明日が晴れますように。

「鬼塚君、大丈夫?」

声のした方を見ると、天照さんがしゃがみ込み、机の下から僕を見上げていた。

「うわぁ!」

思わず、大きな声が出てしまった。

僕は、椅子に座ったまま、後退する。

「あ、驚かしちゃった? ごめんね。」

申し訳なさそうな顔を彼女はする。

「平気ですので…」

僕は、早く天照さんから離れたくて素早く答える。

『お呼出し番号、百二十二番。百二十二番。受付までいらっしゃってください』

館内放送が図書室にかかる。

「あ、私だ」

どうやら呼び出されたのは天照さんのようだ。

「じゃあ、また学校でね!」

天照さんはそう言い残し足早に図書室から出て行ってしまった。

天照さんがいなくなった図書室でしばらく動けないでいた――。






翌日、病院を退院した僕は母さんと一緒に家に帰った。

家では優斗が待っていた。

いつもは部屋に籠っているか遊びに行っている時間帯なのにその日は珍しくリビングに座っていた。

電気もつけず、優斗は座っていた。
僕たちが帰ってきたことに気が付くと一目散にこちらに向かってきた。

「兄ちゃんっ!」

いつもはすました態度の優斗が、目に涙をたくさんためて、昨日の母さんと同じようなたくさんの感情が入り交ざった表情をしていた。

たくさんの文句を言われた。

優斗は涙を拭うことなく、ひたすら僕に向かって話しかけていた。

なんで泣いているんだ?

僕が死んでも母さんにも優斗にも関係がないはずだ。

むしろ、じゃまな人間が一人へってうれしいはず。

僕がいないほうが物事がうまく回るのに…。

なんで僕に涙を流すんだ。

なんで僕を心配するんだ。

まったく理由がわからない。
「…ありがとう。迷惑かけてごめん。僕はもう寝るね」

優斗の話を遮り、自室に向かう階段を上った。

優斗や母さんが小さな声で僕の名前を呼ぶのが聞こえたが聞こえないふりをした。

自室に入り、扉を閉める。

荷物を床に放り投げ、僕は身一つでベットに倒れこむ。

一階からは母さんと優斗の話し声がする。

よくは聞こえないが節々で「尊が…」「病院」など僕に関係することを話して
いるので、おそらく、僕に対する文句などを言っているのだろう。

――やっぱり僕はいらないな。