「やっぱりゴブリンの魔石だからな。一般の素材買取所じゃ買い取ってくれないこともあるかもしれない」
 
 魔石の中でゴブリンの魔石は最低品質である。
 素材買取所では買い取ってくれないところもあるのだ。
 
 覚醒者協会の買取りなら金額は低いけどゴブリンの魔石も確実に買い取ってくれる。
 だから覚醒者協会の方に売りに行くのだ。
 
 それなりの数は倒したから晩ご飯代ぐらいにはなる。
 先に売り払ってお金の足しにしてしまおうと考えたのだ。

「血は少し我慢してくれ」
 
 マサキが運転するレンタカーに乗り込んで覚醒者協会に行く。
 そこで魔石を売り払っていくらかもらい、一度家に帰った後レンタカーを返してスーパー銭湯に行く。

 体を清めてのんびりお湯に浸かり、そこでご飯も食べると本日の収支はもうマイナスである。

「なんだか世知辛いですね……」

 もらった金額は知っていたから分かるけど、スーパー銭湯に行ってご飯を食べただけで一日の努力が吹き飛ぶのは少し物悲しさがある。
 これならアルバイトでもした方が儲かる。

「もっと高クラスのゲートに挑めるようになればスーパー銭湯ぐらい毎日来ても大丈夫になるよ」

 いくらか足しになるだけ良いだろうとマサキは笑う。
 初心者用のゴブリンゲートダンジョンは覚醒者が稼ぐためではなく練習用に残しているようなものである。

 そこで稼ごうだなんて思うのが間違いなのだ。
 稼ぎがなくとも仕方ない。
 
 ご飯を食べたあとはレイの家にお邪魔する。

「変なことしないでくださいね」

「しないよ」

 そしてレイのパソコンを貸してもらって動画の編集作業に取り掛かる。

『レイレイ……です』

「うわああああっ! 恥ずかしいです!」

 仮面をしているとはいえ、自分がレイレイだなんて言いながら画面に映っているのを見てレイは顔を赤くする。

「う、うわー……」

 動画の中ではレイが剣を振るってゴブリンを倒している。
 素人撮影にしてはなかなか良いんじゃないかと圭も思うしレイも意外な自分の姿に声を漏らす。

『ええと、今日はご視聴ありがとうございました。よかったらチャンネル登録お願いします。れ、レイレイでした〜』

「うん、いいな」

「よくないですよぅ……」

 飛ばし飛ばし最後まで動画を確認した。
 流石にプロの撮影には敵わないがむしろリアル感が出ている。

「しかしもう遅いな」

 結構長い時間回していた動画なので飛ばしながら見ていても最後までにかなり時間がかかってしまった。
 始めた時間も遅かったのでもう深夜になっている。

「作業は明日に……」

「と、泊まっていけばいいじゃない……ですか?」

 いつもマサキは自分の家に帰る。
 そりゃ当然の話で女の子の家に居座るなんてマネはしない。

 しかし今日はもう時間も遅いということでレイは少し照れたような顔をしてマサキに泊まるように提案した。
 覚醒者なので暴漢に襲われる心配は少ないけれど危なくないとは言えない。

「さ、作業も時間かかりそうですし今日はもう着替えたばかりですし……その」

 言えば言うほど泊まっていってほしいみたいになって恥ずかしくなる。

「じゃあ泊まらせてもらおうかな?」

 マサキもレイもいい年齢だ。
 家に泊まったところで文句を言う人もいない。

 マサキはレイの家に泊めさせてもらうことにして編集作業を続けることにした。
 もちろん真面目に編集作業をする。

 もうレイと相談しながら少し作業を進めてマサキはレイの部屋に泊まった。
 レイはまだ大学に所属しているので授業がある。

 なんとなく朝起きてレイを送っていってマサキは1人パソコンを借りたままにして作業を続けた。

「ここは削って……ここは生かすか? うーん、上手く繋げられない」

 編集作業も久しぶりだし慣れないパソコン、慣れないソフト、動画も撮影が未熟でかなり作業としては難しい。

「世の中動画あげてる連中ってすげぇな……」

 結局一日では終わらず何回かレイの家に通ってパソコンを貸してもらって動画を編集させてもらった。
 装備も必要だが編集用のパソコンも必要だなとマサキは思った。