そのまま、誰もいなくなった公園で一人、うずくまる。

いつもは聞こえる街の喧騒がやけに静かに思えた。

まるで世界から僕だけ切り離されたように感じた。

さっきの暴力の痛みで視界が歪む。

いや、この歪みは涙のせいか。

そのまま、痛みが引いた後も僕は起き上がらないでいた。


神様は、人は、なぜ、僕を傷つけるのだろうか。

どれだけ、僕を痛めつければ、絶望の淵に叩き落せば、満足するのだろうか。

どうして僕は何も持って生まれてこれなかったのだろうか。

みんな、一人一つは人に誇れる何かを持っている。

弟は、頭がいい。
天照さんは明るく、人気者。

じゃあ、僕は?

何を持って生まれて来れたのだろう。

僕は、アスペルガーで社会不安症、コミュ障で、根暗で、頭も運動神経も悪くて…。

僕についてと言われたら欠点しか出てこない。

こんな僕がこの世界に居る理由なんてない。

俺は多分、神様の手違いで生まれたんだろう。

本来ならば存在するはずなかったんだ。

だから僕はこの世界とさよならがしたい。

このまま生きても他人に迷惑をかけてばっかのゴミだ。

僕は、極力、人に迷惑をかけないで生きていたいんだ。

人に迷惑しかかけることができない僕だから、死ぬ時くらいは誰にも迷惑をかけたくない。

消えたい。
消えたら迷惑がかかる。

そのはざまにいるから、今こうして現世に僕が存在している。

さっきも、学校の屋上から飛び降りたらたくさんの人に迷惑がかかるから、行動には起こさなかっただけ。

けど……ふと頭にこんな考えが浮かんだ。

『僕がこれからかける迷惑と、自殺することでかかる迷惑はどちらのほうが多いのだろう。』


――ああ、そうだ。

なんで、今まで気づかなかったんだろう。

これからかける迷惑の方が圧倒的に多いじゃないか。

どうせみんな僕のことなんてすぐに忘れる。
母さんや弟も。

僕は鞄からロープを取り出す。

いつも、自殺用にロープを持ち歩いててよかった。

僕はゆっくりと立ち上がり、公園の一本の木にくくりつける。

もう、感情は抜け落ちた。

僕の目からはなぜか分からないけれど透明な涙が流れた。

もう何も思わないはずなのに…。
自傷気味に微笑んだ。

そして…ロープに首を掛けた。


さよなら――。