う程に、その直後に全身に地獄の様な激痛が襲い掛かる。
その中には、数時間から数日掛かって死ぬ者も出て来る筈だろう。
黒田一尉は、7機のアパッチで、念入りに30ミリ機関砲を3分間撃ち捲くると、空対空ミサイル「スティンガー」と70ミリロケット弾・ヘルファイヤーを景気良く攻め駆けて来る敵目掛けて撃ち込んで行く。
その光景は、正に地獄の黙示録と言えたのであった。
「皆さんっ!こっちっ!こっちですっ!」
「早くっ!早くっ!」
自衛官は駆けて来た3人を早く来る様に促す。
迎えに来ていた高機動車3両の内、1両が走り出して居た。
残った2両はクリス達を脱出させる為に居残って居たのだった。
「ハンナさんは前の車両へ、クリスさんとリナさんは手前の車両に乗って下さい。」
「クリスさん、手持ちの盾を床にっ!」
「頼む。」
クリスは魔導盾を4人の自衛官らに渡して車内へと運び込む。
この盾は、魔力を操る心得が無いとソコソコ重い代物である。
「ハンナちゃん。その槍を床のこの場所に置いてっ!」
「分かったのである。」
ハンナも車両移動する時に、一番に邪魔に成る魔導槍エクスプロン・ランサーを指定された向きと位置に固定して貰う。
「準備完了しました。」
「乗り遅れた者や居残った者は居ないな?」
「はいっ!確認済みですっ!」
「良しっ!行ってくれっ!」
2両の高機動車が走り出す。
同時にアパッチのフルファイヤーが終わりを告げて、発砲音と発射音が鳴り止んで居た。
「「「「「うおおおおぉぉぉぉーーーーーーーーーーーっ!!」」」」」
「「「「「うわあああぁぁぁぁーーーーーーーーーーーっ!!」」」」」
「「「「「うわあああぁぁぁぁーーーーーーーーーーーっ!!」」」」」
「「「「「うわあああぁぁぁぁーーーーーーーーーーーっ!!」」」」」
「「「「「うわあああぁぁぁぁーーーーーーーーーーーっ!!」」」」」
自衛隊の攻撃が止め始めた隙を突いて、カントルナ砦へと一番乗りを果たしたグリクス地方軍団の一隊は、ギリギリの所で逃げ出して行く2台の車両を目撃し、攻め掛かる事が叶わず、そして、間に合わずにそれ等を見送ってしまうのであった。
アースティア暦 1000年・西暦2030年・6月7日・午前3時15分頃・アースティア世界・ユーラシナ大陸・ユーラシナ大陸中央地域・シベリナ中央地方・パイプ・ライン大河・パイプ・ライン大河中央流域地方・ブラキュリオス湖・アルガス公国・レジェンダリア州・ レジェンダリア諸島東部・カントルナ島・カントルナ砦から7キロ地点・ダバ派遣隊・特科火砲大隊陣地 第四・第五特科中隊陣地にて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
展開を終えた多連装ロケットシステム自走発射機M270(MLRS)20両と88式地対艦誘導弾20両の部隊は、ミサイルのコンテナを東の夜空へ・・・カントルナ砦の方角へと向けられる。
「こちら特科大隊、第四・第五特科中隊。」
「これより味方の撤退支援の為、此れより敵艦隊に向けて対艦攻撃を敢行する。」
「各車発射よーい。」
「目標の捕捉と割り振りと誘導照準先の入力完了しました。」
第四・第五特科中隊に所属する各車から準備完了の知らせが、それぞれの部隊の中隊長へと届けられる。
「第一波発射始めっ!」
多連装ロケットシステム自走発射機M270(MLRS)20両と88式地対艦誘導弾20両の発射口から、第一波のミサイルが撃ち出されて行く。
ゴオオオオオォォォォーーーーッ!
暗闇の中で、火柱と轟音と白い煙が立ち込めながら敵へと飛び立って行った。
一方、ダバ派遣艦隊の本隊、ダバ派遣支援艦隊に所属していて、護衛として居残っていた護衛艦しらぬい、おおよど、試験改修艦あすかの3艦からは、対艦ミサイルが発射され様としていた。
「対艦、対空対水上戦闘よーい!!」
「CICの指示目標、グリクス地方艦隊の水上艦隊及び空挺艦隊・魔導巡洋艦クラス艦隊!目標捕捉!」
「艦対艦誘導弾、発射始めっ!!」
「発射用意っ!撃てえええええぇぇぇぇぇーーーーーっ!!」
護衛艦しらぬいと試験改修艦あすかからは、90式SSM4連装発射管から2発つづ、護衛艦おおよどからは、ハープーンSSM2が2発が、それぞれの発射管から発射される。
陸海による対艦ミサイルの同時攻撃、そのミサイル群は夜空に一際目立つ炎を輝かせて、定められた目標へと飛んで行くのである。
ゴオオオオオォォォォーーーーッ!!と言う噴射音を響かせて、グリクス地方艦隊へと自衛隊が、撃ち放った長距離ミサイル群の第一波が命中する。
「ぐううっ!!」
爆発の衝撃で、オバム大佐が乗り込むドッコス・ギアレス級空挺戦艦オクト・パレスが、爆風等でガタガタと揺れて居る。
「報告っ!本艦隊の西側に展開中の水上・空挺の艦隊に、噂に聞くニホン軍の空飛ぶ鉄槍群が来襲し、我が艦隊の魔導巡洋艦、魔導駆逐艦等合わせて40隻以上が撃沈されました。」
「ええいっ!!たかだか砦からの撤退戦や殿退却の為に、此処まで派手に攻撃を仕掛けて来ると言うのかっ!?ニホンと言う国はっ!?」
今までの戦いから、彼はニホン軍と戦えば、艦隊や部隊は、殲滅か7割の損失を被ると言う割に合わないと言う事を理解し始めていた。
今回の戦いも、例え勝ったとしても割に合わないのは、目に見えていた。
それでも突き進まなければ成らない。
それが悲しきローラーナ帝国に所属する臣民であり軍人としての責務だからである。
「報告っ!!第二波が来ますっ!!」
「各艦っ!!回避いいいいいぃぃぃぃぃぃーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!」
オバム大佐の命令を空しく、無常にも沈めれ続ける友軍艦隊。
彼は何も出来ずに、この戦況を見守り続けるしか無いのだった。
一番乗りを果たした300人の兵士らは、追撃より砦内に残って居るかも知れない物資や金目の物を家捜し始めた。
戦利品の一部は、一番乗りの褒美として、一番乗りをした部隊が貰える事に成る機会が多い。
兵士らに取っては、数少ないチョッとした臨時収入が入る貴重な機会なのである。
「申し上げます。砦内は、蛻の空であります。」
「ちいっ!奴ら目、最初から撤退準備をして居たか・・・・・」
「成らば、急いで追撃に移るぞっ!」
一番乗りのを果たした一隊は、敵にしてやれたと思い知らされる。
その後ろから続々とカントルナ砦を完全に手にするべく、駐屯部隊を送り込まれて居た。
「おい、砦内に敵部隊が侵入した様だ。」
「うーん、もうちょっと入らないか?」
「約3千人程度、まぁ、一度痛い目に遭って居るからな。こんな物だろう。」
グリクス地方軍団もバカでは無い。以前制圧したジャイアガル島・ジャイアガル軍港基地での手痛い目に遭った事で警戒して居るのだ。
それでも敵施設を押さえなければ成らないのは、軍事的な勝利と言う観点から来る物で、こればかりは仕方が無いと言える。
しかし、これから犠牲と成る者からすれば、堪ったものでは無いのだがな。
「爆破だっ!」
「りょーかーい。」
コブラ隊に護衛され、CH-47JA輸送ヘリコプター4機は、隊員の撤退と砦爆破を行う為にギリギリまで近くの空域に居残って居た。
敵兵がカントルナ砦内へと入る様子を篝火や松明の光を頼りに双眼鏡で眺め見ていた。
其処にアパッチ隊と合流すると、爆破を任された隊員が、カチッと持って居た電波送信機の発破装置のスイッチをオンにする。
ドッカーーーンッ!!!
遠目にカントルナ砦は土煙を盛大に上げて吹き飛んで居た。
「此方は、チヌーク隊に搭乗中の殿回収班の部隊長ですヘリコプター部隊の最後尾から報告を致します。」
「カントルナ砦から全面撤退を完了。」
「地上部隊、水上艦隊、航空隊の全隊・全員の無事を確認。」
「負傷の程度は、概ね掠り傷程度。」
「なお、砦は予定通りに敵突入部隊と共に爆破。」
「敵の損耗の程度は、目算で3千人程度だと思われます。送れ。」
「こちら前線総司令部。了解っ!」
「無事な帰還を求む。交信を終わる。送れっ!」
夜の暗闇に消えて行く陸自ヘリ部隊と陸上車両部隊撤退と共に某怪獣映画の行進曲は、切の良い所で演奏が止められたのだった。
それを追い掛けるグリクス地方軍団は、軽装の騎馬兵隊や速竜騎兵隊が後を追って居た。
速竜騎士が扱うのは、速竜種と言う竜種である。その個体名はヴェキエルと言う。
その竜の姿格好だが、地球のヴェロキラプトルとディオノニクス等の恐竜の姿の想像図の絵に良く似ていた。
グリクス地方軍団の追撃隊は、それら陸竜種から成る速竜騎兵団と騎馬から成る通常騎兵団が、日シベ合同軍の追撃を仕掛けて来て居た。
その後を追う形で歩兵部隊がノロノロと後に続いて追い駆けて居た。
島内は広いが狭い湖畔の群島の中なので、日本の動力式車両には追い付けなくとも、行き先は分かって居る。
追撃中止の命が下るまで、彼らは手柄を求めて、軍を突き進む事だろう。
だが殿戦での戦いは、日本の方に分が有ると言える。
「来たぞおおおおおぉぉぉぉぉーーーーーーっ!!」
「各車両の各員っ!構えええええぇぇぇぇぇーーーーーーっ!!」
軽装甲機動車隊12両からなる一隊が乗車して居た隊員ら共に射撃体勢を取って居た。
車両から顔を出している隊員は、車載されていた5.56ミリ機関銃MINIMIを構えていた。
隊員の中には、01式軽対戦車誘導弾や84ミリ無反動砲を構える者も居た。
弾数は少ない物の、敵からすれば強力な火器を揃えていた。
「まだだっ!まだ撃つなよ・・・・・・・・・」
軽装甲機動車隊を指揮している部隊長は、殿戦の第一の遅滞戦と成るこの持ち場を任される緊張にも関わらず、冷静に指揮を執って居た。
殿での戦いは、一気に逃げ出すと言う物ではない。
味方同時が連携を取り合い、後続から逃げて来る部隊と入れ替わりながら、敵の追撃を食い止めつつ、本隊を撤退させて行く物である。
やり方は様々だが、基本は大将または司令官を逃がすのは勿論の事。
今回の場合は、アルガス公国軍をレジェンダリア諸島の中央部本島であるセイジョン・ローグリア島のセイジョン・ローグリア城へと逃がす事である。
「やあっ!!」
「はいやっ!!」
グリクス地方軍団の追撃第一陣である第九グリクス地方騎兵団は、3千の馬と竜の混成騎兵団を率いて軽装甲機動車隊の真正面に現れた。
手に軍団旗や分隊旗、松明を持った騎兵多数軍団の左右に同道し、部隊の誘導をして居る。
それらを迎え撃つのは、自衛官たった48人吞み。
騎乗する馬や竜の蹄の足音だけが遠くから大きく響き聞え渡って居る。
「構えっ!!」
隊長は静かに射撃準備を命じ、敵が有効射程内に入るのを待ってから、「撃て」と命令を下そうとして居た。
「目標っ!正面敵騎兵団。距離700・・・・・・・・撃てえええええぇぇぇぇぇーーーーーーーーっ!!」
ダダダダダダダダダダダダダダタダッ!!ダダダダダダダダダダダダダダタダッ!!
ダダダダダダダダダダダダダダタダッ!!ダダダダダダダダダダダダダダタダッ!!
ダダダダダダダダダダダダダダタダッ!!ダダダダダダダダダダダダダダタダッ!!
ダダダダダダダダダダダダダダタダッ!!ダダダダダダダダダダダダダダタダッ!!
ダダダダダダダダダダダダダダタダッ!!ダダダダダダダダダダダダダダタダッ!!
