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 防波堤に腰を下ろし、茜色に染まった空と海を眺めた。少し前まで毎日のようにここに来て、涙を流していたというのに、ここに来るが久しぶりに感じる。

 こうして茜色に染まった空を涙を流しながら見ていると、自分の名前が嫌いになりそうだ。

 茜色は涙の色。

 失恋の色。

 悲しみの色。

 苦しみの色。

 空太を想っていた色。

 恋の色。

 私の青春の色。

 もう終わりにしなければいけないのかもしれない。

 空太を縛り付けてはいけない。

 私は空太の弱みにつけ込んだ。
 
 振られて悲しみに暮れる空太の心に入り込んで、隣にいさせて欲しいとワガママを言った。『私にしなよ。私を利用していいから』あんな言葉……。

 後ろめたさはあった。

 それでも空太の隣にいたくて、空太が私の隣にいてくれるのならと、自分の気持ちを優先させた。

 そのつけが来た。

 潮風に揺れる髪をそのままにして涙を流す。

 これから自分が取らなくてはならない行動を考えると、涙が後から後から流れ出す。

 空太への想いを断ち切り、別れる……。

 違う……大丈夫……元に戻るだけ。

 幼馴染みという、本来の私達の位置に戻るだけ。

 悲しむ必要なんてない。

 大丈夫……大丈夫……。

 私は何度も自分に言い聞かせる。

 大丈夫……大丈夫……大丈夫だと……。