朝の教室は、いつもの喧騒に包まれていた。窓から差し込む五月の柔らかな光が、机の上に四角い影を落としている。空は静かに自分の席に着き、教科書を取り出した。
「おはよう」
 隣から声がした。葉山が笑顔で挨拶してきた。先週の保健室での出来事から、二日が経っていた。
「おはよう……大丈夫?」
 空は小さく尋ねた。葉山は明るく笑って頷いた。
「うん、完全復活。心配してくれてありがとう」
 彼の腕のあざは、長袖の制服に隠れていた。空は一瞬そこに視線を落としたが、すぐに目をそらした。葉山はそんな空の視線に気づいたのか、少し表情を曇らせた。
「あれね……本当にぶつけただけだから」
 言い訳めいた言葉に、空は黙って頷いた。それ以上は聞けなかった。聞く権利もなかった。でも、どこか引っかかる感覚が残った。
 チャイムが鳴り、授業が始まった。国語の時間。古典が苦手な空は、集中して先生の話に耳を傾けた。しかし、時折、隣の葉山が何かメモを取る気配がした。それが何となく気になって、空の集中力は途切れがちだった。
「桜井さん、この一節を読んでください」
 先生の声に、空は我に返った。立ち上がり、教科書を手に取る。指定された一節を読み始めたが、緊張で声が小さくなる。
「もう少し大きな声で」
 先生の言葉に頷き、空は少し声を大きくして読み続けた。読み終えて席に着くと、隣から小さな紙切れが滑り込んできた。
「上手に読めてた」
 そんな一言が書かれていた。空は小さく目を見開き、葉山を見た。彼は前を向いたまま、小さく微笑んでいた。
 こんな風に、誰かからのちょっとした励ましを受けるのは、空にとって珍しい経験だった。何だか温かな感覚が胸に広がる。

 昼休み、いつものように美咲と中庭のベンチで弁当を食べていると、葉山が近づいてきた。
「いい? 一緒に」
 美咲は嬉しそうに頷き、空も小さく頷いた。葉山はベンチに腰掛け、弁当を開けた。コンビニのおにぎりとサンドイッチ。
「お弁当、作ってないの?」
 美咲が尋ねた。葉山は少し照れたように笑った。
「うん、作れなくて。いつもコンビニ」
「それって大変じゃない? お母さんは?」
 美咲の無邪気な質問に、葉山の表情が一瞬固まった。空はそれを見逃さなかった。
「まあ、色々あってさ。俺、自分のことは自分でする主義なんだ」
 葉山は軽い調子で答えたが、目は笑っていなかった。空は弁当に目を落とし、箸を持つ手が少し震えるのを感じた。
「あ、桜井さんの弁当、いつもすごく綺麗だよね」
 話題を変えるように、葉山が空の弁当を覗き込んだ。
「自分で作ってるの?」
「うん……」
「すごいね。何でも出来るんだ」
「そんなことないよ」
 空は少し顔を赤らめた。褒められ慣れていなかった。
「でもさ、桜井さんって本当に優等生だよね。成績も良いし、家事も出来るし、絵も上手いし」
 葉山の言葉に、美咲が笑った。
「空ちゃんは完璧主義だからね。何でも一人でやろうとするの」
「そんなことない……」
 空は小さく否定したが、二人は楽しそうに空の話を続けた。
「でも、美術部の時は違うんだよ。すごく悩んでるの。何を描きたいのか、まだ見つけられてなくて」
 美咲の言葉に、葉山は興味深そうに空を見た。
「何を描きたいの?」
 素直な質問に、空は答えに詰まった。何を描きたいのか。それは自分自身でもまだ分からなかった。
「……分からない」
 正直に答えると、葉山は意外そうな表情をした。
「へえ、そうなんだ。俺、てっきり桜井さんは何でも分かってるタイプかと思ってた」
「違うよ……私、全然分かってない」
 思わず、本音が漏れた。空自身、自分がそんな風に言葉にするとは思っていなかった。美咲も少し驚いたように空を見ていた。
