もう限界だった。
せっかく我慢してやってたのに。 

ずっと、ギリギリのところでコントロールして制御してたのに。

そんなの……、まじでありえない。



俺は強引に腕を引っ張って季威の唇に自分の唇を押しつけた。
深く押し付けて離れないように口づけをする。

……お前のこと、ほんとは一時も離したくねぇんだよ。




「〜〜っ。」

困惑した顔で息を切らしながらも、押し返されたりなど抵抗は全くなかった。
そのせいで俺はまた期待してしまう。

……ほんっと、俺の悪いとこ。



「……っは、…お前さ、なんで抵抗しねぇの?ばかなの?それとも勘違いさせたいの?〜〜はぁ、まっじでうっざい。」

自分でキスしておきながら、抵抗しない季威を罵るなんて自分勝手にもほどがある。

……これじゃあ、俺が季威のこと好きだと言っているもんだ。



「………っ。ね、ゆーりって、」

「違う、安心して。お前に興味は1ミリもねぇよ。ただ気が動転してただけだから。」

じゃあね、なんて呟いてテキトーに呟いて季威から背を向ける。

見たことのない焦ったような困惑顔、やっぱりバレていた。



こうなった以上………もう、あいつのそばになんて居られない。

んとにだから嫌だったんだよ……ッ!!

幼馴染という特権を使っていつまでもあいつのそばにいたかった。


ほんっとにふざけんなよ……。
そう思いながらも頭の何処かでは分かっていた。


もう、限界だったのだ。


俺だけを瞳に映して、俺のために動いてくれた季威を自分だけのものにしたくてたまらなかった。

ただでさえ両親の命日でいつもと精神的に違うのに、その上こんなことされてしまえばコントロールなんてできるわけがない。



俺はありとこの世に存在する全て感情を混ぜたかのような訳の分からない気持ちに襲われながら、お墓参りへと向かった。


……もちろん、お墓参りをしてもいつもと違って心ここにあらず状態だった。




もう、誤魔化しがきかないくらい、あいつに堕ちてる。



ねぇ……いつか、季威も俺に堕ちてよ。


なんて、願いだけが頭を支配していた。