「つまりブレアは、男性冒険者がオラクル公爵家に滞在したと聞いて、私がその男性冒険者にたぶらかされたのではと思ったと」
「はい……」
「そして、私と一緒に来た男性冒険者がどう見ても女の子にしか見えなかったと」
「その通りです……」

 五分後、復活した僕はヘンリーさんとシンシアさんと一緒にナンシーさんが正座してしょぼーんとしている男性に腰に手を当てて説教してる様子を眺めていた。
 何があったか、ヘンリーさんとシンシアさんは何となく理解してくれたみたいです。

「ナオ君、弟がすまん。あれがナンシーの婚約者でもあるブレアだ」
「ブレアは、その、心配性なのよ。ナンシーの事が大好きだから、余計に心配したみたいね」

 今までの流れで何となく分かったけど、正座して項垂れている男性がブレアさんなんだ。
 僕に紹介するヘンリーさんとシンシアさんも、思わず苦笑していますね。

「ブレア、ナオ君に謝りなさい。勝手に暴走したばかりか、女の子って言ったんだからね」
「はい……」

 ナンシーさんに滅茶苦茶怒られたブレアさんは、正座をしたまま僕に頭をさげてた。
 あ、あのあの、ブレアさんって第三王子様だよね?

「ナオ、色々誤解して悪かった」
「ぶ、ブレアさん、顔を上げてください。僕はもう大丈夫ですから」

 ブレアさんに土下座に近い形で謝られたので、僕もスラちゃんも逆に慌てちゃいました。
 色々とあったけど、取りあえずこの場は収まりました。
 うん、王城に来ていきなりとっても疲れちゃったよ。

「しかし、ぱっと見は本当に女の子にしか見えんな。髪色といい、顔もどちらかというと女性顔だ」
「あー、うん。この前、村長もナオ君を女の子と間違えていたよね。髪を綺麗に切りそろえたら、余計に可愛くなったわ」

 そして、立ち上がって僕のことをまじまじと見たブレアさんの意見に、ナンシーさんもうんうんと同意していた。
 うう、女の子っぽいって言われるのは、僕の宿命なのかな。
 そんな事を思っていたら、ヘンリーさん達の部屋の更に向こうの部屋のドアの隙間から、小さな金髪の顔が二つこちらをじっとみていた。

「ねー、おわったー?」
「アーサーか、終わったよ」

 ヘンリーさんが小さな男の子に返答すると、更に小さな男の子と手を繋いでよちよちと歩いてきた。
 何だか、とっても微笑ましい光景ですね。
 すると、男の子たちは僕のところまでやってくると、ぽすっと抱きついてきた。

「にへー」
「あうー」

 反射的に男の子たちの頭を撫でちゃったけど、二人ともニコリとしながら僕を見上げていた。
 何だか、セードルフちゃんと同じ感じでとっても可愛いね。

「ナオ君、この子は兄上の息子のアーサーとエドガーだ」
「あっ、だから二人とも綺麗な金髪だったんですね」
「王家は金髪が生まれやすいらしいからね。でも、いきなり二人が気に入るとは、やっぱりナオ君らしいね」

 ヘンリーさんがニコリとしながら答えてくれたけど、アーサーちゃんもエドガーちゃんもニコニコしているから全然気にしていないんだけどね。
 さっそく挨拶をしないと。

「アーサーちゃん、エドガーちゃん、僕はナオです。このスライムは、スラちゃんです」
「アーサーだよ! エドちゃんなの」
「あー」

 アーサーちゃんとエドガーちゃんに挨拶をすると、二人とも笑顔で更にぎゅっと抱きついてきました。
 僕も、改めて二人の頭を撫でてあげました。
 すると、二人の両親も笑顔で近づいてきました。

「いきなり二人に抱きつかれるとは、ナオはやるなあ」
「そうね、息子たちは気に入った人じゃないと抱きつかないのよ」
「あっ、おとーさまとおかーさま!」
「あー!」

 アーサーちゃんとエドガーちゃんは、僕から両親のところにトコトコと歩いていきました。
 ふふ、ここでも仲良く手を繋いでいますね。

「ナオ君、兄上のジョージと妻のマリアだ」

 またもやヘンリーさんが二人の事を説明してくれるけど、とっても優しそうなお二人ですね。
 ジョージさんはやっぱり金髪を短く切りそろえていて、背も高くスラッとしていてザ王子様って感じです。
 マリアさんも、紫色のボブカットでとても優しそうな笑顔を見せていて、お胸がとっても大きいです。

「初めまして、ナオです。このスライムは、スラちゃんです」
「ジョージだ。弟と妹が世話になっている」
「マリアよ。とても可愛らしい男の子ね。息子と仲良くしてあげてね」

 ジョージさんもマリアさんも、にこやかに握手をしてくれました。
 スラちゃんとも握手をしてくれたし、本当に良い人ですね。
 すると、ジョージさんが僕に話しかけてきました。

「ナオ、頼みがある。午前中マリアと子どもたちが軍の病院に行くのだが、一緒について行って欲しい。ヘンリーたちは仕事があるし、ブレアたちもそうだ。エミリーは勉強中だ。勇者パーティとして、護衛任務だ」
「あの、怪我人の治療はしなくて良いんですか?」
「無理のない範囲で行うなら構わない。だが、くれぐれも無理だけはしないでくれよ」

 他の人はみんな仕事や勉強があるから、ここは僕も頑張らないと。
 僕だけでなく、スラちゃんもふんすって気合を入れたよ。

「アーサーも頑張る!」
「あー!」
「ふふ、息子たちもやる気になっておりますわね」

 僕につられてアーサーちゃんとエドガーちゃんも元気よく手を挙げていて、マリアさんは微笑ましく見ていました。
 みんな出かける準備をするそうなので、ちょっと待つことになりました。