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私達は二年生になっていた。
瑠璃とはまた同じクラスになれたが、空太とはま違うクラスになってしまった。こればかりは仕方の無いことなので、来年に期待するしか無い。
そして今年もやって来ました体育祭!
今年は思いっきり空太の応援がしたいが、なにせクラスが違うため、大声で応援することが出来ない。
「どうして応援したらダメなの!」
私が悲痛な叫びを上げると、クラスの女子達がまあまあと背中を叩いてきた。
「しょうが無いでしょう。クラスの士気が下がるし、男子達が悲しがるよ」
「瑠璃ー。私がちょっと空太の応援した位じゃ士気は下がらないよね?」
「そんな事無いよ。茜の笑顔は皆を笑顔にするからね。それに茜を狙ってた男子は多かったんだよ。空太くんと付き合いだしたって知った男子達の落胆は凄かったんだから」
「あはは……まっさかー!」
「茜は空太くんしか見ていないから分らないんだよ。去年の体育祭のダンスの後から、茜への男子のアプローチはエグかったと思うんだけど?」
そうだっただろうか?
全く記憶に無いんだけど?
そう思いながらキョトンとしていると、クラスの女子達が溜め息を付いてきた。
「茜は空太くん一筋だねー」
「ぶれないねー」
そんな声が女子達から聞こえてきた。
その通りだ。
私には空太だけ。
空太がいればそれでいい。
私は今年のクラスカラーである青いポンポンを手に、元気にダンスを踊る。そして「頑張れ二組!」そう叫ぶところで思わず叫んでしまう。
「頑張れ空太!」
あれ?
やっちゃった?
でも言ってしまったのは仕方が無い、ぴょんっと大きく跳ねて笑顔でごまかす。
そんな私をクラスの女子達が「茜!」と叫びながら小突いてきた。
「ごめんーー!!」
私はそう言いながら笑顔で笑った。
そんな私の応援を聞いた空太は右手で顔を覆い、空を仰いでいた。
「空太ずりーぞ!」
「お前ばっかり!」
「俺もあんな彼女欲しい」
そんな事を言われながら背中を叩かれていた。
私は女子達から逃げながら、空太の方へと向かって走って行く。
「そーらーたー!」
大きな声で叫んでから、両手を広げで空太の胸の中に飛び込んだ。
すると「きゃー!」と女子生徒達から悲鳴が上がる。
空太は私のだからね。
牽制、牽制。
次は空太の200メール走だから、空太を好きになっちゃう子もいるかもだからね。
これだけしておけば、手を出そうなんて考える女子はいないだろう。
ふっふっふっ……。
そんな中で始まった200メール走。
空太の真剣な顔。
この横顔が格好いいの!
私は祈るように手を組み、空太を見守る。
ピストルの合図で走り出した空太はぐんぐんと加速する。
風を切るように走る空太。
そして見事に一番でテープを切った。
そんな空太を見た女子達から悲鳴が上がる。
「きゃー!」
私も一緒になって悲鳴を上げる。
空太格好良すぎ!
でも誰も見ないで!
こんな格好いい空太を見たら、皆好きになっちゃうよ。
不安が押し寄せた時だった。
空太がこちらに振り返り、グッと親指を立ててきた。
しかも、ニッと口角を上げている。
貴重な空太の笑顔だ。
私にしか見せないその顔に、私の頬は緩む。
私も空太に向かってブイサインをすると、皆に冷やかされた。
「リア充~!茜ずるい」
「茜ばっかりー」
「バカップル」
えへへ……。
何て幸せなんだろう。
青春の一ページ。
それは人生のうちでほんの一瞬。
そんな世界で私達は生きている。
そんな一瞬の一時だから、大切に生きていきたい。
あなたの隣に肩を寄せ合い、ずっと隣で……。
* fin *