「撃ち方止めっ!」
5分程で銃撃を止めると、生き残った騎兵団の兵士達は、軽装甲機動車隊に目掛けて突撃を仕掛けて来た。
「まだ、来るか。」
「自衛隊の方々、撤退準備を。」
「後は我らでも十分に討ち勝てます。」
「各員撤収っ!」
弾を大方撃ち尽くした軽装甲機動車隊は、残弾をある程度有る内に、撤退を開始した。
弾の無い自衛隊は、白兵戦を主力としている軍隊相手には不利な点が多々多い。
万が一の為に、後ろに控えていたアルガス公国軍のレジェンダリア騎兵団千人が、突撃を仕掛けて行く。
「「「「「うおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーーーっ!!」」」」」
レジェンダリア騎兵団は、軽装甲機動車隊によって兵数を削られて居る第九グリクス地方騎兵団を意図も簡単に討ち取って行く。
大軍と重機動師団が相手で無ければ、アルガス公国軍の騎士団の実力が上である。しかも敵騎兵団は少数、この場での勝敗は既に付いていた。
「グリクス地方騎兵団の第一の追撃軍っ!!打ち破ったりーーーーーーっ!!」
「「「「「うおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーーーーっ!!」」」」」
レジェンダリア騎兵団は、勝ち鬨の歓声の声を上げる。
「次が来る前に、直ちに撤退いいいいいいぃぃぃぃぃぃーーーーーーーーーーーーーーーっ!!」
勝利の余韻に浸るのも束の間にして、レジェンダリア騎兵団は、速やかに撤退を開始する。
撤退の夜は、まだまだ長い。
両軍の戦いは、恐らく夜明け近くまで続くと見られて居た。
撤収するレジェンダリア騎兵団の後ろからグリクス地方騎兵団の足音と松明の明かりが再び迫って来て居たのであった。
アースティア暦 1000年・西暦2030年・6月7日・午前3時15分頃・アースティア世界・ユーラシナ大陸・ユーラシナ大陸中央地域・シベリナ中央地方・パイプ・ライン大河・パイプ・ライン大河中央流域地方・ブラキュリオス湖・アルガス公国・レジェンダリア州・ レジェンダリア諸島東部・カントルナ島・カントルナ砦から約6キロ付近・ゲースター島との境界水域浅瀬付近にて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
自衛隊を中心とした日シベ合同軍は、ゲースター島の北側に、停泊して居るダバ派遣艦隊に合流して居た。
アルガス公国軍の荷馬車隊とレジェンダリア騎兵団を合わせた3千人は、一時の休息を終えて出発しつつあるのだった。
レジェンダリア騎兵団やアルガス公国の本土から派遣され軍勢には、自衛隊から軽食やスポーツドリンクが提供されていた。
戦争中の中で、食事をするのは、如何なのかと思うかも知れないが、身体を激しく動かして居ると成れば、空腹と喉の乾きが有る物。
手の空いた時に何もしなければ、返ってバテしまう事がある。
余り食べすぎや飲みすぎに注意すれば、戦うのには支障が無いのである。
所謂これは、ハンガーノック対策でもあるのだ。実は戦う前にも参加する兵士らに、食事に気を使えと再三に渡って命じられて居る。
特に戦う前の酒類や食べすぎ飲みすぎに着いては、厳禁とされ、厳しく取り締まられて居た。
その分、陸自と海自の補給科の補給士らによる質の良いお手製料理が振舞われて居た。
その手伝いをアルガス軍専属の料理人にも調理の仕方を伝えられて居る。
この交流が切っ掛けで、各国に地球国家から経由した形で、和風洋式料理が広まったと後世の歴史家は見ている。
和風洋式料理とは、所謂言う所の明治時代から昭和時代かけて、そして現代に至るまでに、日本人の味覚に合う様に調理レシピを基にして作られた洋食堂で出されて居る洋風料理の事である。
特に知られて居るのは、カレーにビーフシチュー、すき焼き、肉じゃが、スパゲッティナポリタンと言った所だろう。
何で先きに述べている料理が和風洋式料理なのかと言うと、カレーとビーフシチューなんかは明治時代の頃に、外国へと出張なんかに出かけた事の在る海軍の武官や政府省庁なんかの官僚らが、また食べたいとか栄養面で素晴らしいとか言った事から持ち込まれたのが始まり。
すき焼きも幕末に外国から入って来た肉食文化を日本風にアレンジをした料理で、今では和食とされて居る面も強いが、元々日本には無かった料理である。
また、肉じゃがは、またビーフシチューが食べたいと言った人々の中で、お抱え料理人に作られたビーフシチューモドキ料理が発祥と成って居るが、何時の間にか家庭料理の一つに成ってしまって居る。
当時は聞きかじった材料と調理方法だった故に、味が疑わしいなかで出来上がった料理を口にしたら大変に美味かったから海軍なんかを中心として全国へと広まったのは、日本らしい変な話であると言える。
更にスパゲッティナポリタンは、イタリア料理では無く、完全に日本料理である事は有名な話である。
その発端には、第二次世界大戦に敗戦をした日本を占領統治するべく、ダグラス・マッカーサーをトップとする進駐軍に接収されてホテルニューグランドの料理長による物が始まりの一つで在るらしく。
進駐軍の兵士達が、ケチャップで和えただけの具なしスパゲッティを食べているのを見て、ケチャップだけでは味気ないと考え、生トマト、タマネギ、ニンニク、トマトペースト、オリーブオイルでトマトソースを作り、炒めたハム、ピーマン、マッシュルームを加えてソースで和えたスパゲッティを考案したという。
また、横浜市野毛の洋食レストランでの発祥地とする話も在るが、何れにしても、この様にして様々な形と時代経て行く事により、日本国内のパスタ文化は徐々に広まり、たらこスパゲッティや和風スパゲティと言ったジャパンオリジナルパスタが産まれて行った事は間違いない筈である。
特にカレーにビーフシチュー、すき焼き、肉じゃが、和風パスタ、それに各種具材を入れたおにぎり等は、後に戦後に成るアースティア世界各国軍の定番料理に成って行ったと言う。
「第一・第四艦隊補給完了。」
「10戦車隊、各車燃料及び銃砲弾の補給完了。」
「おーいっ!16式と89式の点検まだかーっ!?」
「各車っ後3分で点検終了でーすっ!」
「急げええぇぇーっ!偵察オートバイ隊の話じゃ、敵は8分位で来るそうだぞっ!」
日本を発ってから一週間くらいが経って居る。
万が一に備えて派遣されて居る陸海空の整備隊員達らは、誰もが代わりに成れる体制で、何でも修理出きる様にと言われて居た。
そんな無茶なと言うだろうが、その為の人選と補修もさせられて居るし、色々と癖の有る経歴を持った隊員が部隊に派遣されて居た。
重要な部分以外の整備修理での手伝い程度なら問題ないと見られて居る。
自動車の整備の免許を持って居て、航空機の整備免許証まで持って居るなんて言う変わり者も居たりしていた。
他にも様々な整備に関する免許資格を有する者が多く見られて居た。
何でそんな有り得ない資格の取得して居る人が多いかって?
それは退職したら何かの役に立つかなと言う単純な考えからだった。
2030年代世界の日本国内では、再就職がとても難しく、資格を持って居ないと正社員での定職に就く事は、今以上に突き難い世の中でも有ったのだった。
そんな訳で、誰かが、例え動けなく成ったとしても良い様に、陸海空の整備隊員は、選抜メンバーで構成派遣された整備の要員の猛者達が懸命に働いて居た。
「では井上一佐。この場お引き受けします。」
「無理はするなよ。」
「はい。」
水陸旅団から派遣されたAAV7水陸両用車10両と240名の普通科中隊の隊員達であった。
既に境界線の浅瀬には、少数だが爆薬と起爆も出きるタイプの地雷が仕掛けられて居る。
「サザッッ!こちらニンジャ02っ!」
「敵集団、凡そ6000人。」
「グリクス地方騎兵団の追撃部隊の第二波だと思われる。送れっ!」
「了解っ!直ぐに迎撃態勢に移る。送れっ!」
「お二人供っ!敵が来ましたっ!」
「来たか?良し乗船急げええぇぇーっ!」
ビーチングしている輸送艦やヘリで移動する自衛官らは、それぞれ別行動する部隊と別れ、非戦闘要員や幹部自衛官の一部は艦隊へと乗船を急ぐ。
兎に角、追撃部隊を振り切るか、手痛い目に遭わせて撤退して貰う以外に、今夜の戦闘は、決して終わらないだろう。
日シベ合同軍上層幹部達の予測では、向って来るのは、手柄を欲しさに先走って居る部隊だと考えられて居た。
アルガス公国軍を始め、この作戦に関わるシベリナ連合同盟に所属している軍関係者やリナからの情報提供を受けて、そう幹部自衛官らは予測して居たのだった。
成らば、そう言った手合いを相手にするのなら、話は簡単。敵の上層部に止めて貰うのが一番に手っ取り早い。
追撃が割に合わないと考えれば、追撃戦闘を止めるのが軍組織としての定石である。
ボゥーと汽笛を慣らし、ダバ派遣艦隊は去って行く。
一部の幹部と隊員らは敬礼をして互いを見送り有っていた。
「さぁて、此処で敵を10分間ほど足止めをする。」
「隊長、たった240人ですか?」
「ふふっ、なぁに、保険を掛けて有るからな。」
「使えるんですか?」
「まぁ、見ていろ。」
他の陸自部隊やアルガス公国軍も立ち去り、居残る彼らの周囲には誰も居ない。
「くーっくっくっっ!遂にっ!この戦場での出番が、とうとう来たっ!」
「そう、やっとこの我が活躍する時が来たのであーるっ!!」
魔導槍エクスプロン・ランサーを構えるのは、紅葉の幼馴染にして問題児の頭の可笑しな天使こと、ヨハンナ・リリロッカ・ヨシカーナ。
そのハンナと一緒に居並ぶのは、12名の聖天騎士であった。
「あのー隊長、私から見ても皆から見ても、どうやって見たとしても、あの子達では不安なんですけど。」
「それに如何するんですかっ?」
「人の背丈と同等の長さが有るあの槍は?」
「AAV7内には、ちょっとだけ長すぎて入らないですよ。」
「それにアセリア族は、羽も生えていますから二人分の席は必要に成ります。」
ハッキリ言って車内は手狭になる。
それにアセリナ族は、アレをぶっ放すと動けなくなる事は、この場に居る全員が承知して居た。
「ふっ、この戦闘が終われば、我々は余裕で退却出きるだろう。」
「それもあの使えない魔導砲撃使うのはちょっとなぁ~考え、誰も進んで作戦に採用しない連中を有る意味ボロ雑巾の如く使いこなしてな。」
「隊長殿っ!貴方は悪魔の様な方だっ!」
「戦場に居る以上に生き残る手段を考え続けなければ成らないものだっ!」
「成らば使えそうな物は、何でも使えっ!!」
「うわぁ~・・・・・・」
思わず彼のロボットアニメに登場する祖国に恨みつらみを持った、仮面の司令官の亡霊でも乗り移ったのかなと、思ってしまいそうな部下達だった。
「さて、冗談は此処までにして・・・・」
(うわぁ~その冗談キツイわーっ!)
「いざと成れば、車両に縛り付けて持ち帰れば良いだろう。」
「各小隊戦闘準備っ!!」
部隊は集結地点に使って居た近くに在る林へと身を隠した。
茂みや木々の間に身を潜めて射撃体勢を取る。
ハンナ達もそれぞれ近くの停車している車両の影に身を隠した。
「射撃よーいっ!」
隊長の命令で伏せ撃ち等の態勢で小銃を構える。
他にはAAV7水陸両用車10両の12.7ミリ中機関銃も射撃体勢を取る。
「ハイヤッ!!」
「ヤッ!!ヤッ!!ハイヤッ!!」
島の境界線の浅瀬を渡りにやって来たのは、グリクス地方騎兵団の第14・17騎兵団だった。
松明の明かりだけがボンヤリと騎兵団の居場所を見せていた。
「バカめっ!!」
「戦争中以外での夜間での明かりは、安全地帯か平時以外では、只の的にしか成らんのを連中は知らんのかっ!?」
AAV7水陸両用車10両と240名の普通科中隊を率いる中隊長は、敵騎兵団のお粗末な行軍を見て不敵に嘲笑って居た。
騎兵団が浅瀬を半分を超えた所で、起爆スイッチを作動させた。
「今だっ!爆破しろっ!」
ドッカアアアアアァァァァァーーーーーーーーーンッ!!!
一斉に爆破されるグリクス地方騎兵団の第14・17騎兵団。
この爆破で騎兵団は、爆破による衝撃波と炎と散弾による被害で、少なくとも2500人は、殺られていた。
「撃てえええええぇぇぇぇぇーーーーーーっ!!」
敵が爆破で浮き足立って居る所を中隊長は、容赦なく射撃命令を下し、一斉に攻撃を加えた。
ダダダダダダダダダダダダダダタダッ!!!ダダダダダダダダダダダダダダタダッ!!!
ダダダダダダダダダダダダダダタダッ!!!ダダダダダダダダダダダダダダタダッ!!!
ダダダダダダダダダダダダダダタダッ!!!ダダダダダダダダダダダダダダタダッ!!!
ダダダダダダダダダダダダダダタダッ!!!ダダダダダダダダダダダダダダタダッ!!!
ダダダダダダダダダダダダダダタダッ!!!ダダダダダダダダダダダダダダタダッ!!!
