教室の窓から風に吹かれて桜の花びらが入ってくる。

春が来る。

それは、僕にとっては憂鬱なことでしかなかった。

春が嫌いな理由は色々とあるが、一番嫌なのは、春は出会いと別れの季節ということだ。

桜を見るたびに心がギュッと締め付けられる。

君との出会いは、春だったから。

校庭には何本もの桜の木が植えられている。

そのうちの一つ、校舎の裏側、人気のない場所にひっそりとたたずむ桜の木がある。
その、桜の木の下で何もかも正反対な君と僕は一つの約束を交わした。

これもなにかの巡り合わせだろうか。

本来、僕と君は一生交わることがないかけ離れた、平行な線だった。

けれど、神様のいたずらで俺たちは、交わった。

ほんの一瞬、君と僕の世界が一つになった。

君と過ごした時間はどの記憶よりも鮮明で色鮮やかに思い出すことができる。

まるで昨日のことのように。

そんな、神様が起こしてくれた君という名の奇跡について僕は思い出す――。