「そっか……」
 葉山は真剣な表情で空を見つめた。その目には、何か理解したような、共感するような光が宿っていた。
「俺も分からないことだらけだよ」
 彼の言葉には、どこか深い意味が込められているように感じられた。

 放課後、空は美術室に向かった。今日は何を描こう。鹿島との会話以来、空の中には小さな変化が生まれていた。自分の感情を絵に表現したい。でも、その方法がまだ分からない。
 美術室に入ると、いつものように部員たちが思い思いに制作を始めていた。空は自分の定位置に向かい、キャンバスを準備する。鹿島の姿はまだなかった。
 筆を手に取り、パレットに絵の具を出す。青、白、少しの黄色。でも、筆はなかなかキャンバスに触れない。
(何を描けばいいんだろう)
 迷っていると、背後から声がした。
「桜井さん」
 振り返ると、鹿島が立っていた。今日は少し顔色が悪いように見えた。
「先輩……」
「今日は何を描くの?」
「まだ……決められなくて」
 鹿島は小さく頷き、空の隣に立った。
「私が昨日描いたものを見てみる?」
 その言葉に、空は驚いて顔を上げた。鹿島が自分の絵を見せてくれるなんて、珍しいことだった。
「はい……」
 鹿島は空を連れて、美術室の奥に行った。そこには、布で覆われたキャンバスがあった。鹿島はそっと布を取り除いた。
 息を呑む。それは灯台の内部から見た風景だった。窓から差し込む光、海の青さ、空の広がり。でも、ただの風景ではなく、そこには深い感情が込められていた。孤独と自由、悲しみと希望。相反する感情が一つの絵の中に共存していた。
「すごい……」
 言葉にならない感動が、空の胸を満たした。
「これが私の見ている世界」
 鹿島は静かに言った。
「灯台は、私にとって特別な場所なの。一人になれる場所。でも、一人でいても、心は誰かを求めているんだと思う」
 その言葉に、空は強く共感した。自分も同じだった。一人でいることに慣れていて、でも本当は誰かを求めている。
「先輩の絵には、感情がこもってる」
「桜井さんも、自分の感情を絵に込められるようになるよ。時間がかかるかもしれないけど」
 鹿島の優しい言葉に、空は小さく頷いた。
「今度、また灯台に行ってもいいですか?」
「いつでも。でも……」
 鹿島は一瞬言葉を切った。少し苦しそうな表情が浮かぶ。
「先輩?」
「ううん、なんでもない。また灯台で会いましょう」
 鹿島は微笑んだが、その表情には何か隠し事をしているような影があった。空は不思議に思ったが、それ以上は聞けなかった。

 美術部の活動が終わり、空は教室に戻って忘れ物を取ろうとした。夕暮れの校舎は静かで、廊下には誰もいなかった。
 教室のドアを開けると、意外な人物がいた。葉山だった。彼は一人で窓際に立ち、夕日に照らされる校庭を見ていた。物思いにふける姿は、いつもの明るい彼とは違って見えた。
「……葉山くん?」
 空の声に、葉山は驚いたように振り返った。
「あ、桜井さん。美術部、終わったの?」
「うん……忘れ物を取りに来たの。葉山くんは?」
「俺? ああ、ちょっと考え事してた」
 葉山は軽く笑ったが、その目は笑っていなかった。
「何か……あった?」
 思わず聞いてしまった空に、葉山は少し驚いたような表情をした。
「いや、別に……」
 言いかけて、葉山は言葉を切った。空は彼の様子がいつもと違うことを感じていた。迷った末に、もう一歩踏み込んだ。
「腕のあざ……本当にぶつけただけ?」
 突然の質問に、葉山の表情が凍りついた。長い沈黙が流れる。
「……帰ろうか」