凄まじい銃撃音が鳴り響き、次々と騎兵隊の騎士達は成す術も無いままに、撃ち貫かれて落馬して行く。
「くそっ!!此処にも待ち伏せかっ!?」
「コソコソと隠れて、丸で猟師の様な連中だっ!」
現代戦を知らないもの達からすれば、日本の戦い方は、彼らも良く知って居る戦術や戦略を練って周到に行われる奇襲と言う戦い方とは、ちょっとだけ違う。
銃や兵器を用いた散兵戦術等が元に成って居る。
連携と効率重視の兵法であり、少数で大多数を撃ち破る唯一の戦い方なのだ。
まぁ、少数の白兵戦で、こんな戦い方を平気な顔でする人物は、日本史の中で鬼島津こと、島津義弘が代表的な人物の一人だと思う。
「騎士団長殿、あれをご覧ください。援軍です。」
「おおっ、19騎兵団と8騎兵団か?」
更にグリクス地方騎兵団6000人が現れたらしい。
「撃ち方止めえええぇぇぇぇーっ!撃ち方止めえええぇぇぇぇーっ!次弾装填っ!!!」
此処で一旦、射撃を止めつつ、小銃の弾を使い切り、隊員達はカートリッジを取り替える。
状況把握の為に騎士団側も距離を取り、先の交戦での生き残りを搔き集めつつ、体制を整える。
自衛隊とグリクス地方騎兵団の両者は、射撃による土煙が晴れるのを互いの軍は待った。
「ちいっ!!援軍か?」
「数が変わってませんね。如何します?」
「ふん、此処でアレを使わんと退却せんだろうな」
「本当に使うんですね・・・・」
「当たり前だっ!」
「さぁ、アセリナ王国・聖天使騎士の諸君っ!出番だぞっ!」
「くっくっ、勿論だともっ!大船に乗った気で、我らに任せて置くのであーるっ!!!」
丸で時代劇に措いて、ヤクザの親分さん何かが言う所の「先生方っ!出番てずぜっ!」と言わんばかりな感じで隊長は、ハンナ達に攻撃を命じた。
ハンナとアセリナ王国聖天使達は、林からふわりと空へと飛び発つ。
「なーっはっはっ!!良くぞ我が仕掛けた罠を耐え抜いた。」
「止めは、我とアセリナが誇る聖天騎士達が刺してくれようぞっ!」
「あのーっ、この作戦、俺が考えたんだけど・・・・・・」と隊長がぼやいたが、この状況に酔い痴れているハンナには、届かないし、聞くことも無いだろうし、完全にその場でのノリで言って居るから、特に何も考えても居ないだろうし。
「げっ?!アセリナの頭の可笑しな聖天騎士共だっ!!!」
「ななっ、なんでっ!?此処に頭の可笑しな聖天騎士共がっ!?」
突如として、空に舞い上がったアセリア聖天騎士の出現に、グリクス地方騎兵団の騎士達は、各々この世界でのお約束的で、お馴染みの台詞を言い回して行く。
「こりゃ、分が悪すぎるっ!」
「しまった・・・・・深追いし過ぎたっ!」
隊長殿は、心の中で思わず突っ込みを入れる。
「俺達の銃弾よりも、そっちの方が怖いんかいっ!!!」
そりゃ、そうだろう。
自分達の銃弾の嵐よりも、ハンナ達、アセリア聖天騎士の方がインパクトが有ると言われれば、納得がいかないのだ。
そんな事をスルーするかの様に、アセリア聖天騎士達は槍を、魔導槍エクスプロン・ランサーをチアリーディングで使用するバトンの如く、ブンブンと振り回して構えながら呪文を唱え、エクスプロトンバスターを撃ち放つ為に、魔力を掻き集め始めた。
「我れらが聖なる力の源泉たるマナよ、今こそ我が前に立ち塞がりし怨敵を滅さんが為に、その力を覚醒させ、その力を世界に示さんっ!!」
「これぞっ!!我がアセリアの天使たる者が森羅万象を操り、この世全ての歪みと悪を正し討ち果たすものなりっ!!」
「まっ、拙いっ!」
「総員っ!!退却ううぅぅーっ!退却ううぅぅーっ!退却ううぅぅーっ!退却ううううぅぅぅーーーーっ!!!」
「「「「「「「うわあああああああぁぁぁぁぁぁぁーーーっ!!」」」」」」」
「死体も残らずにっ!死ぬのだけは嫌だああああああぁぁぁぁぁーーーーーっっ!!」
死を目前にして錯乱する騎士達。
でもね、それって死に方としては、一番楽なんじゃ・・・・・・・・・・・
「ミラ、すまん今日は俺は此処で・・・・」
「母さん産んでくれて有難う・・・・・」
ちょ、ちょっとっ!!!ちょっとっ!!!爆裂閃光魔法で吹き飛ばして、消し炭にされ様とする前に、そんな話は重過ぎるから・・・・・・・・・・
グリクス地方騎兵団の騎士達は、大慌てで逃げ出して行くが、当然、其処はハンナ達の有効射程圏内である。
この状況で生き残れるのは、恐らく一割にも満たないだろう。
この世界の者達が、こうしてアセリア聖天騎士達の天罰的攻撃を受けると、何故か走馬灯が見られるとか言われて居るのは、幸運にも生き残りが、恐怖体験を語り、それを聞いた者達が勝手な妄想を交えた話を誇張して噂を広めて居るからだった。
人々は言う。アセリア聖天騎士に睨まれ、天罰を処されたのなら悔い改めよと・・・・・・・・・・・・・
「我の望む白き荒野なり、虚無の白き地平線なり、天の全てを白き白夜なりて、踊れ、踊れ、踊れ、踊れと力の本流なりっ!!」
「これこそが並ぶ事無きっ!!この世っ!!この世界に措いて最大の攻撃魔導砲っ!!!」
「悪鬼の巣窟たる世界の敵たる帝国よっ!!」
「これまでの行いを懺悔しっ!灰燼に滅せよっ!」
「エクスプロトンバスタアアアアアアアアァァ ァァァァァーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!」
ハンナ達は、魔導槍エクスプロン・ランサーをグリクス地方騎兵団の第14・17騎兵団の行き残りと迫り来ていた19騎兵団と8騎兵団が、一転して東へと転進し、逃げて行く中を一撃必殺のエクスプロトンバスターを撃ち放ったのだ。
「総員対ショック態勢っ!!!姿勢を低くしろっ!!!」
「伏せろっ!伏せろっ!伏せろおおおおおぉぉぉぉぉーーーーーーーっ!!!」
「「「「「ぐおおおおおおぉぉぉぉぉぉーーーーーっ!!!!」」」」」
「「「「「うわああああああぁぁぁぁぁーーーーーーーっ!!」」」」」
自衛隊員達240人は、撃ち放たれたエクスプロトンバスターによる凄まじい爆風と暴風の中で姿勢を低くしたり、AAV7水陸両用車10両の影に隠れたりと、各々が対ショック態勢を取ってやり過ごして行く。
その暴風も、約7分くらいで止み、土煙と小石が降り注ぐ中、アイガードの誇りを拭って身体を起こす。
陸自隊員等は、辺りを見回すと茶色い煙が徐々に晴れて行く。
「「「「「ケホケホっ!ゴホゴホっ!」」」」」
「やりましたね・・・・・」
「ああ、勝った・・・・・」
「ですが、後で地形を変え過ぎたなんて言われ、怒られませんかね?」
「返って名物にでも成ったりしてな・・・・・・」
「そんなバカな事なんて、有り得ませんよ。」
そんな彼らの前に、煙がハッキリと晴れると、エクスプロトンバスターによるクレーターと吹き飛ばされ削られた地面が残っていた。
吹き飛ばされたのは、土だけではなく、埋まっていた岩盤さえ抉れ見え、露出して居た。
後年にカントルナ島の西側岸辺は、イツクシマ作戦の序盤で出来た撤退戦での壮絶な戦いの痕跡として、アルガス公国とアセリア王国との間で、戦史に置ける史跡認定を受けるのである。
特に英雄ハンナの活躍の場の一つと成ったこの場所は、アセリア族に取っての大人気の指定史跡の場所として、語り継がれる事に成るのであった。
「あふぅ、快感なのであーる。ふぅーっ・・・・・」
「おーい。予定通りに彼女達を回収して撤収っ!」
「了解ーっ!」
ゆっくりと地上へ舞い降りるハンナ達は、様々な形でパタリと倒れこむ。
それはこの大変に素晴らしい世界で活躍する頭の可笑しな爆裂魔法少女の様な幸せな顔付きをして居たと言う。
それを自衛官らは、丁寧にAAV7水陸両用車の上に槍と共に縛り付けて水上から撤退して行ったのだった。
アースティア暦 1000年・西暦2030年・6月7日・午前3時45分頃・アースティア世界・ユーラシナ大陸・ユーラシナ大陸中央地域・シベリナ中央地方・パイプ・ライン大河・パイプ・ライン大河中央流域地方・ブラキュリオス湖・アルガス公国・レジェンダリア州・ レジェンダリア諸島東部・カントルナ島・カントルナ砦・カントルナ砦 東側付近上空・グリクス地方軍艦隊にて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
自衛隊とハンナ達アセリア聖天騎士13名の活躍も有り、グリクス地方騎兵団の第14・17騎兵団と19・8騎兵団併せて1万2千人を壊滅させる。
それでもグリクス地方軍団の追撃は、まだ止まる気配が無い。
それは何故か?それには理由が有った。
「おのれっ!!この戦で10万人近い軍の手勢が殺られたっ!!!」
「まだ作戦続行は可能だが、このままでは、我が軍団は、この遠征で本当に採算が合わず、割に合わない戦いに成るっ!!!」
「ひいいいいぃぃぃぃーーーーっ!!、あっあああああっアセリア聖天騎士のっ!!」
「ぐわわわわっ!!あの光は、俺達への天罰の光だ。わあああぁぁぁーーーーっっ!!」
「生き残った肝心の騎士団の者達が、これでは・・・・・・・」
前線副司令官ラオウ・ケビン中佐は、ハンナ達アセリア聖天騎士13名が撃ち放ったエクスプロトンバスターによる一撃を受けても、尚も偶然にも生き残った20名から敵に付いての何らかの情報を得ようとしたが、精神を病んでしまって居て、話すら出きずに居たのだった。
ある意味、あの頭の可笑しな中二天使集団達は、恐ろしいかも知れないと言えた。
此処まで戦闘不能に陥る将兵が少なからず出て来ると成ると、あのアホな連中も満更戦力としては捨てたモノでないと一定の評価を自衛隊幹部らは、後のグリクス地方軍団の生き残りに付いての情報を知ると、そう考える様に成るのであった。
だが、使い辛い人材である事は変わりないので、確実に勝てると踏んだ時の必殺ビーム砲と言う立ち居地での必殺兵器扱いされ続ける事に決定して居たのである事を付け加えて置く。
「ガミトフ閣下と今後の方針を改めて決めねば成らん。」
「ラオウ、明け方までセイジョン・ローグリア島のセイジョン・ローグリア城から16キロ手前で、先行している追撃軍の追撃を止めさせろっ!!!」
「如何も敵は島から撤退を決めて居る様に見受けられる。」
「砦や要塞に港、どれもこれも肝心な施設が置かれて居る筈の各要地を捨てながら撤退を行って居る。」
「その序でに爆破等の罠を仕掛け、我が軍に手痛い一撃を与えながら本拠へと向う所を見ると、奴等はニホン軍の支援を受けて、西側の港に集結して一気に撤退と言う所だろう。」
「頑強な抵抗も、少しでも味方の将兵を無傷で逃がすのが、奴らの狙いの一つだ。」
「そう判断して宜しいと思われますな。」
「この場合、無理攻めは返って危険です。」
「ですが、何れのニホン軍と戦い振りを見るに、これまでの常識が通じない新戦術が多く見受けられますな。」
「貴官の言う通りだ。」
「小勢で大多数を討ち取るなど、この世界の有史以来、殆んど有り得ん戦い方だろう。」
「我が帝国にも、その様な兵法が書かれている書物や記録が殆んどない。」
「いや、古に転移した幾つもの国家の内、何れかの国で有り得た戦術が多く有ったかも知れん。」
「だが、余りにも荒唐無稽が過ぎて実用的で無いと判断されて、伝わって居ないのやも知れない。」
「しかし、我々も油断はして居ないと言いたいですか、こうも敵の策略や戦術が尽くも的中し、我が軍を苦しめてくれる。」
「全く以って忌々しい事だ。」
「一体どの様な歴史的な経緯が有って、あの様な戦術を考え付いたのでしょうね。」
二人は自衛隊が仕掛けて来た日本と地球で考えられ、各偉人によって研鑽され培った独自で特異な数々の戦術に舌を巻いて居たのであった。
