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「空太!おはよう」
「おう」
相変わらず素っ気ない返事だが、少しだけ変わったことがある。
それは空太が私を見てくれるようになったこと。
挨拶をすれば視線が合う。
それがくすぐったくて、嬉しくて、飛び上がりたい気持ちになる。
「明日から夏休みだね」
「だな……」
「それで……あの……夏祭り……一緒に行かない?」
「……いいよ」
「やったー!約束ね」
そう言って小指を差し出すと、空太は私の小指に自分の小指をからめてくれた。
約束完了。
私は鼻歌交じりに教室に入ると、クラスの女子に囲まれた。
「ちょっと見たわよ。朝からイチャついてくれるじゃない」
「いつから付き合ってるの?」
「どっちから告白したの?」
「さっきのは何?何の約束?」
瑠璃の質問を皮切りに、クラスの女子達が質問攻めにしてくる。
「ちっ……ちょっと待って!待ってったらーー!」
茜は質問に答えながグッタリとしていた。今日は終業式、体育館に全生徒が集まり校長先生の長い話を聞く日だ。生徒達が集まり出し、雑談が始まる。
そんな中、探してしまうのは空太の姿。
私は空太を見つけ出し、小さくVサインをしてみせる。するとそれに気づいた空太は、一瞬目を細めたがすぐに顔を逸らした。相変わらず素っ気ないが、一瞬の笑顔に心が躍る。そんな私達を見て皆が冷やかしてくる。一組の男子は空太の背中をバシバシと叩きながら何かを言っている。
何だか幸せだな。


