翌朝、僕たちは準備をして軍の施設に向かいました。
 ベストリア領に行った経験があるので、何を用意すれば良いのか分かっているのがありがたいです。

「今日は、この地点に行く。前回よりも近い場所だ」
「キュ!」

 さっそくヘンリーさんとドラちゃんが打ち合わせをしているけど、ドラちゃん曰く一往復半できる距離だそうです。
 なので、もしかしたら捕まえた人をドラちゃんで護送するかもしれません。
 念の為に、牢屋も準備するそうです。
 なので、拘束用の縄とかもスラちゃんのアイテムボックスに入れておきます。
 これで準備万端です。

 シュイン、ぴかー。

「グルル」
「よし、では乗り込むぞ」

 大きくなったドラちゃんに、僕たちが乗り込みます。
 落ちないように、固定も完了です。

「では、ナイル子爵領に向かう。牢屋が必要になったら、出発する前に連絡する」
「はっ、お気をつけて行ってらっしゃいませ」

 兵の敬礼を受けながら、ドラちゃんは空高く飛び上がりナイル子爵領へ一直線に飛び始めました。
 軍の施設の兵も、大きいドラちゃんに慣れたのか全然平気な表情で見送りをしていました。

「改めて、この後の作戦を確認する。シンシア、エミリー、ナオ君、ドラちゃんで、暗黒杯が置かれている建物に突入する。残りのメンバーで、屋敷を押さえる」
「また、軍と一緒に行動するんですよね?」
「そうだ。ただ、今日は軍が駆けつける前に我々が行動する確率の方が高い。各自気を付けて行動するように」

 前回は全員で暗黒杯を浄化して現場を押さえたので、屋敷に着くまでに軍が到着する余裕があった。
 でも、今日は分担して一気に二か所を制圧します。
 だから、僕もドラちゃんもとっても頑張らないとね。
 そして、あっという間にナイル子爵領付近に到着しました。
 またもや、この地域の軍の施設上空でドラちゃんが三回旋回し、ナイル子爵領の領都に向かいました。

 バサッ、バサッ、バサッ。

「わあ、ドラゴンだ!」
「な、何だ何だ?」
「に、逃げろ!」

 屋敷の前にドラちゃんが着陸すると、門番や警備の兵が怖気ついたのか一斉に逃げ出しちゃいました。
 うん、予想外の展開に僕たちもぽかーんとしちゃったよ。
 でも、周りがどう動こうが、僕たちのやる事は変わりありません。
 探索魔法を使って、っと。

「あっ、屋敷の斜め前の建物から魔力反応があります」

 僕がヘンリーさんに報告すると、ヘンリーさんも満足げに頷いていました。
 そして、直ぐにみんなに指示を出します。

「報告通りだ。では、シンシア任せたぞ」
「ええ、任せてね」
「我々も、屋敷に突入する。では、行くぞ!」

 ドラちゃんも小さくなって、シアちゃんを背中に乗せて僕の後をついてきました。
 屋敷の門が普通に開いているので、ヘンリーさんたちも屋敷の玄関に向かって行きました。

「ナオ君、ドラちゃん、魔力は大丈夫?」
「大丈夫です。走りながら魔力を溜めました」
「キュー」
「じゃあ、建物のドアを開けるわ。エミリーは、私と一緒に周囲の警戒ね」

 一気に建物のドアが開いて、中からダークシャドウが噴き出してきた。
 僕とドラちゃんも、間髪入れずに浄化魔法を放ちます。

 シュイーン、ぴかー!

「ナオ君、どんな感じ?」
「直ぐに終わります。この前の、王都の屋敷を浄化した方が大変でした」
「まあ、確かにあの屋敷は酷かったもんね」

 シンシアさんが僕に浄化の進捗状況を聞いてきたけど、手ごたえがあんまりなかった。
 そして、実際に一分もかからずに浄化は終了です。

「じゃあ、私は建物の中に入るわ。ナオ君は、エミリーとともに周囲の警戒をしてね」
「「はい!」」

 シンシアさんは、暗黒杯に取り付けられた魔石を外すために建物の中に入っていきました。
 そして、エミリーさん、ドラちゃん、シアちゃんと周囲を警戒していると、何故か僕たちの方に多くのならずものがやってきました。
 すると、エミリーさんが直ぐに僕たちに声をかけました。

「軍の兵ではないわ。私たちを排除するつもりよ、戦闘準備を」
「「「うらー!」」」

 ならずものが、一気に剣を抜いて僕たちに襲い掛かってきました。
 緊迫した雰囲気になったけど、僕たちは魔法での長距離戦を選びました。

 シュイーン、ズドドドド!
 ズドン、ズドン、ズドン!

「「「ギャー!」」」

 エミリーさんが剣を構えて、僕がサンダーバレット、ドラちゃんがホーリーバレットを放ちます。
 シアちゃんも、威力十分の酸弾を沢山放っています。
 僕たちが打ち漏らしたならずものを、エミリーさんが剣技で撃退するつもりでした。

「「「う、うう……」」」
「全く歯ごたえが無い奴らね。全部魔法で終わっちゃったじゃない」
「あはは……」

 エミリーさんも撃退する気満々だったのに、結局全員僕たちで倒しちゃいました。
 エミリーさんは大層不満な表情を見せているけど、ここは良かったと思って引き続き周囲の警戒を続けました。