日本の居た地球世界は、人類が国家を持ち、勢力争いが途絶えない世界で、少数精鋭で大群を蹴散らすやり方は、歴史を振り返れば、結構それなりにあるのである。
その膨大な戦略で受けた傷は、彼らに辛酸を舐めさせたと言えたのだった。
アースティア暦 1000年・西暦2030年・6月7日・午前3時45分頃・アースティア世界・ユーラシナ大陸・ユーラシナ大陸中央地域・シベリナ中央地方・パイプ・ライン大河・パイプ・ライン大河中央流域地方・ブラキュリオス湖・アルガス公国・レジェンダリア州・ レジェンダリア諸島東部・カントルナ島・カントルナ砦から約6キロ付近・ゲースター島・ケーマスター島中心部にて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
グリクス地方軍艦隊の空挺竜母艦隊に搭載されているグリクス地方竜騎士航空隊は、カントルナ砦での戦いに置いて、日本・シベリナ合同軍に、1500騎も居たワイバーンの内、実に500騎ものワイバーンと竜騎士を討ち取られていた。
グリクス地方軍団のレジェンダリア諸島に措いて、初戦での本格的な戦いで航空戦力の3割を失うと言う手痛い結果と成っていた。
その傷を癒す術も暇も無いままに彼らは、日本・シベリナ合同軍を追う為に、先行した追撃部隊を支援する部隊を再編成し、ようやく先行部隊のいるケーマスター島付近へと到着しようとして居たのだった。
前線副司令官ラオウ中佐は、ガミトフ・バイマン中将が率いる後続艦隊と共に補充されたグリクス地方竜騎士航空隊の300人の人員と、先の戦いで無事であった竜騎士航空隊から1000人の人員から抽出した竜騎士達を合わせた300人を追撃部隊を航空支援として向わせて居た。
今度は念を入れて、グリクス地方軍団の重機動師団と歩兵軍団を合わせた4万人も軍勢を編成し、更に騎兵隊4千人も増加派遣させて居た。
機動師団には、機動性重視し、行軍にも比較的早くて、歩兵軍団の歩行速度でも付いて行ける重騎竜隊のトリプトドン隊、火炎竜隊のフレイムランドドラゴン隊が同行して居た。
しかし、日シベ合同軍はケーマスター島中心部に陣を構えて、待ち伏せをして居たりする。
此処はカントルナ島の西側の岸辺から約20キロの地点。
ケーマスター島中心部には、小高い山があり、その周囲には、所々疎らに林と丘が点在して居て、人の気配はして居ない様であった。
更にその東側の中腹には、開けた場所が幾つもあり、天幕や木材で作った塀が幾つも見受けられ、丸で砦の様であった。
しかも、篝火を付けて、東側を見張って居るかのように設置されていた。
グリクス地方竜騎士航空隊の追撃部隊は、訓練と根気さえ有れば、誰でも使える魔法である照明魔法ライトを使用して、地上や進む先を照らしながら部隊を進めていた。
彼らの後ろには、地上をノロノロと行軍して居る味方の軍勢が追い掛けていた。
部隊は日シベ合同軍の拠点の光を見付けると、その警戒して居るであろう、ギリギリの地点を見極めながら暗がりの中を慎重に飛んで行く。
「おい、あれ・・・・・・」
「敵の砦か何か?」
「分からん。」
「隊長殿あれをっ!」
グリクス地方竜騎士航空隊・追撃部隊の隊長は、部下の指差した方向へと向う。
「馬車だな・・・・・・・」
「1・2・3・4・5・6・7・・・・・うーん、野外ランプや松明の明かりが灯って見える範囲で、数えた限りじゃ、30台あるな。」
「あの小高い山は、我々と戦う為に建てられた臨時の砦なのだろうな。」
「そうみたいです。確か・・・この島に砦は無かった筈です。」
何度も偵察や密偵等を使ってこの地を下調べしているグリクス地方軍団。
その彼らが、最近まで事前に下調べを行って居るし、調べる事を怠っても居ないので、この島に砦が無いのは確かな事だった。
「どれ位の敵が集結し、居残って居るか分からんが、このままやられっぱなしなのは、グリクス地方軍団の沽券に関わる。」
「地上部隊とも連携して、あの砦を潰し、調子に乗ってやがる敵に黒星を付け加えてやろう。」
「はっ!!それでは早速、地上部隊に連絡を取って、攻め掛かりましょう。」
深夜の暗がりを松明や照明魔法ライトの明かりで馬車達は、追撃から逃れんとして、西へと急いで移動している様に見えてて居た。
グリクス地方竜騎士航空隊・追撃部隊の者達らは状況判断から、そう見えたのだった。
そして、怪しげな砦に付いては、臨時の集結地点として作った即興の砦なのだろう考えた彼らは、敵が道なき道を馬車行列を作り、アルガス公国軍は敗戦で逃げ延びるのに、必死な様であるとも判断する。
彼らは一気に発見した砦を揉み粒さんと攻め掛かると決め、攻撃の準備を整える。
「今だっ!火炎弾を撃ち込めっ!」
ギャオオォォンとワイバーン達は咆哮を上げて、敵の砦へと火炎弾を撃ち込む。
彼らが空から砦内を見る限りでは、人影が多数見受けられ、その中では、地図面を見て作戦の進行状況に付いて話して居ると見受けられる者達か居るのも見えていた。
「撃てっ!撃てっ!撃てっ!何も出きずに討ち取られた者達の仇を取るんだっ!!」
「うおおおおぉぉぉぉぉーーーーーーーっ!!!」
「やってやるうううううぅぅぅぅぅーーーーーーーーーっ!!!」
「いけええええぇぇぇぇぇーーーーーーーーっ!!!」
次々と300騎ものワイバーンから繰り出される高温の火炎弾の前に砦は、あっと言う間に、小高い山ごと、炎に包まれて崩れ去って行く。
やがて地上に居る部隊も生き残って居る敵に攻勢を掛けんとして、壊滅しようとして居る砦へと突入し、攻撃を仕掛けて行った。
しかし・・・・・・・・・・・・
「居ないだと・・・・・・・」
「何所にも居ない・・・・蛻の殻だ。」
「それ処か死体すらないぞ・・・・」
「おい、これって・・・・・」
「藁人形に、木人形だと・・・・・・・」
突入した彼らが見付けたのは、焼け焦げたり、燃え盛っていた人形の姿だけだった。
「この馬車に乗って居る人や引っ張っている馬は・・・・・・・全部木材で出きた偽者だっ!!」
「しかも、魔法で細工されてやがるっ!!」
「こっちのは、魔導人形だっ!」
「そっそれもバカ高い品物だっ!」
「こうもあっさりと使い捨てるなんて、何所のどいつだっ!」
「魔導人形は、一体数万エイリスするんだぞっ!」
「何て勿体無い事をするんだっ!」
いやいや、そんな所は、今は突っ込む所が違うでしょ。
とある兵士は日本円で数万円から数十万円する品物を戦で平気な顔で使い捨てる心境に対して激怒して居た。
なお、それをした張本人とは、アプリコット魔導商会を実家に持って居るヘスティア騎士団・魔導師隊の隊長であるマオ・アプリコット大尉である。
彼女は世間からは、こう言われていた。
通称・戦で重課金する商家の女魔導師。
ネトゲーで重課金をして勝ちまくるかの様な振舞いが、目立つ女魔導師である。
「しっ、しまった・・・・・・謀られたっ!」
「これは敵の罠だっ!?」
「たた、たっ、退却だっ!総員っ!退却ーっ!退却ーっ!退却ううううぅぅぅぅーーーーーーっ!!!」
砦に攻め掛かったグリクス地方軍団の追撃隊の全軍は、砦に攻めかかると、其処は蛻の殻で、誰も居ない場所だと知る事と成る。
彼らは完全に謀られ、罠に嵌められたのだ。
「くくっ、諸葛亮孔明の十八番作戦の一つである。空城の計は如何かな。」
「グリクス地方軍団の諸君。」
不適に笑う三国志マニア隊員は言う。
「いやーっ、こうもあっさりと罠に引っ掛かるとは、何だか呆れてしまいますね。」
「全くだ、孔明の罠に嵌められた曹操の方が、もう少しマシだったぞっ!!」
「その通りっ!!!奴なら早めに策に気付いて看破して、負け戦から逸早く逃げ延びると思うぞっ!!」
「ですねーっ!」
此処にいる普通科部隊の連中は、三国志マニアが多く居るらしい。
口々にグリクス地方軍団の追撃隊は、間抜け過ぎると言っていた。
時間稼ぎに色々と掻き集めた物資や策を駆使して、どんな作戦や罠を仕掛け様かと考えた所、三国志マニアの隊員らが物は試しにと、三国志風の罠を仕掛けてみたら大当たり、これが笑いが止まらないと来たもんだ。
その会議の席で、1人のマニア隊員が「こんなのは如何でしょう?けと、この作戦を提示した訳なのだ。
そう、そのマニア隊員は、攻め掛かる敵に対して、漫画や無双ゲーム等で、事有る事に言う定番のネタ「しまったっ!これは孔明の罠かっ!?」みたいな感じの台詞を実際に敵に言わせたのである。
更にグリクス地方竜騎士航空隊は、迂闊にも87式自走機関砲隊8両の射程内入ってしまったのであった。
アースティア暦 1000年・西暦2030年・6月7日・午前3時55分頃・アースティア世界・ユーラシナ大陸・ユーラシナ大陸中央地域・シベリナ中央地方・パイプ・ライン大河・パイプ・ライン大河中央流域地方・ブラキュリオス湖・アルガス公国・レジェンダリア州・ レジェンダリア諸島東部・カントルナ島・カントルナ砦から約6キロ付近・ゲースター島・ケーマスター島中心部にて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
87式自走機関砲隊8両は、砦を挟むようにして左右に展開し、敵に対して十字砲火を浴びせ様と待ち構えていた。
クルクルとレーダーを回転させ、敵地上部隊に空爆を仕掛け様とやって来たワイバーンは、視界が悪い夜の暗闇の中で、一方的に撃たれる事と成る。
更にはワイバーンの放つ火炎弾は、この夜では自衛隊側には有効な一打にも成らず、中りもしないだろう。
「此方87AW隊。」
「敵射程圏内に捕らえた。これより射撃を開始する。」
「此方日シベ合同作戦軍っ!前線作戦指揮所っ!」
「アルガス公国軍の魔導師隊共に照明魔法、照明弾で視界を確保の為に支援を開始する。」
「了解っ!」
自衛隊とアルガス公国軍の魔導師隊は、共に照明魔法、照明弾をグリクス地方竜騎士航空隊に向けて撃ち放った。
「何だっ!?」
「こっ これは照明魔法だと?」
「しまったっ!待ち伏せされて居たのかっ!?」
「何所だ?何所からだ?」
「この暗さでは正確な敵の位置は・・・・・」
罠に気付き、慌てた所で、事態は時既に遅かった。
暗闇の中に照明魔法ライトの閃光が輝き、左右から光の光弾が砲音と共に木霊し、撃ち放たれる。
「目標っ!ワイバーンっ!距離一千っ!撃ち方よーいっ!」
「撃てっ!!!」
ダダダダダッ!!ダダダダダッ!!ダダダダダッ!!ダダダダダッ!!
ダダダダダッ!!ダダダダダッ!!ダダダダダッ!!ダダダダダッ!!
ダダダダダッ!!ダダダダダッ!!ダダダダダッ!!ダダダダダッ!!
ダダダダダッ!!ダダダダダッ!!ダダダダダッ!!ダダダダダッ!!
ダダダダダッ!!ダダダダダッ!!ダダダダダッ!!ダダダダダッ!!
光の閃光は、グリクス地方竜騎士航空隊を容赦なく襲い撃ち貫く。
「うああっ!?」
「キャンっ!」
ワイバーンも何所から分からない攻撃に怯んでしまう個体も居た。
ダダダダダッ!!ダダダダダッ!!ダダダダダッ!!ダダダダダッ!!
ダダダダダッ!!ダダダダダッ!!ダダダダダッ!!ダダダダダッ!!
「ぐわあああああぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーっ!!!」
「ぐはぁっ!」
ダダダダダッ!!ダダダダダッ!!ダダダダダッ!!ダダダダダッ!!
ダダダダダッ!!ダダダダダッ!!ダダダダダッ!!ダダダダダッ!!
「たっ、たた退却だっ!退却ううううぅぅぅぅーーーーーっ!」
「退けえええぇぇぇぇーーーーーーっ!!!退けえええぇぇぇぇーーーーーーっ!!!」
ダダダダダッ!!ダダダダダッ!!ダダダダダッ!!ダダダダダッ!!
ダダダダダッ!!ダダダダダッ!!ダダダダダッ!!ダダダダダッ!!
