リリリリリ!

目覚ましがけたたましく鳴る。
けれど、意識はまだまどろみの中にいるため、その音に気づかず二度寝に入る。
その後、目覚ましが諦めたかのように沈黙する。

すると今度は、母さんの大声が響き始めた。
(たける)! 起きなさーい!」

その大声に顔をしかめてのっそりと起き上がることから僕の一日は始まる。

その後ものろのろと準備をしていたらまた、声がかかったので、僕は、わざと乱暴に「わかってる!」と返事してリビングに向かう。

「わかってるならちゃっちゃと準備をしなさい!まったく。優斗(ゆうと)を見習いなさい。自分で起きて朝ごはんの準備をしてるのよ。はぁ、兄弟なのにどうしてあんたはこんなに出来が悪いのかしら」

お茶碗にご飯をよそいながら母さんが独り言のように言う。

朝からネチネチとうるさいなぁ。

そもそも、僕が起きてこなかったのと弟は関係ないだろ。

そんな感情を悟られないように、務めて真顔で食卓につき、もくもくと食事をする。

「へっ、兄ちゃん、怒られてやーんの」

3歳下で現在中学2年の優斗が急にマウントを取り始めた。

「うるさい。お前には関係ないだろ」

「ぷぷぷぷ。だっさ!」

そんな優斗の行動がうざったらしく、僕は朝食の半分も食べずに席を立つ。

「ごちそうさま」

僕の皿を目ざとく母さんが見つけて、また小言を飛ばしてくる。

「こら、尊! 食べきってからごちそうさましなさい!」

そんな言葉を無視して自分の部屋に入る。

これ以上ちんたらしていたらまた、母さんから小言が飛ぶと判断した僕は、早急に準備をして家を出る。