今日も浄化が必要な建物のところに行くんですけど、貴族の屋敷ではありません。
 なんでも、王都の商店街の建物でも浄化が必要なところがあるそうです。
 僕たちは、さっそく馬車に乗って商店街に向かいました。

「ふふ、ドラちゃんはすっかりリュックサックがお気に入りになったのね」
「キュー!」

 実は、僕が抱いているリュックサックの中に小さい姿のドラちゃんがすっぽりと入っていて、首だけちょこんと出していました。
 声をかけたシンシアさんだけでなく、他の女性陣もリュックサックに入っているドラちゃんを微笑ましく見ていました。
 リュックサック自体は随分前に修繕から戻ってきたんだけど、何を入れようかなとずっと悩んでいました。
 すると、昨晩リュックサックをベッドの上に出しっぱなしにしていたら、いつの間にかドラちゃんが潜り込んでいました。
 どうも体のサイズにジャストフィットしたらしく、とっても落ち着いていました。
 なので、今朝も当然の如くドラちゃんはリュックサックに入っていました。
 飛ばなくて良いので、移動も楽ちんだと思っているみたいです。
 僕も、前に沢山の荷物を背負っていた時に比べるとドラちゃんはとても軽いです。

「さあ、着いたぞ。今日は、ここから始める」

 そして、目的地に到着したけど、見た目はただのお店でした。
 でも、入り口は固く閉ざされていて、建物の中から淀みが少し溢れ出ていました。
 間違いなく、僕たちの出番ですね。
 ドラちゃんももぞもぞとリュックサックから出てきて、やる気満々って感じです。
 では、さっそく魔力を溜め始めましょう。

「よし、では、ドアを開けるぞ」

 ヘンリーさんが近衛騎士に指示を出して、ドアの鍵を開けます。
 そして、ドアが開いた瞬間に、僕たちは一気に浄化魔法を放ちました。

 ギギギギ。
 シュイン、シュイン、シュイン、ぴかー!

 この前屋敷を浄化した時よりも手応えがないので、楽々浄化できました。
 建物の大きさが、屋敷とは全然違うってのもありそうです。

「ヘンリーさん、浄化終わりました」
「ご苦労さま。しかし、本当にあっという間だったね。直ぐに確認しよう。ここは、借金苦で店主が自殺したという、至ってシンプルな理由だ」

 し、シンプルなのかな?
 でも、借金苦があったからこそ淀みが発生してしまったのかもしれない。
 こうして、この日は三件の淀みのある店舗を浄化していきました。
 そして、王城に戻って明日からの予定を話すことになりました。

「明日は、ナイル子爵領に行く。調査の結果、ベストリア領と違ってほぼ家族全員が邪神教にどっぷりと浸かっている。対象外なのは、嫡男夫人と昨年生まれたばかりの嫡男だけだ」

 ベストリア領と同じくらいの距離にある領地らしく、軍の調査の結果、領地経営も少し良くないそうです。
 ベストリア領の時は後を継いだ息子と娘がとても良い人だったけど、今回はちょっと難しそうですね。
 僕と同じことを思っていたのか、他の人達も表情は硬かった。

「暗黒杯に、そこまで魔力は溜まっていない可能性が高い。場所も領都内だから、同時に仕掛ける。私とナンシーに近衛騎士で屋敷に向かい、残りの面々で暗黒杯の浄化を行ってくれ。屋敷に鍵がかかっている可能性が高いから、スラちゃんは私とともに行動だ」

 ヘンリーさんの部隊案に、スラちゃんも触手をふりふりとしながら答えていました。
 僕もドラちゃんも、ふんすって頑張ろうと思いました。
 また明日の朝王城隣の軍の施設に集まって、現地に向かうことになりました。
 僕が準備するものは何もないので、とても助かります。

「「わー」」
「キュー」
「ふふ、とても元気いっぱいね」

 その後は、シャーロットさんの部屋に移動して、アーサーちゃんとエドガーちゃんと一緒に遊びました。
 うるさくしちゃうかなと思ったけど、シャーロットさんは子どもが楽しく遊ぶのはとても好きなんだって。
 こうして、夕方まで僕たちはシャーロットさんの部屋で過ごしていました。
 明日は、早く問題が解決できるように頑張らないと。