デートでは予定してた映画は勿論、ショッピングやお祭りにも行って、充実した一日だった。丸一日遊び疲れて、お互いヘロヘロになりながら《バイバイ》と言って解散した。僕が帰路について2分ぐらいが経った頃だろうか。ピコンと通知がなった。君からだ。

『友樹くんのおサイフがさ。』

『私のお土産の中に入っているの。』

『取りに来れたりする?』

『分かった、じゃあさっき解散したところで。』

『いやそうじゃなくて、私家に着いたから、〇〇マンションの屋上に来てくれる?』

『分かった。』

 また君に会えることが嬉しくて。小走りで君のマンションに向かった。

 息が上がってもなお、走った。最初は小走りだったのにいつの間にか、走っていた。屋上にはすでに君がいて、いつも高い位置で結んでいる髪を解いていたので天使と見間違える程美しかった。

「ともくん走ってきてくれたんだね。」

「うん。」

君は何も持っていなかった。

「ねぇ。ともくん。」

「なに?」

「今日は、楽しかった。」

「僕も楽しかった。」

「今日は終戦記念日だね。」

「ああそうだね。」

「だから、私の戦いも終わりにしようと思うの。」

「ええっと、つまりそれはどういうこと?」

 君は、嬉々とした顔で言った。

「もぉ、ともくん分かってるくせに。私、死ぬのよ。今から。」

 思考が追いつかなかった。

「だめだよ、そんなの。樹里ちゃんが死んだら僕どうしたらいいの?」

「そうねぇ。でもそれは、私の知ったことじゃないよ。」

「だめだよ。だめ。絶対だめ。」

「私の自殺を止めようとするのは、私のためじゃないでしょう。ともくん。あくまでも自分のためでしょう。」

___何も言えなかった。図星だったから。同時に思った。そういう考え方をする君は生きづらいと。この世にいるべき考え方ではないと。そう思ってしまった。

「さよなら。」

数秒後、ドスンと鈍い音がした。