 葉山は質問をはぐらかすように言った。空は少し後悔した。余計なことを聞いてしまったのかもしれない。
「ごめん、聞かなくてよかったことを……」
「ううん、いいよ」
 葉山は小さく笑った。その笑顔は、どこか儚く見えた。
「桜井さんに心配してもらえるなんて、嬉しいよ」
 二人は一緒に校舎を出た。夕暮れの空が美しく染まっていた。
「ねえ、灯台って行ったことある?」
 歩きながら、葉山が唐突に尋ねた。空は一瞬言葉に詰まった。
「あの、古い灯台?」
「うん。この前、桜井さんが出てくるところを見たから」
 空は黙って頷いた。鹿島との出会いのことを話すべきか迷ったが、なぜか秘密にしておきたい気持ちがあった。
「中、どうなってるの?」
「……らせん階段があって、上に展望室みたいなのがある」
「へえ、行ってみたいな」
 葉山は空を見つめた。夕日に照らされた彼の横顔が、なぜか切なく見えた。
「今度、案内してくれない?」
 唐突な提案に、空は答えに窮した。灯台は鹿島との特別な場所。でも、葉山を拒む理由も見つからない。
「……いつか」
 曖昧な返事に、葉山は満足げに頷いた。
「約束だよ」
 二人は坂道を上りながら、静かに並んで歩いた。言葉はなくても、不思議と居心地が悪くなかった。
 高台に差し掛かると、いつものように分かれ道に来た。
「じゃあ、また明日」
 葉山が手を振ろうとした時、彼のポケットから何かが落ちた。空が拾おうとすると、葉山が慌てて手を伸ばした。だが、空の方が早かった。
 それは一枚の写真だった。少し古びた写真の中には、幼い葉山と若い女性が写っていた。母親だろうか。二人とも笑顔で、幸せそうな瞬間を切り取ったような一枚。
「これ……」
「返して」
 普段は穏やかな葉山の声が、急に冷たくなった。空は驚いて顔を上げた。葉山の表情は硬く、どこか怯えているようにも見えた。
「ごめん」
 空は急いで写真を返した。葉山はそれをポケットに滑り込ませ、深呼吸をした。
「ごめん、怖い顔しちゃったね」
 彼は無理に笑顔を作ったが、その表情には影が残っていた。
「大事なものなの?」
「……うん。母さんとの写真」
 葉山の声は小さく、どこか遠くを見ているような目をしていた。
「もう、会えないんだ」
 その言葉に、空の胸が締め付けられた。自分と同じなのかもしれない。
「私も……母は五年前に亡くなった」
 思わず口にした言葉に、葉山は驚いたように空を見た。
「そうだったんだ……知らなかった」
 空の告白に、二人の間に新たな理解が生まれたようだった。
「俺の母さんは……」
 言いかけて、葉山は再び言葉を切った。何かを言おうとして、でも言えない。その表情に、空は自分自身を重ねた。
「無理に話さなくていいよ」
 空の言葉に、葉山は安堵したように息を吐いた。
「ありがとう」
 彼の声には、心からの感謝の気持ちが込められていた。
「じゃあ、また明日」
 葉山は再び手を振り、別の道へと歩いていった。空はその後ろ姿を見送りながら、胸の内に湧き上がる複雑な感情を感じていた。
 葉山は何を隠しているのだろう。腕のあざ、母親の写真、そして時々見せる暗い表情。それらは全て繋がっているような気がした。

 家に帰ると、星がリビングでテレビを見ていた。
「お帰り、お姉ちゃん!」
「ただいま。ご飯、何がいい?」
「えっとね、カレー!」
 星の無邪気な笑顔に、空も自然と笑顔になった。
 キッチンに立ち、夕食の準備を始める。包丁でにんじんを切りながら、空は今日のことを考えていた。鹿島の絵、葉山との会話、そして彼が持っていた写真のこと。
(葉山くんにも、言えない何かがあるんだ)
