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「昨日どうして先に帰ったんだ?」

 空太にそう言われて私はハッとした。

「ごめんね。お母さんに頼まれてたことがあって」

「そっか……茜?」

 名前を呼ばれて空太を見ると、目の下をそっと撫でられた。

「どうした?目が赤い……少し腫れてるし」

「あっ……昨日ドラマ見てたら感動して泣きすぎちゃったんだ」

「そうか、ならいいけど……」

 そう言った空太の視線が、少し離れた場所に向いていた。

 あれは……瑠璃と和哉先輩……。

 また瑠璃か……。

 前を見つめる空太の顔を見ることが出来ず、私は俯いた。

「茜どうした?」

「…………」

 唇が震えて声が出せない。

「……茜?」

 空太に無理矢理顔を上げさせられ、私は無理矢理笑顔を作る。そんな私の顔をは泣き笑いの表情になっていて、それを見た空太の顔が不安そうに歪む。

「茜……」

「ごめん……」

 私は空太から逃げるようにその場から走り去った。