魔法の契約書によって借金を返すまでポムはイースラの命令を聞かねばならなくなった。
しかし命令を聞かせられるといってもポムの能力以上のことはできない。
いきなりポムが変わりすぎても疑問に思われてしまうので基本的にはいつも通り過ごしてもらうことにした。
「良い感じだ……」
だけども利用できるところではポムを利用する。
朝の掃除をポムにやらせてその時間でアルジャイード式で魔力を運用することにした。
魔力の量や使い方は後々重要になっていく。
受け入れる土台の柔らかい子供のうちに魔力を鍛えておけば将来できることの幅は広がる。
サシャもクラインもかなり体の中で魔力を動かすことに慣れてきている。
やはり未来において優秀な魔法使いになるサシャの方が魔力が多くて扱いが上手い。
ただクラインも筋は悪くなかった。
「……もし生きていたらオーラユーザーになっていたのかもしれないな」
なんの教えもなく魔力を扱えるようになるのは稀な例でありオーラユーザーになることは難しい。
しかし一度オーラユーザーとなって色々と知っているイースラと違って何も知らないのによくやっている。
「はーい」
部屋のドアが控えめにノックされた。
「あの……掃除終わりました……」
ポムの声だった。
言いつけてあった朝の掃除が終わったらしい。
「二人とも終わりだ」
「うん」
「分かった」
イースラが声をかけるとサシャとクラインは魔力運用をやめる。
アルジャイード式で魔力運用をすると気分が良くなるのでサシャは好きだった。
終わってしまうのがもったいないと思うほどである。
「お疲れ様」
「いえ……」
イースラがドアを開けるとホウキとバケツを持ったポムが立っていた。
上下関係を教えた日からポムはすっかりしおらしくなった。
魔法による契約もあるしジワラたちをイースラは一人倒してしまったのだ。
とてもじゃないがポムが太刀打ちできる相手ではなかった。
さらに最近イースラに対するベロンの態度が柔らかくなったことも感じている。
逆らえるような要素がない。
「俺たちは朝食の準備をするからあとは自由にしてて大丈夫だぞ」
「分かりました」
食事係は大事な仕事なのでポムにやらせるつもりはない。
イースラたちは台所に向かう。
「これはチャンスだ。挑戦してみるべきだ」
「でもダンジョンなんてクリアできるのかしら?」
「……なんか騒がしいな」
下の階に降りてくるとリビングスペースにギルドのみんなが集まっていた。
いつもならいない人がいたり朝食ができるギリギリに起きてくるのに珍しいなとクラインは思った。
「もうそんな時期か……」
どうやら何かを話し合っているようで、イースラはみんなの様子を見て誰にも聞こえないように一人呟いた。
ーーーーー
イースラはクラインがどうなるのか知らない。
なぜならクラインはどうなるのか分かる前に死んでしまったから。
回帰前でもイースラたち三人はスダッティランギルドに引き取られた。
希望もないような環境の中で日々必死に生きていた。
そんな時にクラインは死んだのだ。
まだ子供だった。
無限の可能性を秘めていたのになんの明るい未来も見ることはなくクラインはイースラとサシャのところから旅立ったのである。
その原因はダンジョンだった。
もちろん要素としてギルドの力が足りないとか計画が甘かったとか、運も悪かったということはある。
だがダンジョンがクラインの命を奪ったのだ。
「スダッティランギルドは新しく発生したダンジョンの攻略を行う」
夕食後リビングスペースにみんなが集められた。
そこでベロンは今後の方針を伝えた。
町の近くに新しくダンジョンが出来た。
その攻略をするとベロンは言うのである。
時が来たとイースラは思った。
クラインの命を飲み込み、奪って行ったダンジョンを攻略する時が再び訪れたのだ。
今回は攻略しないという可能性もあると思っていたがやはりベロンはダンジョンに挑むようである。
「今回はイースラたち三人も連れていく」
「なっ……それはまだ危ないのでは?」
ベロンの言葉に驚いたデムソが驚いて立ち上がる。
イースラたちは連れていかないだろうと思っていたのにベロンはなんの躊躇いもなく連れていくつもりであった。
「危険は重々承知だ。しかし今回は連れていく」
「なんで……」
「不安は分かるが三人にはサポートに徹してもらう」
「…………」
デムソは他の人を見る。
文句を言いそうなポムはもちろんイースラの支配下にあるので文句など言えない。
バルデダルは興味なさそうにお茶を飲んでいるしスダーヌは肩をすくめている。
「三人は納得してるのか?」
「イースラたちもそれでいいな?」
「俺たちも邪魔にならないように頑張ります」
分かっていたかのようにイースラが頷いてデムソは顔をしかめる。
実はこの話は事前にイースラは知っていたものだった。
回帰前にダンジョンを攻略する時もイースラたち三人は連れていかれた。
今と同じくサポートという名目で、長引くこともあるダンジョン攻略のために荷物持ちとして後ろからついていっていた。
その時はデムソも特にイースラたちがいくことに反対はしなかったのだが、今回はイースラたちが真面目に働くので少しは気にかけてくれているようだ。
