目を覚ますとそこには真っ白な天井があった。

あの世? いや、違う。

周りを見てみると、僕は点滴に繋がれていることに気が付いた。

ここは…病院か?

すると、扉が開き、看護師さんが入ってくる。

「先生! 鬼塚君が目を覚ましました!」

俺の目が覚めていることに気づいた途端、看護師さんがあわただしく動き出す。

その後、先生が入ってきて、僕にけがの状態について質問をする。

先生が診察を始めてから二~三分後、母さんがあわただしく病室に入ってくる。

「尊っ! あんたはっ! っ――」

涙を流しながら母さんが僕に話しかけてくる。

その表情は、切羽詰まっていて、泣きそうな、うれしそうな、いろんな感情がごちゃ混ぜになったような顔をしていた。

その様子を僕はボーっと眺める。

そんな僕の様子を見て、先生が何かを感じ取ったようで、顔を引き締める。

「鬼塚さん。ちょっとよろしいでしょうか」

先生が母さんを連れて病室を出て行った。

看護師たちも僕の点滴を交換したりした後、病室を出て行った。

見てみると、僕のけがは軽傷だったようで、首が少し荒れているだけだった。

その後、先生に聞いた話によると、僕のけがは軽傷だったが、なかなか意識が戻らず、三日ほど寝込んでいたらしい。

あと一歩発見が遅れていれば危なかったらしい。

あと一歩で死ねたのに。

僕を見つけたのは、一人の女の子だったらしい。

僕を見つけ、すぐにロープからはずし、救急車を呼んだようだ。

どこの誰だか知らないが、ずいぶん余計なことをしてくれた。

僕は死ぬことも許されなのだろうか。

念のため、一日だけ入院して、問題がなければ明日退院できるらしい。

先生からの話を終えて、帰ってきた母さんに、とても怒られた。
そして、心配された。

「頼むから、何か相談して」と、何度も言われた。

ただ、僕の心には何も響かなかった。

別に母さんに何かしてもらおうなんて初めから思っていなかった。

母さんに相談して何とかなるならはじめからそうしていた。

母さんはひとしきり僕に話した後、母さんのパートの時間近づいたため、帰っていった。

誰もいなくなった病室で一人息を吐く。

病室は殺風景過ぎて、落ち着かない。

気分転換に外にでも出てみようか。

たしかこの病院には中庭があったはず。

僕は点滴スタンドを持ちながら病院の中庭を目指して歩みを進める。