グリクス地方竜騎士航空隊の追撃隊は、300騎の内、130騎は討ち取られ、地上追撃部隊を残して這々の体で、脱兎の如く撤退して行くのだった。
更に日シベ合同軍の攻勢は続き、三国志マニア自衛官らは調子に乗って敵を畳み掛けて行く。
「敵航空隊は、87AW隊により撃退、退却して行きます。」
「良しっ!孔明と言えば、アレだ。」
「その通り、彼の御仁が得意とする。敵軍を一ヶ所に纏めつつ罠に掛けてからの火攻めだっ!!!」
「ふふっ、敵集団の罠で嵌め集めた場所の周囲には、油をたっぷりと仕込んであるっ!!!」
「今だっ!!!奴らが逃げ込んだ先にっ!火矢と火魔法を撃ち込めっ!!!」
「お土産の油壺もっ!有りっ丈投げ入れろっ!」
87式自走機関砲隊の砲撃が止むのを見計らって、アルガス公国軍の竜騎士航空隊100人が前進を開始する。
ヘスティア騎士団に所属のセッテ・オーワダンに率いられ油壺を空から次々と放り投げて行く。
それに続くのは、CH-47JA 輸送ヘリコプター4機、UH-1H 多用途ヘリコプター4機の陸自の輸送と多用途ヘリ部隊による油壺の投擲である。
「みんなーっ!適当にばら蒔くのは、陸自さん達に任せて、わたし達は偉そうな人達が居そうな場所に油をぶっ掛けに行くよーっ!」
「全く、何でこんな策を本当に実行に移すとはな・・・・・・」
「まぁまぁ、井上一佐。ぼやかない、ぼやかない。」
井上一佐も大規模な作戦の実行中であり、乗り降りの作業と荷の詰め替え作業をして居たら、何時の間にか作戦実行の手伝いに駆り出されて居たりする。
これには訳があって、交代で休む体制を整えて居たのだが、陸自隊員の1人が作業中に木箱の蓋で怪我を負ってしまうと言う事態に陥る。
作戦進行中であり、交代要員を探す時間も用意する時間も無く。
作戦遂行して行く関係から仕方が無かった為に、その場に居合わせた井上一佐が代わり行く事に成ってしまう。
しかも、井上一佐は、第二足止め作戦の内容を聞いて呆れてしまい、それに引っ掛かるグリクス地方軍団にも更に呆れてしまうのだった。
「それにしても、全く以って敵も、存外に間抜け過ぎるっ!!」
「罠だと悟って悠々と引き上げる事も出きたろうに・・・・・・・・」
「まぁ、絶対に軍勢の数で有利と言う相手に、彼の孔明の策略は、ある意味、とても効果的ですからなぁ・・・・・・」
「一佐、時に手口が単純で有れば有るほどに、存外に間抜けな形で罠に引っ掛かる事は有り得るのですよ。」
「其れにしたってなぁ、間抜け過ぎるってもんさ、でも三国志って言えば、今時の歴史家の間では、曹操の方が色々と優れてるって話なんだかなぁ・・・・・」
曹操は孫子の兵法の書の注釈の本を書いたりと、政治・軍事・文化面に関して、色々と芸達者な所が有るらしいと言われて居る人物としの一面が、近年の研究などでは有名に成って来て居た。
それまでは創作である三国志演義の方が面白かった事から、劉備玄徳なんかの活躍の方が面白かったと言うのが日本国内では一般的だったからである。
「日本人のマニアは、三国志演技や有名漫画家が書いた作品やゲーム、更には近年ドラマや映画の影響のせいか、何かと劉備・孔明の事を持ち上げ過ぎますからねぇ・・・・」
油壺を地上へと放り込みながら、井上一佐とヘリに同乗していた隊員の1人は、同じく罠に掛かった相手に呆れつつも、同情して居た。
何せ、三国志マニアがノリと勢いで練り上げた嫌らしい手口で有名な諸葛亮公明の策を手本として居る作戦に引っ掛かってしまう敵に・・・・・・・・・
「全くだよ。」
井上一佐は呆れ顔で、その事に同意するのだった。
「今だニャーっ!火矢を射ち込むニャアアアアアァァァァァーーーーーーーっ!!!」
「くくっ、我がアプリコット魔導商会が作りし、魔火炎弾砲の威力を篤と味わうが良いっ!!!」
この待ち伏せには、ヘスティア騎士団の特戦魔弓兵中隊長にして、猫獣人族のユイ・ナンジョルノ。
何時もニャーっニャーっ言ってる自由でロリ巨乳の猫娘で、団長職などの高位の指揮職にも就けると言われて居るが、めんどくさいと言って現場職に留まって居る変わり者である。
そして、その配下には、彼女の魅力に魅了された人々は「全てはユイ(ナンジョルノ)様の為にいいいいぃぃぃぃぃーーーーーーーーーーーーっ!!!!」と声高に叫び、敵をなぎ倒して行き、自らの命を捧げて、死ぬ事すら厭わぬ猛者達である。
ユイは通常の弓も使うが、最近は魔法を使った弓兵隊も率いて居るのだが、信者が集まりすぎて、様々な業種が集う特殊部隊と化して居た。
もう一人は、実家がアプリコット魔導商会と言うマジックアイテムや魔導兵器の生産や開発を手掛けている商会の生まれである魔導師隊の隊長マオ・アプリコット大尉。
彼女は実家の財力や人脈に豊富な郵送網から、今回の戦に間に合う様に様々な物資を仕入れていた。
特に火計専用に特化した魔火炎弾砲は、火属性魔鉱石である赤色魔鉱石で精製した特殊魔砲弾を撃ち放ち、粘着性の高い炎で敵を焼き尽くす代物であった。
其処に普通科中隊を乗せた96式装輪装甲車隊5両と50人の陸自隊員共に、一斉に小銃、ファイヤーボール、火矢、魔法弾が撃ち放たれて行く。
「ぐはっ!!」
「うあああああぁぁぁぁぁーーーーーーっ!!」
「あちっ!あちぃっ!!あちちっ!!」
「けほけほっ!!くそっ!!ダメだっ!!」
「何所も彼処も炎と煙だらけだっ!」
「もうっ!もうダメだあああああぁぁぁぁぁーーーーーーーっ!!」
罠に掛かったグリクス地方軍団は、攻撃を受けてしまった地点を中心に、四散しながら逃げ道を求めて、それぞれバラバラに逃げ出して行く。
散り散りに逃げ出す者、炎に焼かれる者、煙に巻かれ咳き込みながら息絶える物など様々な最後や運良く逃げ延びる者も居た。
そんな中でグリクス地方軍団の将兵の一隊が希望の道を見つけ出した。
「くそっ!!一体っ!如何したら良いんだよっ!!」
「おっ?!おいっ!!見ろよっ!!!」
「南に何も無い通り道が一ヶ所だけ有るぞっ!!」
「おおっ!!助かったっ!!!」
「くくっ、間抜けな奴らめっ!」
グリクス地方軍団の一隊に所属する将兵らは、炎の中で、南に大きく広がる逃げ道を発見し、雪崩を打って炎の中を駆けて行く。
それも銃砲火の中をだ。
「はぁはぁはぁはぁ・・・・・」
「ひぃひぃひぃ・・・・・・・」
「はぁはぁはぁはぁはぁ・・・・・・・・」
10数分かけて逃げた時間は、彼らに取って数時間ほど走って居る時間が経っている様な気がしてしまって居た。
とても、とても長く、そして短く感じる時間だった。
戦場から300メートルほど南に下った先に、西から流れる湖の水か川の様に流れる小川が在った。
「くはっ!!けほけほっ!!はぁはぁはぁ・・ふうーっ!」
「ひぃふぅ、ひぃふぅ、ひぃふぅ・・・・・・」
「みっ、水だっ!」
「ぷはーっ!!冷たくて気持ち良いいいぃぃぃぃーーーーっ!!」
「ふうーっ、はぁー生き返るううぅぅーーーっ!」
ようやく一時の安息が訪れ、逃げ延びた将兵らは、この場所で一息付く。
「此処は?」
高位の将校が近くの大尉に地理に付いてを尋ねた。
「はっ、西側から東へと湖の水が流れ込んでいる小川の様な場所ですね。」
「まぁ、良い。一息付いたら本隊と合流するぞっ!」
「はっ!」
だが、これも罠だったりする。劉備軍が曹操軍から逃げる為に、新野城を城ごと曹操軍を焼く尽くす策を用いた策の様に・・・・・・
そして、曹操軍はとある川へと逃げ延びると言う話がある。
其処で孔明の命を受けた関羽は、川の上流で水を塞き止めて、軍勢が通り掛かった所に水を流し込んで、更に追撃を食らわすと言う有名な顛末がある。
勿論、自衛官等は、別働隊を編制し、この作戦を水魔法に人海戦術方法とポンプ装置で、川の西側上流に溜池を作り、無線機で報せて水を流し込むと言う策を思い付く。
これは彼の孔明よりも、数段悪どく性質の悪い方法かも知れない。
何せ名軍師である孔明先生は、魔法や機械を用いては居ないからだ。
「んん?!」
「なぁ、この音・・・・・」
「ああ、何だろう?」
「おっおおいっ、西を見てみろっ!」
「みみっ水だああぁぁーーーっ!!!」
「しかも、何だよあれっ!!洪水クラスだあぁぁぁ!!」
「だだっ、ダメだっ!にっ逃げられないっ!」
「「「「「うわあああああああぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーっ!!!!」」」」」
あっと言う間に、日シベ合同作戦軍の罠から逃げ延びた筈だった者達は、洪水に呑まれて行く。
馬や地竜すら呑み込んで、その場に居た者らは、跡形物無く流されて行ったのだった。
「こちら黒田。敵部隊の壊滅を確認した帰還する。」
マニア隊員達は、更に悪どい事に、洪水の策を生き残った場合を想定して、古事の書物に書かれた如く、止め役として派兵されて居た張飛の変わりに、黒田一尉率いるアパッチ隊に止めを刺させる予定で居たが、その必要が無く、黒田一尉は、出番無く引き上げて行くのだった。
アースティア暦 1000年・西暦2030年・6月7日・午前5時30分頃・アースティア世界・ユーラシナ大陸・ユーラシナ大陸中央地域・シベリナ中央地方・パイプ・ライン大河・パイプ・ライン大河中央流域地方・ブラキュリオス湖・アルガス公国・レジェンダリア州・ レジェンダリア諸島・レジェンダリア諸島西部・セイジョン・ローグリア島・セイジョン・ローグリア城から25キロ地点・ルドン島との境界線・ローグリア平原にて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
グリクス地方軍団の重機動師団と歩兵軍団を合わせた4万人もの軍勢を編成し、更には騎兵隊4千人を従えた追撃部隊は、自衛隊とアルガス公国軍を始めとするシベリナ連合との日シベ合同作戦軍が、その後も次々と奇襲迎撃を行い、ボコボコに討ち取られてしまって居り、とうとうその人数を二万人まで討ち取られ、その兵力を減らされてしまって居た。
そして、この追撃劇も、この地での戦いで、終盤だと言う事を後世の歴史書は書き記して居た。
明け方5時30分頃、日の光が東の空に差し込む中で、グリクス地方軍団の重機動師団と歩兵軍団。
それと相対するのは、日本国自衛隊が誇る機械化機甲兵器たる10戦車12両、16式機動戦闘車4両、87式自走機関砲8両、89式装甲戦闘車5両。
99式自走155ミリ榴弾砲20両、99式弾薬給弾車20両、155ミリ砲FH70・30門(牽引車付×30両)がすらりと並んで居た。
両国が誇る重機動兵器同士の初の本格的なぶつかり合いである。
「こっ、これは・・・・・・・・・・」
「あれは、あの兵器群は、アルガス公国軍やシベリナ連合諸国の物では無いな・・・・」
「では、あれは噂に聞く・・・・・・二ホン国の・・・物なのですね・・・・・」
「確証は無いが、恐らくはそうなのだろうな。」
「あの兵器はニホン軍の物なのは間違いない。」
「それもこの戦いに措いて、我らを散々に打ち負かしている主力部隊。」
「此処で待ち構えて居ると言う事は、此処が最終防衛ラインであり、我が軍団は、まんまとこの地へと誘い込まれたと言う事に成るだろう。」
夜の暗がりと射程圏外からの攻撃せいで、グリクス地方軍団の将兵等は、ハッキリとニホン軍たる自衛隊の姿を見て居ない者が多い。
しかも、敵対して相対する日本の兵器をまだ多くの者達が、直接目で見て居ないのである。
追撃部隊の軍団長と副団長らは、初めて見るニホン軍の兵器を見て、その見た事もない姿に畏怖を覚えるのだった。
「・・・・・では軍団長殿は、彼の敵に対して、どう為さるお積りで?」
「この場合、戦略的撤退が妥当なのだろうが、我らが栄えあるローラーナ帝国に最初から、その様な弱腰な戦い方は、決して許されない。」
「最初から軍が消滅する様な事態が待ち構えて居ると言う範例と同等の例えでの理由でもない限り、即時撤退と言うのは、決して有り得ない。」
「見た所、向こうも此方も重装甲型の機動兵器同士。」
「即ち同じ兵科同士成らば、戦って勝つか負けるかを決めねば成らん。」
「今までの戦いから察するのに、質の利は敵である向こう側に有利。」
「数の利はこちら側に有利と言う訳ですね・・・・・・・」
副軍団長は、これまでの戦いから得て居る情報から、日本側に質的な強さ有ると分析していた。
「そうだ。」
「さぁ、始めよう。真の強者たる者を決める戦を・・・・・」
「全軍に通達っ!角笛を鳴らしつつ、陣形を整え戦う準備を整えよっ!」
「はっ!!角笛を鳴らせえええええぇぇぇぇぇぇーーーーーーーっ!!!」
ボウウゥゥオオォォォォォオオオオォォーーーーッ!!ボウウゥゥオオォォォォォオオオオォォーーーーッ!!ボウウゥゥオオォォォォォオオオオォォーーーーッ!!