しかし命令を聞かせられるといってもポムの能力以上のことはできない。
いきなりポムが変わりすぎても疑問に思われてしまうので基本的にはいつも通り過ごしてもらうことにした。
「良い感じだ……」
だけども利用できるところではポムを利用する。
朝の掃除をポムにやらせてその時間でアルジャイード式で魔力を運用することにした。
魔力の量や使い方は後々重要になっていく。
受け入れる土台の柔らかい子供のうちに魔力を鍛えておけば将来できることの幅は広がる。
サシャもクラインもかなり体の中で魔力を動かすことに慣れてきている。
やはり未来において優秀な魔法使いになるサシャの方が魔力が多くて扱いが上手い。
ただクラインも筋は悪くなかった。
「……もし生きていたらオーラユーザーになっていたのかもしれないな」
なんの教えもなく魔力を扱えるようになるのは稀な例でありオーラユーザーになることは難しい。
しかし一度オーラユーザーとなって色々と知っているイースラと違って何も知らないのによくやっている。
「はーい」
部屋のドアが控えめにノックされた。
「あの……掃除終わりました……」
ポムの声だった。
言いつけてあった朝の掃除が終わったらしい。
「二人とも終わりだ」
「うん」
「分かった」
イースラが声をかけるとサシャとクラインは魔力運用をやめる。
アルジャイード式で魔力運用をすると気分が良くなるのでサシャは好きだった。
終わってしまうのがもったいないと思うほどである。
「お疲れ様」
「いえ……」
イースラがドアを開けるとホウキとバケツを持ったポムが立っていた。
上下関係を教えた日からポムはすっかりしおらしくなった。
魔法による契約もあるしジワラたちをイースラは一人倒してしまったのだ。
とてもじゃないがポムが太刀打ちできる相手ではなかった。
さらに最近イースラに対するベロンの態度が柔らかくなったことも感じている。
逆らえるような要素がない。
「俺たちは朝食の準備をするからあとは自由にしてて大丈夫だぞ」
「分かりました」
食事係は大事な仕事なのでポムにやらせるつもりはない。
イースラたちは台所に向かう。
「これはチャンスだ。挑戦してみるべきだ」
「でもダンジョンなんてクリアできるのかしら?」
「……なんか騒がしいな」
下の階に降りてくるとリビングスペースにギルドのみんなが集まっていた。
いつもならいない人がいたり朝食ができるギリギリに起きてくるのに珍しいなとクラインは思った。
「もうそんな時期か……」
どうやら何かを話し合っているようで、イースラはみんなの様子を見て誰にも聞こえないように一人呟いた。
ーーーーー
イースラはクラインがどうなるのか知らない。
なぜならクラインはどうなるのか分かる前に死んでしまったから。
回帰前でもイースラたち三人はスダッティランギルドに引き取られた。
希望もないような環境の中で日々必死に生きていた。
そんな時にクラインは死んだのだ。
まだ子供だった。
無限の可能性を秘めていたのになんの明るい未来も見ることはなくクラインはイースラとサシャのところから旅立ったのである。
その原因はダンジョンだった。
もちろん要素としてギルドの力が足りないとか計画が甘かったとか、運も悪かったということはある。
だがダンジョンがクラインの命を奪ったのだ。
「スダッティランギルドは新しく発生したダンジョンの攻略を行う」
夕食後リビングスペースにみんなが集められた。
そこでベロンは今後の方針を伝えた。
町の近くに新しくダンジョンが出来た。
その攻略をするとベロンは言うのである。
時が来たとイースラは思った。
クラインの命を飲み込み、奪って行ったダンジョンを攻略する時が再び訪れたのだ。
今回は攻略しないという可能性もあると思っていたがやはりベロンはダンジョンに挑むようである。
「今回はイースラたち三人も連れていく」
「なっ……それはまだ危ないのでは?」
ベロンの言葉に驚いたデムソが驚いて立ち上がる。
イースラたちは連れていかないだろうと思っていたのにベロンはなんの躊躇いもなく連れていくつもりであった。
「危険は重々承知だ。しかし今回は連れていく」
「なんで……」
「不安は分かるが三人にはサポートに徹してもらう」
「…………」
デムソは他の人を見る。
文句を言いそうなポムはもちろんイースラの支配下にあるので文句など言えない。
バルデダルは興味なさそうにお茶を飲んでいるしスダーヌは肩をすくめている。
「三人は納得してるのか?」
「イースラたちもそれでいいな?」
「俺たちも邪魔にならないように頑張ります」
分かっていたかのようにイースラが頷いてデムソは顔をしかめる。
実はこの話は事前にイースラは知っていたものだった。
回帰前にダンジョンを攻略する時もイースラたち三人は連れていかれた。
今と同じくサポートという名目で、長引くこともあるダンジョン攻略のために荷物持ちとして後ろからついていっていた。
その時はデムソも特にイースラたちがいくことに反対はしなかったのだが、今回はイースラたちが真面目に働くので少しは気にかけてくれているようだ。


