こうして、僕達は沢山の侍従とドラゴンを治療し、兵も忙しく動いています。
 そして、兵の中でも立派な服を着た人がヘンリーさんのところに挨拶に来ました。

「ヘンリー殿下、交代に参りました。しかし、何とも痛ましいことが起きたものです」
「パンサー子爵、ご苦労。侍従への虐待は禁止されている。しかも、これだけの数だ。これだけの事実だけでも、かなりの罪となるだろう」
「侍従の保護も同時に行います。陛下へも、初期の調査報告をしております」

 きっとこのパンサー子爵って人は、軍の幹部なんですね。
 ヘンリーさんも信頼を置く人らしく、シンシアさんたちもこの人なら大丈夫って行っています。
 僕たちは王城に帰るけど、治療したドラゴンはどうしようか。
 すると、ここにいる全員がビックリする光景が見られました。

「キュー」
「えっと、スラちゃんが大丈夫だといった人なので、ついて行くと言っています」

 ドラゴンはパタパタと飛び上がり、しかも背中にスラちゃんを乗せています。
 完全に、スラちゃんに懐いちゃったみたいです。
 そして、つぶらな瞳で僕の方を見ていました。
 更に、スラちゃんが触手をふりふりしながら訴えています。

「その、スラちゃんが『ドラちゃん』って名前をつけちゃったみたいです。僕の側にいれば安全だと言っています」
「ふふ、確かにナオ君の側にいれば、間違いなく安全ね。流石は、ナオ君のお兄ちゃんだわ」
「とっても可愛らしいドラゴンね。私たちともお友達になりましょう」

 ナンシーさんとエミリーさんも、ドラゴンのドラちゃんを歓迎していました。
 ということで、ドラちゃんはこのまま王城に連れて行くことになりました。
 僕たちは、馬車に乗り込んで王城に向かいました。
 王城の玄関に着くと、二手に分かれることに。

「ナオ君とエミリーは、お祖母様に顔を見せて安心させるといい。会議には、私たちが出て対応する」
「えっ、良いんですか?」
「こういうのは、大人の私たちの仕事だ。ナオ君も魔力の残りは少ないだろうし、ゆっくりと休んだ方が良いだろう」

 ヘンリーさんのありがたいお言葉に甘えることになり、僕とエミリーさんは出迎えてくれた侍従とともに王城の中を進みます。
 因みに侍従はドラちゃんの姿を見てかなり驚いて、スラちゃんが保護したというと更に驚きました。
 そして、シャーロットさんの部屋に案内されると、僕とエミリーさんの顔を見たシャーロットはかなりホッとした表情をしていた。

「「ただいま」」
「お帰りなさい、エミリー、ナオ君。色々と話は聞いていたけど、無事に帰ってきて安心したわ」

 僕とエミリーさんはシャーロットさんが座っている席の向かい側に座り、侍従が入れてくれたお茶を口にします。
 ずっと魔法を使っていて疲れたから、体に染み渡ります。
 エミリーさんも同じみたいで、美味しそうにクッキーを頬張っていました。

「ふふ、そしてあの子が新しくナオ君のお友達になったのね」
「実際にはスラちゃんが保護したんですけど、勇者パーティのメンバーとはもうお友達です」
「とても可愛らしいドラゴンね。つらい体験をしたのだから、思いっきり楽しませないといけないわ」

 僕たちの視線は、部屋のスペースに向けられていました。
 そこには、スラちゃんとドラちゃんと追いかけっこをするアーサーちゃんとエドガーちゃんの姿がありました。

「キュー!」
「「きゃー!」」

 ドラちゃんはアーサーちゃんとエドガーちゃんが全く悪意がないことに気がついていて、スラちゃんが大丈夫だと言ってあって追いかけっこをしているみたいです。
 シアちゃんは、エミリーさんの側で小さく割って貰ったクッキーを食べながら追いかけっこを見つめていました。
 せっかくせまい檻から解放されたんだから、ドラちゃんも思いっきり遊ばないとね。
 そのうちシアちゃんも追いかけっこに加わり、昼食までの間シャーロットさんのお部屋では楽しい声が響いていました。
 シャーロットさんも、とても楽しそうに見つめていました。