ボウウゥゥオオォォォォォオオオオォォーーーーッ!!ボウウゥゥオオォォォォォオオオオォォーーーーッ!!ボウウゥゥオオォォォォォオオオオォォーーーーッ!!
ボウウゥゥオオォォォォォオオオオォォーーーーッ!!ボウウゥゥオオォォォォォオオオオォォーーーーッ!!ボウウゥゥオオォォォォォオオオオォォーーーーッ!!
高らかに角笛の音が、朝焼けの中をブラキュリオス湖の水で冷やされている空気にて、ヒンヤリとしているローグリア平原で、その勇壮なる音色が鳴り響いて行く。
グリクス地方軍団の重機動師団と歩兵軍団は、軍団長の指示の元、陣形を整えつつ、目の前に居る敵との戦いへと備える。
その動きは整然として、見事な勇壮振りと迫力満点の姿と動きが見られて居た。
対する陸自側の指揮官は、椎名ひかる三佐である。
これが日本が地球でもこの世界でも最初に行った本格的な機甲兵器同士の初の戦いであると防衛省と自衛隊等での記録を始め、後世の数々の書物に載せられる事と成る戦いであった。
「やっぱり退いてはくれないわね・・・・・・」
「ですね。どうしますか?」
今回は本来の立ち位置である戦車隊の副隊長をして居て、椎名三佐の補佐もして居る冬眞友紀一射が砲塔の車長席口から顔を出しつつ、双眼鏡で陣形を整えて居るグリクス地方軍団追撃部隊を見詰めながら聞く。
「これだけ痛め付けても逃げないのは、統率が取れて居るか、それとも退くに退けない国家の政治体制的な事情が有ると見るべきね。」
「できれば、此処で退いてくれれば、此方は色々助かるのだけれど・・・・・・・」
「本当ですよ。」
「弾薬や燃料の費用もバカに成らないしね」と二人も呟いて居る。
それでも自衛隊が逃げないのは、この地域航路の確保と維持と言う国益と自分達の安全の確保と言う目的が有るからだ。
何も敵の勢力圏を奪うなんて考えは、今の所は、考えても居ないし、自衛隊の組織と日本の今の現状的な事情から出きないのであった。
成らばボコボコに彼らをノックアウトをして、勝ちを取るしかシベリナ連合と日本国の両者としては、生き残る術は無い。
それ故に、この紛争への参加である。
其処へ後方部隊からの通信が入る。
「こちら特科99HSP大隊、何時でも行けます。」
「特科FH70大隊も同じくです。」
「敵が西進してきた時点を待ってから、纏めて迎え撃つ。」
「あの方のアレを使う為にですね。」
「でもないと帰り道の弾と燃料が危ないのよね。」
ダバ派遣艦隊とグリクス地方軍団との戦いで備蓄の約4割ちょっとを使い切るとの見方を派遣されている自衛官幹部達はして居たのである。
それに加え、帰えりの襲撃に備えると成ると、この戦いでの弾薬を出きるだけ節約をする必要が有るのだった。
「まぁ、目当てにして居たあの子達は、先に水陸旅団の人達が使ってしまいましたからね。」
「ええ、籤引きとは言え、殲滅するならアセリナの子達の方が、人数が多いから助かったのだけれど・・・・・・」
「あたしじゃ、役不足?」
リナが椎名三佐が搭乗している10式戦車の真上でインカム式の携帯式無線機で二人の会話に割り込む形で冗談を言う。
「いいえ、威力が有り過ぎて使い時に困る以外は、数発連続して撃てるから貴女が便利と言えるわね。」
「けれど、難点な部分を敢えて言うのなら、私達が全力で逃げないと行けないのが難点と言えるわ。」
そう、前線部隊を除けば、特科大隊は後方20キロ離れてた所で待機して居るが、椎名3佐らは敵から1.5キロ付近で待ち受けて居るのだ。
アレの攻撃命令が下されれば、リナがアレの発動準備をして居る間に、前線に居る陸自車両の各社は、一斉に西へと転進しなければ成らないと言う過酷な条件の下での作戦を強いられるからだ。
サンダースレイブとエクスプロトンバスター。そのどちらも諸刃の剣の威力と欠点を誇った魔術なのだ。
「でも、一網打尽に出きるから楽でしょ?」
「だからなのよね・・・・・・」
「あははっ、それを言われるとあたしとしちゃ、痛いわね。」
「お二人供。敵の陣形が整った様です。」
「それでは・・・」
「お仕事の時間ですね。」
何か二人ともこの短い間で、随分と女性同士として意気投合して居るらしい。
それもある意味、性質の悪い性格のタイプをして居る人種同士としてである。
互いに不敵な笑みをして居る二人の姿が有った。
ドーンッ!ドーンッ!ドーンッ!ドーンッ!ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!!ドン!ドン!
ボウウゥゥオオォォォォォオオオオォォーーーーッ!!ボウウゥゥオオォォォォォオオオオォォーーーーッ!!ボウウゥゥオオォォォォォオオオオォォーーーーッ!!
ボウウゥゥオオォォォォォオオオオォォーーーーッ!!ボウウゥゥオオォォォォォオオオオォォーーーーッ!!ボウウゥゥオオォォォォォオオオオォォーーーーッ!!
ボウウゥゥオオォォォォォオオオオォォーーーーッ!!ボウウゥゥオオォォォォォオオオオォォーーーーッ!!ボウウゥゥオオォォォォォオオオオォォーーーーッ!!
「来るわよっ!」
リナが向って来る敵を見つめる中、その動きを察して、敵の総攻撃を悟り、無線機で、その場に居る全自衛官らに開戦を告げるのであった。
アースティア暦 1000年・西暦2030年・6月7日・午前5時35分頃・アースティア世界・ユーラシナ大陸・ユーラシナ大陸中央地域・シベリナ中央地方・パイプ・ライン大河・パイプ・ライン大河中央流域地方・ブラキュリオス湖・アルガス公国・レジェンダリア州・ レジェンダリア諸島・レジェンダリア諸島西部・セイジョン・ローグリア島・セイジョン・ローグリア城から25キロ地点・ルドン島との境界線・ローグリア平原にて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
グリクス地方軍団追撃部隊は、全軍の陣形を鶴翼陣形で構え、部隊陣形を8千の重機動師団を一千の部隊つづに分ける。
その後方には、歩兵軍団8千を同じく1千つづ盾を掲げながら亀甲陣形を組んで、自衛隊の機甲部隊を包囲する様にして、前進を始めた。
また、残り四千の騎兵隊は2千の部隊を左右後方で遊撃隊として、陣形を固めている。
「全軍団っ!!突撃せよおおおおおぉぉぉぉぉーーーーーーーーっ!!!!」
「「「「「おおおおおおおぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーーーーーーっ!!!!」」」」」
ドーンッ!ドーンッ!ドーンッ!ドーンッ!ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!!ドン!ドン!
ボウウゥゥオオォォォォォオオオオォォーーーーッ!!ボウウゥゥオオォォォォォオオオオォォーーーーッ!!ボウウゥゥオオォォォォォオオオオォォーーーーッ!!
ボウウゥゥオオォォォォォオオオオォォーーーーッ!!ボウウゥゥオオォォォォォオオオオォォーーーーッ!!ボウウゥゥオオォォォォォオオオオォォーーーーッ!!
ボウウゥゥオオォォォォォオオオオォォーーーーッ!!ボウウゥゥオオォォォォォオオオオォォーーーーッ!!ボウウゥゥオオォォォォォオオオオォォーーーーッ!!
角笛と太鼓を叩いて、徐々に駆け足をして行く中で、軍団長は突撃命令を下した。
「「「「「ブモオオオオォォォーーーーッ!!!!」」」」」
「「「「「ブモオオオオォォォーーーーッ!!!!」」」」」
「「「「「ブモオオオオォォォーーーーッ!!!!」」」」」
普段は大人しい重騎竜トリプトドンも魔導砲台を牽引しつつ、騎乗者に促されながら突撃して行く。
同行する速竜種ヴェキエルには、砲台装填手と魔導砲弾を詰め込んでいる竜馬車が、一隊部隊として共に駆けて行く。
「「「「「ギャオオォォーーーースッ!!!!」」」」」
「「「「「ギャオオォォーーーースッ!!!!」」」」」
「「「「「ギャオオォォーーーースッ!!!!」」」」」
咆哮するフレイムランドドラゴン。眼前の敵に対して、火炎放射を撃ち掛け様と、ドスンッ!!ドスンッ!!!と大地に足音を響かせつつ、駆け足を始めた。
「前線各隊及び特科各隊へっ!攻撃目標っ!グリクス地方軍団の重機動師団っ!」
「撃ちーかーたよーいっ!」
「攻撃目標っ!グリクス地方軍団の重機動師団っ!」
「東方向、距離2万っ!撃ち方よーい。」
99式自走155ミリ榴弾砲20両と155ミリ砲FH70・30門が、椎名三佐達から送られて来る敵位置情報を基にして、砲塔を撃つべき方向へと向けられる。
「「「「「うわわわあああああぁぁぁぁぁーーーーーーーーっ!!!!」」」」」
「「「「「うおおおおおぉぉぉぉぉーーーーーーーーーーーっ!!!!」」」」」
勇猛果敢な雄叫びを上げて駆けて来るグリクス地方軍団の者達を冷静に、そして非情な眼差しで、椎名三佐は攻撃命令を下した
「特科大隊各隊へ・・・・・撃てっ!!」
「てえええええぇぇぇぇぇーーーーーーーっ!!」
ズドドンッ!!ズドドンッ!!ズドドンッ!!ズドドンッ!!ズドドンッ!!
ズドドンッ!!ズドドンッ!!ズドドンッ!!ズドドンッ!!ズドドンッ!!
ズドドンッ!!ズドドンッ!!ズドドンッ!!ズドドンッ!!ズドドンッ!!
ズドドンッ!!ズドドンッ!!ズドドンッ!!ズドドンッ!!ズドドンッ!!
西側の後方約20キロ付近から、特科隊による99式自走155ミリ榴弾砲20両と155ミリ砲FH70・30門の一斉砲撃が放たれた。
凄まじい量の砲弾の雨がグリクス地方軍団の重機動師団を中心とした追撃部隊の頭上へと降り注ぐ。
ババーンと言う榴弾の炸裂する破裂音が、陸自前線部隊の目の前で木霊する。
「うぬぬっ!!者共っ!!怯むなっ!前っ!前っ!前っ!前ええぇっ!前えええぇっ!!」
師団長は、自衛隊の凄まじい砲撃を怯む事無く、指揮棒を前に掲げ、敵に向かって戦い駆けて行く将兵らを士気を保ち続ける為に、声高に檄を飛ばしつつ鼓舞し続けた。
「「「「行けえええええぇぇぇぇぇーーーーーーっ!!」」」」
「「「「「うおおおおおぉぇぉぉぉーーーーーっ!!!!」」」」」
何時の時代、何所の世界だったとしても、この手の兵科の軍隊は、勿論の事ながら、怯んだら負けである。
だから立ち向かって来る突撃軍は、勇猛で蛮勇であり、決して恐れを受け入れないのだ。
だから怖いとも言える。
「うはーっ!!自衛隊のあれだけの一斉連続砲撃を受けても、全然怯まないなんて・・・・・・・・」
「只前に突き進む。」
「我が国でも、かつてはそうした時代も有ったけど・・・・」
「それを実際に敵に回して、敵となる軍隊を目の当たりにすると成るとは・・・・・・」
リナは、自衛隊が誇る機械化式の大砲の威力と連射能力の威力を知らしめた上でも、尚も立ち向かって来るグリクス地方軍団の勇猛さに驚く。
普通ならこの時点で、攻撃を受けている兵達は、自衛隊の兵器の攻撃能力に恐怖して逃散するものだ。
それなのに退かないのは、純粋な忠誠心では無く、身の安全と言う名の進退の安否確保と言う恐怖心から来る忠誠心によって駆り出された、死を決して恐れない勇猛な蛮勇来るものだった。
椎名三佐らも、旧軍の万歳突撃を連想させる敵軍に恐怖して居るが、冷静な顔立ちで向って来る敵軍に対処する。
だが、相手は非常に厄介な存在だ。これを退かせなければ、この撤退戦は成功し得ないのだった。
何方も怯む事を感じたら負け、軍としての意地のぶつかり合いでも有るのだった。
此処で椎名三佐も自身の乗り込む10式戦車を始めとする陸自戦闘車両舞台に攻撃を命じた。
「前線各車へ通達する。撃ち方始めっ!!」
各部隊の各車は、割り振られた目標へと攻撃を開始する。
ズドドーーーンッ!!!と言う10式戦車の120ミリ滑腔砲と16式機動戦闘車の105ライフルミリ砲による一斉射撃が行われる。
それと同時に87式自走機関砲の35ミリ高射機関砲、89式装甲戦闘車の35ミリ機関砲が撃ち放たれる。
ダダダダダッ!ダダダダダッ!ダダダダダッ!ダダダダダッ!
