「では、行ってくる」
「グオオオ!」

 バサッ、バサッ、バサッ。

 翌朝、予定通りにヘンリーさん、嫡男さん、スラちゃんは、大きくなったドラちゃんに乗って王都に向かいました。
 王城でも色々と準備を進めていて、ドラちゃんが王都に到着後直ぐに謁見が行われるそうです。
 移動手段のドラちゃんはともかくとして、やる気満々のスラちゃんはすっかりヘンリーさんの参謀役ですね。
 屋敷の捜索の続きを行っているシンシアさんを除いた僕たちで、引き続き町の教会で奉仕活動を行います。
 妹さんは先入りして準備を進めていて、教会側も炊き出しの仕込みをしていました。
 ではでは、僕とエミリーさんは一足先に無料治療を始めましょう。

 シュイン、ぴかー。

「あの、もしかして昨日お酒を飲んでいましたか? お腹の調子が、随分悪かったですよ」
「ははは、バレちまったか。昨日は仕事終わりに食堂で飲んでいたんだよ」

 治療に並んでいる人も、色々な人がいます。
 怪我をしている人もいれば病気の人もいるし、いま治療したおじさんのようにお酒を飲んでいる人もいます。
 でも、お酒を飲み過ぎるのは良くないと思いますよ。
 炊き出しも始まったみたいなので、午前中はこのまま頑張りましょう。

 バサッ、バサッ、バサッ。

 そして、昨日と同じお昼前にドラちゃんに乗ったヘンリーさんたちが王都から帰ってきました。
 またもやドラゴンが来ると周知されたので、屋敷の周りには興奮した子どもたちが集まっていました。
 大きくなったドラちゃんは、これこそドラゴンって感じでとってもカッコいいよね。
 奉仕活動も良いタイミングなので、屋敷に集まって何があったかを話す事になりました。
 今日は、応接室に集まりました。

「爵位関連については早めに手続きをしようということになり、ベストリア伯爵家は一つ降格の子爵家となり嫡男が継いだ。しかし、罰金は納めるが領地はそのままにして将来統治が順調なら伯爵に戻る余地もあるそうだ」
「なるほどね、嫡男の統治能力が優れているから国としては税金を沢山とれる方を選んだというわけね」
「まあ、そういう事だ。伯爵に戻るとしても数十年先だけど、その間にキチンと実績を積めばよい」

 シンシアさんの言い方だと、目の前に伯爵に戻るというニンジンをぶら下げて、頑張って領地統治させるというわけですね。
 でも、僕は嫡男さんはそんなことをしなくても普通に立派な統治をすると思うよ。

「お兄様、炊き出しをしながら町の人の意見を集めました。後ほど報告いたしますわ」
「流石だな。今後も月一回は炊き出しを行って、町の人の意見を集めるとしよう」
「私もその方が良いと思います。できる限り協力いたします」

 さっそく兄妹で色々なことを話しているけど、炊き出しをしながら意見を集めていたなんて凄いですね。
 ヘンリーさんもシンシアさんも、二人のやり取りを見てとても感心していました。
 そして、午後からの奉仕作業には、ドラちゃんだけでなくシンシアさんも参加する事になりました。
 屋敷の捜索も、これで終了するそうです。
 ヘンリーさんも教会に来るけど、スラちゃんはヘンリーさんのボディーガードに徹するそうです。
 近衛騎士もいるんだよねと、思わず苦笑しちゃいました。
 ヘンリーさんは、ベストリア子爵領兵が並んでいる住民から話を聞いているのを興味深そうに見ていました。
 実際に使えるかと、確認をしているのでしょうね。
 治療の手も増えたので、ドンドンと住民を治療していきます。
 こうして、夕方までに並んでいた人は全員治療をすることができました。
 僕たちも、軍の施設に戻ります。

「これでベストリア伯爵家の問題は解決したが、書類の分析の進捗次第では別の領地に行く事もあるだろう。他の領地ではもっと乱戦になる可能性もあるから、充分気を引き締めるように」
「「「はい」」」
「キュー」

 夕食時にヘンリーさんから全員に話があったけど、今回の捜索で沢山の書類を押収したんだって。
 なので、どこかの領地に行くのはほぼ間違いないそうです。
 でも、本音では何事もなく平穏に終わって欲しいなと思っちゃいました。