 それは自分と似ている。皆、何かを抱えながら生きている。そう思うと、少し救われる気がした。自分だけが苦しいわけじゃない。
 カレーの香りが台所に広がり始めた頃、玄関のドアが開く音がした。
「ただいま」
 父の声がする。いつもより早い帰宅だった。
「お帰りなさい」
 空が答えると、星が駆け寄る音が聞こえた。
「パパ、早いね!」
「うん、今日は早く切り上げられたんだ」
 父と星の会話が聞こえてくる。空はカレーをかき混ぜながら、少し微笑んだ。
 食卓を囲み、三人で夕食を食べる。星が学校での出来事を楽しそうに話し、父も優しく相槌を打つ。空は黙って二人の会話を聞いていた。
「空、学校はどう?」
 突然、父が空に話しかけた。珍しいことだった。
「普通……特に変わったことはないよ」
「そう。美術部は?」
「うん、頑張ってる」
 短い言葉のやり取り。でも、父が空に関心を持ってくれたことが、少し嬉しかった。
「そういえば、空」
 父は少し言いにくそうに口を開いた。
「来週末、また出張があるんだ。土日も含めて三日ほど」
 空は黙って頷いた。いつものことだ。
「星のことを見ていてもらえるかな」
「うん、分かった」
 いつもの返事。いつもの役割。でも今日は、少し胸に引っかかる感覚があった。
(本当は、私も……)
 言いかけた心の言葉を飲み込む。

 その夜、空は自分の部屋で窓際に立っていた。月明かりが海を照らし、銀色の道のように輝いていた。
 スケッチブックを開き、ページをめくる。最近描いた絵たち。灯台、鹿島の後ろ姿、鳥籠の中の少女。そして、新しいページには、今日の夕暮れの風景と、そこに立つ葉山の横顔が描かれていた。
 空は自分でも気づかないうちに、彼の姿を描いていた。その横顔は、どこか孤独で、でも強さも秘めているように見えた。
(葉山くんは何を隠しているんだろう)
 葉山の秘密。それを知りたいような、でも知りたくないような、そんな複雑な気持ちがあった。
 ふと、美咲の顔が思い浮かぶ。彼女は葉山に好意を持っている。そのことを空は知っている。だから、これ以上葉山に関わるべきではないのかもしれない。でも、どうしても気になる。彼の抱える闇。それは自分にも似たものがあるような気がして。
(私、どうしたいんだろう)
 そんな問いを自分に投げかけながら、空は静かにスケッチブックを閉じた。

 翌朝、空は教室に入るとすぐに違和感を覚えた。葉山の席が空いていた。
「葉山くん、今日休み?」
 隣の女子に尋ねると、彼女は「うん、連絡あったみたい」と教えてくれた。
 なぜか胸が重くなる。昨日の彼の様子が気になって、空は授業に集中できなかった。
 放課後、美咲と一緒に美術室に向かう途中、空は思い切って尋ねた。
「美咲は……葉山くんのこと、どう思ってる?」
 突然の質問に、美咲は少し顔を赤らめた。
「え? どうって……まあ、いい人だと思うよ。かっこいいし、優しいし」
 美咲の反応で、空の予想は確信に変わった。彼女は確かに葉山に好意を持っている。
「なんで急に聞くの?」
「ただ……ちょっと気になって」
「もしかして、空も葉山くんのこと……?」
 美咲の表情に、少し不安が混じった。空は急いで首を振った。
「違うよ。ただ、何か悩んでるみたいだなって思って」
「悩んでる? どんなこと?」
 美咲の素直な疑問に、空は答えに窮した。葉山のあざのこと、母親の写真のこと、それらは軽々しく話せることではなかった。
「分からない。でも、何かありそうだなって」
 曖昧な返事に、美咲は少し首をかしげた。
「そっか……心配なの?」
「……うん、少し」
 正直な気持ちを言葉にすると、美咲はしばらく空を見つめた後、優しく微笑んだ。