ダンダンッ!!ダンダンッ!!ダンダンッ!!ダンダンッ!!ダンダンッ!!
前線各車に備え付けられている74式車載7.62ミリ機関銃や普通科隊員の小銃射撃も加わり、自衛隊側も一歩も退かない構えであった。
ズダダダダダッ!!ズダダダダダッ!!ズダダダダダッ!!ズダダダダダッ!!
ズダダダダダッ!!ズダダダダダッ!!ズダダダダダッ!!ズダダダダダッ!!
「くそっ!!これでは一撃所か、一発の玉すら撃てないではないか。」
「ニホン軍の兵器の連射力は、異常で半端ではないです。」
「各隊の被害甚大っ!!」
「騎兵隊も迂回突撃を行いましたが、半数が撃退されてしまいましたっ!!」
「くそっ!!各隊っ!防御隊形を取りつつ徐々に後退せよっ!!」
「了解っ!!」
グリクス地方軍団・追撃部隊の軍団長は、後退を命じて防御体勢を取り始めた。
「リナさん。どうやら貴女の出番は、この後の戦いまで、お預けの様ね。」
「それはそれでアタシの方は、楽が出きて、助かりますけどね。」
「それでは・・・・・・・・」
リナは椎名三佐らの勝ち戦と見ると、後方へと先に引き上げたらしい。
リナの一撃必殺の高出力雷撃魔法であり、その一撃で3万人単位の都市が、一瞬にして消し飛ぶ威力を持って居るのがサンダースレイブ。
それを撃ち放つのも、とても労力と魔力消費が激しいし、体力もかなり持って行かれるのだ。
「こちら隊長車より、各部隊・各車へ。全隊っ!前車っ!前進せよっ!」
「これより追撃による前進射撃を行う。」
「各部隊・各車っ前進開始っ!」
椎名三佐と冬眞一射らは、10式戦部隊を二つに分けて、中央から行進射撃とスラローム射撃を駆使して、敵を追撃しながら蹴散らして行く。
その左右からは、16式機動戦闘車4両と89式装甲戦闘車5両が展開し、その後ろに87式自走機関砲隊が4両編制で後に続いて行く。
グリクス地方軍団・追撃部隊は、自衛隊が誇る最新鋭戦車の行進射撃とスラローム射撃に恐怖したと、後に書かれた交戦記録に書き残して居た。
何せ、移動しながらの射撃なんて、彼らには有り得ない戦術だったからだ。
こうして、カントルナ砦近郊上陸撤退戦での戦いは、アースティア暦 1000年・西暦2030年・6月7日・午前6時38分に椎名三佐の撤退命令で終わりを告げたのである。
グリクス地方軍団・追撃部隊は、5千の兵を残して逃げ延びたと言う。
日シベ合同作戦軍側の圧勝である。
アースティア暦 1000年・西暦2030年・6月7日・午前7時35分頃・アースティア世界・ユーラシナ大陸・ユーラシナ大陸中央地域・シベリナ中央地方・パイプ・ライン大河・パイプ・ライン大河中央流域地方・ブラキュリオス湖・アルガス公国・レジェンダリア州・ レジェンダリア諸島・レジェンダリア諸島西部・セイジョン・ローグリア島・セイジョン・ローグリア城にて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
朝日が完全に昇り始めたこの時間。
椎名三佐が率いる陸自機甲車両部隊は、朝日に照らされながら、最終防衛撃退ラインでの戦いを見事に成功させ、セイジョン・ローグリア城近郊付近まで帰還して居た。
「こちら偵察警戒して居る但馬一曹です。」
「椎名三佐が率いる陸自機甲車両部隊の帰還を確認しました。」
但馬一曹はオートバイ部隊の一員で、定期の偵察警戒を行って居る時に、椎名三佐が率いる陸自機甲車両部隊の帰還を見かけたのであった。
陸自派遣隊の全部隊は、セイジョン・ローグリア城に集結し、城の東側に広がっているセイジョン・ローグリア城塞市の城壁付近で陣地を築いて、車両の整備等に当たっていた。
城の西側に目を向けると、続々とアルガス公国軍の援軍が来着しつつあった。
その数は凡そ4万人余りである。
それも上陸時に兵や馬を貨物に偽装し、陸上では貨物車として扱う形式の龍馬車や荷馬車に偽装して、将兵等を移動させる徹底振りである。
第二次大戦時に、連合国軍がアフリカ北部で行った元手品師を中心とした徴兵された民間人を中心とした戦車偽装奇襲作戦を行って居る様な様相であった。
それに運搬には、海自の多用途艦を中心とした非戦闘艦を用いた曳航航行で運搬を支援して居るので、短期でのセイジョン・ローグリア島への輸送が可能と成って行われていた。
更には敵からすれば、撤退する為に必要な船が行き来して居る風に見える様にしあるので、事がバレる頃には、最終決戦と成って居る筈である。
南方方面警戒の艦隊中の第3艦隊は、護衛艦あかつき・ひびき・いなずま・すずかぜ・いかづち等は、うらが型掃海母艦・うらがも加わえての警戒監視活動を続け、洲崎二佐は、南方方面に目立った動きは無いと報告をし、引き続き警戒監視を怠らないとしていた。
「おい、見ろよ。」
「おおっ、あれは10式戦車隊だ。無事に戻って来たぞっ!」
「・・・・と言う事は、作戦が成功したのか。」
自衛官達は、椎名三佐達の帰還して来て居るのを見付けると、心から安堵し合い。
この度の戦いで行われた作戦が、無事に成功したと喜び合っていた。
「アルガス公国万歳いいいいぃぃぃぃーーーーーっ!!」
「ブレックス・ファーミラ公王陛下、万歳いいいいぃぃぃぃーーーーっ!!」
「エリノア・ドラグリア白龍大帝陛下、万歳いいいいぃぃぃぃーーーーっ!!」
「シベリナ連合同盟っ!万歳いいいいぃぃぃぃーーーーーーーっ!!」
「ニホン国の支援に感謝をーーーーーっ!!」
「ニホン国自衛隊の者達に勇敢なる戦士達にも感謝をーーーーーっ!!」
「えいえい、おおおおぉぉぉぉーーーーっ!!」
「えいえい、おおおおぉぉぉぉーーーーっ!!」
「えいえい、おおおおぉぉぉぉーーーーっ!!」
「えいえい、おおおおぉぉぉぉーーーーーっ!!」
戦に参加して生き残ったアルガス公国の将兵らは、戦に貢献した国々の元首の名前や参加国の名前を称えて感謝と喜びを表現していた。
それは長い時、帝国に苦しめられ滅び掛けて居る国々に取って、僅かに希望と士気を高めたのである。
「うおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーーーーーーーーっ!!」
「うおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーーーーーーーーっ!!」
「うおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーーーーーーーーっ!!」
「うおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーーーーーーーーっ!!」
「うおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーーーーーーーーっ!!」
「うおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーーーーーーーーっ!!」
「うおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーーーーーーーーっ!!」
歓声と鬨の声は高揚感が収まるまで数分間の間、続いて居たと言う。
アースティア暦 1000年・西暦2030年・6月7日・午後18時30分頃・アースティア世界・ユーラシナ大陸・ユーラシナ大陸中央地域・シベリナ中央地方・パイプ・ライン大河・パイプ・ライン大河中央流域地方・ブラキュリオス湖・アルガス公国・レジェンダリア州・レジェンダリア諸島・レジェンダリア諸島西部・セイジョン・ローグリア島・セイジョン・ローグリア城にて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
昨夜に決行された作戦計画を終えた日シベ合同作戦軍は、それぞれ昨晩の戦闘での疲れを癒すと、早めの夕食を終えて、決戦に向けての、今後の方針を決めるべく作戦会議を始める。
セイジョン・ローグリア城の大会議室で陸海空自衛隊の幹部を始め、この戦いに参加する各国の将校も集まって来て居た。
置鮎竜次郎一佐 ダバ派遣艦隊の司令とダバ派遣隊の司令官兼務。
小沢司郎一佐 合流した事によりダバ派遣艦隊第二艦隊司令に成る。
井上一彦一佐 ダバ派遣艦隊に出向しているダバ陸自派遣隊の司令官とダバ派遣隊総副司令兼務
池田秀三空将補 空自派遣隊の特別司令官。
神谷晶一佐 空自派遣隊の現場指揮官。
三石琴実二佐 ダバ派遣艦隊第一艦隊司令。
椎名ひかる三佐 ダバ派遣隊機甲科部隊・現場指揮官。
ゼータ・ビダイン アルガス騎士団 第二騎士団 アルガス騎兵団の団長
ダンブルド・アーシダ アルガス騎士団 第三騎士団 アルガス戦士兵団の団長
ニュール・レイダー アルガス騎士団 第四騎士団 アルガス魔導師団の団長
ファサリナ・ゲール アルガス騎士団 第五騎士団 魔法術治癒師団の団長
エリノア・ドラグリア白龍大帝
ユキカゼ・コーキン将軍
スミレイン・デコモリン少佐 アセリナ王国 東方地区第3聖天使騎士団の団長
以上の日本国と反帝国同盟諸国を含めた錚々たる顔ぶれのメンバーが集まって居た。
年長者にして、大帝と言う竜人族に措いて、皇帝の位に近い地位の座に付いて居るエリンが会議の調停議長役を買って出て居た。
ブラキュリオス湖畔紛争の戦いに集結した日シベ合同作戦軍は、会議の前に本格的な戦いを行う為にも、総指揮官の指名を決める事とした。
日本国と反帝国同盟諸国から成る各国政府や省庁と現場指揮官らは、予てからの話し合いでの調整を重ねた結果、グリクス地方軍団との決戦での日シベ合同軍の総司令官の席を置鮎一佐に任命する事に決まる。
これはダバ派遣隊の派遣が、決った前後から話し合われて居た臨時の相互安全保障協定に、基づいての取り決めであったからである。
置鮎一佐は、会議の席でエリンに一礼すると、用意してあった正面のスクリーントーンに、プロジェクターを使いパソコンで描かれた絵図を写し出し、その絵図を用いて現在の状況を説明を始めた。
「えー、現在のグリクス地方軍団は、東方70キロ付近のカントルナ砦にて、全軍の部隊の再編制を行って居る最中であるとの報告が、偵察中のガイダル・タバ日統合隊基地所属のP-1哨戒機改から報告が入って居ます。」
グリクス地方軍団の動きに付いての説明を終えて、自分の席に着くと、アルガス公国の騎兵団を率いるゼータ・ビダイン第二騎士団長。
このブラキュリオス湖畔紛争の戦いに措いて、正式な辞令が発せられた形で、彼はレジェンダリア諸島へと派遣されて居る全アルガス公国軍の総司令官就任している。
これはグリクス地方軍団が攻め掛かって来た場合、アルガス公国の単独で戦ったとする。
その場合は、アルガス公国は撤退と言う選択しが無かった。
その時点での指揮官はクリスと決められて居た。
それが自衛隊の参戦が決まり、更にはドラグリア白龍大帝であるエリンの参戦の報が入るとアルガス公国軍・中央方面騎士団は、レジェンダリア諸島への本格的な参戦を決定し、同地を防衛する為、援軍の派遣を決定したのである。
レジェンダリア諸島とその周辺地域のアルガス公国軍地方騎士団の後方支援に徹せよと命令を受けていたビダイン第二騎士団長。
中央騎士団の決定を受けて4万人の騎士団の派遣の報せと、ブラキュリオス湖畔紛争でのアルガス公国軍騎士団の総司令官に任じられると言う事と成ったのである。
また、アセリナ王国も、この戦の参戦を決める事に成った。
アセリナ王国・東方地区第3聖天使騎士団の団長であるスミレイン・デコモリン少佐を中心とした、五千人の聖天使騎士団を派遣するに至ったのであった。
「先ずは、一連の戦いに措いて、初戦に勝ちを取れましたな。」
アルガス公国軍騎士団の一同は頷く。
「今、俺の第三騎士団とレイダーの第四騎士団とで、セイジョン・ローグリア城の周囲をの守りを固め、東側地区に迎え撃つ為の防御陣地を増築造営して居る。」
アルガス戦士兵団を率いる強持ての顔つきと筋肉ムキムキな体つきを持つ巨漢であるアーシダ第三騎士団長と、クールな美男子であるアルガス魔導師団を率いるレイダー第四騎士団長。
彼ら二人は、人海戦術と魔法を駆使して、グリクス地方軍団を迎え撃つべく、野戦陣地を構築して居た。
「ニホン国から提供して貰った400年ほど前に行われた二つの戦に関する資料。」
「オオサカ城とオオサカ近辺での攻城戦資料。(大坂冬の陣・夏の陣)」
「そして、ナガシノ戦争(日本名・長篠の戦)の資料に加え、地球世界の近代戦術と言う戦術をも加え、これらの資料を基にして、迎撃陣地の構築を急いで居ます。」
「我々も出きれば、近代戦術時の優れた防御力や銃戦術に特化した造りの函館の五稜郭の城をとも、考えたのですが。」
「セイジョン・ローグリア城とその周辺の建物配置と地形の状態を考えれば、我々の居た世界で言えば、中世時代くらいの大阪や長篠での戦いが参考資料として相応しいと考えました。」
資料提供の経緯と決定した事情を井上一佐が説明した。
何と自衛隊幹部らは、決戦での作戦で、セイジョン・ローグリア城をミニ大坂城と見立てて、同地に誘い込んだグリクス地方軍団を戦国時代の大阪や長篠での戦術を用いて、奴らを料理してやろうと言う物に成って居たのである。
アリの群れの如く迫り来るグリクス地方軍団の大軍を相手に、この作戦は効果的と言えた。
何せ、大阪冬の陣では、真田丸に立て籠り真田信繫(幸村)に対して、前田利常軍や井伊直孝軍等の徳川幕府の主力軍が、幸村の挑発に乗せられた挙句の果てにコテンパンにされ、前線の両軍を退かせる為に、援軍として向かった藤堂高虎軍も多大なる被害者を出して、酷い目に遭ったと言う話が有るのだ。
それと同じ様な痛い目に遭うガミトフとオバム大佐らは、一体どんな事に成るのだろうか?
