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 今日も私は防波堤に腰を下ろし、茜色の空を見つめながら涙を流す。この空はもうすぐ群青色に変わるだろう。涙が止まらない今、まだ帰る事は出来ない。ここでこうして涙を流すのが日課のようになっている。オレンジの空が群青色に変わる景色を何度見ただろう。寄せては返す波を何時間見ながら涙しただろう。頬をつたい落ちていく涙は、夕日でオレンジ色に染まりながら落ちていく。これから長い人生を歩んでいく中で、きっとこの時のこの切なさは、一瞬の出来事なのだろう。年老いて振り返った時には、青春の1ページの彩りとして切り取られるのだろうが、今はただただ切なくて、悲しくて、辛い。

 幼馴染みとして長い時間を共に過ごしてきた空太。この先、私と空太は同じ時間を隣で歩むことが無いのかもしれない。そう考えただけで、心が悲鳴を上げる。

 ずっと隣にいたいのに……。

 それを許してもらえない時が来る。

 それはいつなのだろう。

 もうすぐなのだろうか?

 それを考えただけで辛い……辛くて苦しい。

 こんな思いをするなら、この恋を終わらせて次の人に……そう思うのに、それが出来ない。

 長く煩った恋煩(こいわずら)いは、何ともややこしい感情で、今更違う人を好きになんてなれそうに無い。

 もう失恋しているのだから、忘れてしまえば良いのにと、頭では分かっている。分かっているのに、空太を見るとまた時めいてしまう。悪あがきのように話しかけて、また落胆する。空太の視線を追いかけて、それが瑠璃に向いてるのを見て涙する。

 空太の視線の先には必ず瑠璃がいる。あの日から空太の瞳に映るのは私では無く瑠璃だけ。

 私には気づかないのに、私の隣を歩く瑠璃には気づくんだね。

 その度に目の前が涙でにじむ。

 ズキリと痛む胸を押さえて、涙を我慢する。

 空太とは交わう事の無い視線が悲しくて、瞳の奥に集まる熱をどうにかごまかすために、笑顔を振りまいた。元気いっぱいに振る舞って、私に気づいて欲しいとアピールして笑顔で空太を見つめる。

 瑠璃の隣には私もいるんだよ。

 私に気づいて……私も見てよ。

 私はずっと空太を見ているよ。

 こんなにも空太が好きなのに、空太に私の想いは届かない。