「空って、本当は優しいんだよね。あまり表に出さないけど」
 美咲の言葉に、空は少し顔を赤らめた。
「そんなことない……」
「いいよ、一緒に心配しよう。明日、学校来たら話してみようか」
 美咲の前向きな提案に、空は小さく頷いた。美咲の優しさに、また一つ救われた気がした。

 その日の夕方、空は一人で灯台に向かっていた。鹿島先輩がいるかどうかは分からなかったが、何かに導かれるように足が向いていた。
 灯台に到着すると、扉は少し開いていた。中に入ると、らせん階段を上がる足音が聞こえる。誰かがいる。
 階段を上がり、展望室に着くと、そこには鹿島がいた。イーゼルに向かって絵を描いている。物音に気づいたのか、振り返る。
「来たのね」
 鹿島の声には、驚きはなかった。まるで空が来ることを知っていたかのように。
「はい……」
「見て」
 鹿島は自分の絵を指差した。それは海の絵だったが、昨日見たものとは違っていた。今日の絵には、一羽の鳥が描かれていた。海の上を自由に飛ぶ鳥。
「鳥は自由の象徴。でも、本当に自由なのかな」
 鹿島の謎めいた言葉に、空は首をかしげた。
「鳥だって、巣に帰る場所がある。完全な自由はないのかもしれない。それでも、羽を広げて飛ぶことはできる」
 その言葉が、空の胸に響いた。
「私も……飛べるかな」
 思わず漏れた言葉に、鹿島は優しく微笑んだ。
「桜井さんは、もう飛ぶ準備ができてる。ただ、自分でそれに気づいていないだけ」
 鹿島の確信に満ちた言葉に、空は何か温かいものが胸に広がるのを感じた。
「今日はスケッチブック持ってきた?」
「はい」
 空は鞄からスケッチブックを取り出した。鹿島に見せるのは少し恥ずかしかったが、何かを共有したいという気持ちの方が強かった。
 鹿島はページをめくりながら、じっと空の絵を見つめた。灯台、鳥籠の少女、そして葉山の横顔。最後のページに来た時、鹿島は少し表情を変えた。
「この人は……」
「クラスメイト。葉山くん」
「彼に興味があるの?」
 率直な質問に、空は言葉に詰まった。
「違う……ただ、何か隠してると思って」
「隠してる?」
「うん、腕にあざがあって。それに、母親のことで何か……」
 言いかけて、空は自分が話しすぎていることに気づいた。他人のプライバシーに踏み込むようなことを話すべきではなかった。
「ごめんなさい、余計なことを……」
「いいのよ」
 鹿島は静かに言った。
「桜井さんが他人に関心を持ち始めたこと、それが大事なの」
 その言葉に、空は少し驚いた。
「人は皆、何かを隠している。あなたも、私も、その葉山くんも。でも、時々、その隠しているものを誰かに見せることがある。それは特別なこと」
 鹿島の言葉は、哲学的で、でも温かみがあった。
「もし彼があなたに何かを打ち明けたいなら、それはあなたを信頼しているということ。その信頼を大切にしてあげて」
 空は黙って頷いた。鹿島の言葉が、心に深く沁みていく。
 二人は夕暮れ時まで灯台にいた。言葉を交わすこともあれば、黙って海を眺めることもあった。不思議と居心地の良い時間だった。
 帰り際、鹿島が空に言った。
「また来てね。でも、次は自分の絵を持ってきて。ここで描いてみるの」
 空は微笑んで頷いた。灯台から出る時、空は振り返った。夕日に照らされた灯台が、赤く輝いていた。この場所が、空にとって特別な場所になりつつあることを感じていた。

 家に帰る途中、空は立ち止まって空を見上げた。夕闇が広がり始め、最初の星が瞬き始めていた。
(明日、葉山くんは学校に来るかな)
そんなことを考えながら、空は家路を急いだ。なぜか、明日が待ち遠しかった。