「確かに、見せて貰った資料からすれば、それが正しいてしょうな。」
「それに間も無く決戦と成るだろうから、そんなにも多くの時間は取れない。」
「大砲や銃に特化させてた防御を持った大きな野戦築城と成ると、更に時間を多く割かねば成らないので、突貫作業と成る今の状況下では流石に難しい。」
「其れに比べ、馬防柵に砦や塹壕と言った仕掛けだけ成らば、時間と技術面等で苦慮して居る我々でも十分な工事が可能だな。」
ビダイン第二騎士団長とアーシダ第三騎士団長らは、資料から見えて来る自分達の力量範囲で、出きる仕事を良く理解して居る様である。
「城の防備に付いては、順調なのだろう?」
「それはアルガスの小僧共の手の者に、任せて置けば良い。」
「問題なのは、何時頃、敵が仕掛けて来るかだ。」
エリンが、グリクス地方軍団の再侵攻の攻撃開始日時の日取りを気に掛けていた。
すると井上一佐が、立ち上がり予想日時に付いて、自衛隊側の予想予測の見解を説明する。
「目下の所、此方側の全ての準備が整うのに、一週間。」
「この戦いが始まるのと同時にアルガス公国軍の本隊が合流したのが二日前、それらを換算して、後5日ほど掛かります。」
「グリクス地方軍団の現在は、我々との戦いで総兵力の約3割強を失い。」
「再編制と傷病人や武器や物資の整理に追われて居ると各偵察隊からの報告が入って来ており、万が一の場合は敵への遅延作戦を決行し、決戦の時期を遅らせます。」
「全ては我々の掌の上の予定調和。これらが吉と出るか、凶と出るかですな。」
「勝率を確実にする為ーニーモ。奇襲、空襲、強襲と、この際デース、嫌がらせに成るのなら何でもヤリマショウ。」
デコモリン少佐の目付きが怪しく光って居た。
やはりこの人も、チョットだけ、マトモかなぁ~と思いきや、やっぱりこの人も生粋のアセリナ族の人だった様だ。
「傷病人に付いては、私、アルガス騎士団・第五騎士団長のゲール率いる魔法術治癒師団とニホンの自衛隊衛生科部隊が引き受けます。」
魔法医療の専門部隊であるアルガス騎士団・魔法術治癒師団と自衛隊の衛生科部隊が医療態勢をと整えたバックアップ部隊として、共同で傷病人対して事に当たる体制を構築していた。
魔法術治癒師団の所属団員が、応急処置と外科処置を終えた患者を治癒魔法で癒し、傷口や痛みを和らげる処置を主に行い。
本格的な外科による処置が必要な場合は、後送されて来た患者を臨時病棟で自衛隊衛生科の医官が処置を担当する。
其処でも無理な重傷者が出たのなら、ヘリで空輸搬送し、いずも型ヘリコプター搭載護衛艦かがやひゅうが型ヘリコプター搭載護衛艦ひゅうが等の医療設備で治療を受けさせる事に成って居る
海自護衛艦の医療設備と陸海の衛生科隊員と医療道具が使える事で、その生存率がグッと上がり、更には魔法医療で傷の直りが早く成るのである。
それでもダメなのなら、この最前線の戦地では、先ずは助からないだろう。
その後も会議は、それぞれの立場と経験から来る提案や問題点などを洗い出して行く。
何度も協議を重ねながら緊張した時間が流れて行った。
何時攻めてくるのか?日シベ合同作戦軍内では、それだけが気掛かりなのであった。
アースティア暦 1000年・西暦2030年・6月7日・午後15時10分頃・アースティア世界・ユーラシナ大陸・ユーラシナ大陸中央地域・シベリナ中央地方・パイプ・ライン大河・パイプ・ライン大河中央流域地方・ブラキュリオス湖・アルガス公国・レジェンダリア州・ レジェンダリア諸島東部・カントルナ島・カントルナ砦・ローラーナ帝国軍・グリクス地方軍団・グリクス地方艦隊占領地・カントルナ砦及び・仮設基地司令室にて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
話の時間を遡るが、同日の15時事である
この日、ガミトフは、カントルナ砦でオバム大佐らと仮設司令室内にて、レジェンダリア諸島に措ける今後の作戦方針を話し合って居た。
オバム大佐は、昨晩での戦い終えて、半日ほど休息を取っ手からの会議への参加である。
「オバムよ、此度は手酷くやられたな。」
「はっ、敵が逃げるだけの撤退戦での戦いとは言え、有利である我が軍団が此処までの手酷く被害を被る等とは、帝国の歴史上初の事だと思われます。」
「我がグリクス地方軍団の総力を結集して搔き集めた40万もの軍勢。」
「その内、凡そ15万人の兵力が、シベリナ連合諸国軍とニホン国軍からなる連合軍に討ち取られたのです。」
「しかも、何の変哲もない逃げるだけが目的たる。只の撤退戦に措いてです。」
「ふむ。オバムよ、何れにしても、この度のレジェンダリア諸島での戦と言うのは、過去にも類を見ない激しい攻防戦に成る事だろう。」
「何せ、奴らは我が軍の約3割をたったの半日と言う時間だけで、討ち取ったのたがらな。」
「しかしながらガミトフ閣下、このまま戦を進めるのは危険やも知れません。」
ちょび髭親父のジャーマン・ダニーガン中佐が心配点が有る様だった。
「ジャーマン中佐が心配なのは兵力不足か、それともドラグリアのロリババアの心配か?」
「戦況の都合の悪い報告を除かずに、敢えて答えて申し上げるのならば、その両方で有りますが、最もイレギュラーなのは、寧ろドラグリアのロリババアよりも、厄介なのは謎多き軍備を備えて居るニホン軍の方で有りましょう。」
「ふむ。ジャーマン中佐。貴公の見解で何か有れば、言ってみ見るが良い。」
「はっ!先ず始めに申し上げるの為らば、我が軍のこの戦に措いての損害での兵力不足。」
「これは此れまで通り、必要以上に気にする心配は無いかと。何せ、肝心のアルガス公国軍は、撤退を決めて居ると思われ、尚且つ、兵力は6千人前後に過ぎませぬ。」
「これでは、幾らニホン軍の兵器が質と能力で優秀であり、我々からすれば、イレギュラー的な存在で有ったとしても、その力は無限では無いでしょう。」
「それらの兵器は、何時かは矢玉と砲弾不足に陥り、燃料不足にも成る事から、最終的には稼動限界に達する筈です。」
「2つ目の懸念であるエリノア・ドラグリアですが、彼の御仁は、味方が一定以上の損害が出ると踏んだ場合は、全軍に撤退をさせる命令を発します。」
「其れに付いての証拠は、此れまでの戦の記録から、その傾向が色濃く出て居ます。」
エリンは存外、自由放蕩で無茶な事をする自由人だが、情にも厚い所が有る。
自分より若い命を大事にしたいが為に、このままでは勝利が見込めないと感じるか、そう判断すると大帝の名に置いて撤退せよと言うのである。
各国の元首は年長者である彼女の言と考えに、一目を置いて居るので、素直に従うのだ。
それも殿をエリン自身が引き受けてくれる事を彼女に感謝しながら・・・・・・・・・・・・
「ですが、これらの行動が全て欺瞞行動で、何らかの罠を張ろうとして居るので有れば、非常に危険だと言えます。」
「その最大理由は、エリノア・ドラグリア自身では無いのか?」
「はい。ニホン軍とエリノア・ドラグリアは、単体で手強い相手と言えます。」
「ですが、条件さえ整えば、奴らを撤退に追い込めると愚考を致します。」
「其れよりも危険な事が有り、気掛かりな未確認情報が有ります。」
「雷帝の魔導師と呼ばれ、我がローラーナ帝国を必要に付け狙う女魔導師リナ・ミーサガ・リンバースが、二ホン・シベリナ連合軍の戦列に居たとの情報が御座います。」
グリクス地方軍団の幹部たるジャーマン・ダニーガン中佐は、この会議に措いて、斜め上の回答を述べてしまった。
日シベ合同作戦軍が取ろうとして居る作戦の半分くらいは、言い当てて居たかも知れないが、最後の部分で間違えてしまって居た。
これは実に惜しい。
本当に惜しかった読みだった。
「その名は、噂話に措いて、偶に漏れ聞く者の名だな?」
「だがな、高が女魔導師が1人加わっただけで、ニホン軍やエリノア・ドラグリア以上に恐れる必要が有る者なのか?」
ガミトフがリナを侮る様な発言をする。其処へ、オバム大佐も進言する。
「ガミトフ閣下、その女だけは侮っては成りませぬぞっ!」
「何?オバムよ。一体、如何したと言うのだ?」
オバム大佐は真剣な表情で、リナに付いて調べが付き始めている情報をガミトフに報告する。
「グリクス第7要塞や我がグリクス地方軍団の本拠たるグリクス要塞、グリクス市、グリクス港。」
「グリクス地方軍団・帝国軍庁舎等を始め、此処数年の間の我が軍への損害を与え続けて来たのは、彼の小娘で有ります。」
「それに雷帝リナは、エリノア・ドラグリアの4番目の弟子にして、3人の姉弟子達によって、幼少期から英才教育を施され、その身を鍛えられて居るとの話が御座います。」
「その気に慣れは、3万人の人口を持つ都市を一撃で吹き飛ばすとか聞き及びます。彼の小娘めを決して、侮っては成りません。」
それは姉達が暇つぶしと称し、遊び相手として、3人揃って妹を玩具にして遊んでいた・・・・いや、可愛がっていただけなんだけどなぁーっ・・・・・・・・・
その序に紅葉達も巻き込まれて居たので、彼女達は姉達の事を天才と天災と言う事は、紙一重なんと言ったりする。
「うーむ・・・・・・・・・・」
ガミトフは部下達の進言と見解に付いて、暫し考え込む。
「折角の二人の進言だ、わしもこのまま無理やりにでも攻めかかって勝ったとしも、占領地や在領地の統治に支障が出ては、元も子もない。」
「分かった。敵の更なる分析や情報収集に努め。」
「全軍の戦力を再編制し、兵達には暫く睨み合いと小競り合いに徹しさせ、そのリナとやらの小娘に対して、何らかの対抗策を考えよう。」
「それにわしなら、そのリナとやらに加え、頭の可笑しなアセリナの聖天使騎士団を加えると考えるぞっ!」
「おおっ!?流石はガミトフ閣下殿。」
「我らには、其処までの考えが及びませんでした。」
ガミトフもまた、言い当てた事が当たっては居たが、半分正解と言う残念な事に成ってしまって居たりするのであった。
この人も実に惜しいっ!
「良い、良い。こうして、お前達が真剣に考えて、わしに進言してくれたが故に、わしもこうした考えを思い付いたのだからな。」
「それでは当面は、防備に入りつつ、進軍体勢を整えると各軍団へと通達を致します。」
「頼むぞっ!」
「「はっ!!」」
二人は会議を終え、ガミトフに向かって敬礼をしつつ、そのまま仮設司令室から退出する。