「そう簡単にはいかないんだよ。ステータスはポイントで買えるけど買えば買うほど高くなってくんだ」

「高くなってく?」

「そうなんだよ。だから買い放題ってわけじゃない」

 配信ショップで買えるものは需要と供給によって値段が変わる。
 表示される値段はどの人でも一緒でたくさん買えば需要と供給の関係から少し値段が上がったりするけれど、基本的に値段の変動は少ない。

 その一方でステータスの値段は個人で異なっていて、さらに買えば買うほど劇的に上がっていく。
 ある程度ステータスを買ってあげてしまうともう手が届かなくなるので実質的には買い放題なんて買えることはないのだ。

「今はまだステータス買うなよ?」

「え、そうなのか?」

「今はまだ鍛えればステータスは上がる。でもそのうち頭打ちになる。その時に必要に応じてステータスを買って上げるんだ」

 今から買ってステータスを上げてしまうと限界が早く訪れてしまい、値段が上がったステータスも買えなくなってしまう。
 どうしても必要なら買うこともあるだろうけど今はまだステータスの購入に手を出すべきではない。

「だからポイントは取っとけ。そうだな……半分ぐらいは貯金だな。あとは好きに使え」

「分かった」

「ポイントの使い方で、買うっていうか……そんなのももう一個あるんだけどそれも教えておこうか。ついでに買い物もしてこよう」

 ーーーーー

「冒険者ギルド? ここで何すんだ?」

 備蓄はできてきたけど生物は溜めておけない。
 だから割と高い頻度で買い物にはいくのだ。

 ただ今日は買い物の前に冒険者ギルドにやってきた。
 ベロンなんかは依頼を受けるのに冒険者ギルドにやってくるけれどイースラ達にとってはまだ少し縁遠いところである。

 酒場を併設している冒険者ギルドの中は昼間なのにわずかにお酒の匂いがする。

「相変わらず変なの……」

 受付の方に視線を向けると白いローブに奇妙な仮面の人が身じろぎもせずにただ座っている。
 隣に座る冒険者ギルドの受付嬢もまるで置物であるかのように白いローブの配信者受付のことを気にしていない。

「あ、おい!」

 ここで何をするんだと思っているとイースラが配信者受付の方に歩いていく。

「何か御用ですか?」

 近づくイースラの方に顔を向けることもなく配信者受付が声をかける。

「ポイントを換金したい」

「どちらの貨幣で、何ポイントですか?」

「ソーダュシュ貨幣で1000ポイント」

「銅貨三枚で963ポイントになります」

「じゃあそれでお願いします」

 イースラはサラサラと話を進めていくけれどサシャとクラインにはイースラが何をしようとしているのかわからない。
 配信者受付が白い手袋をつけた手を空中で動かす。

 配信画面を操作しているように見えた。

「それではこちらを」

 配信者受付は受付の下から小袋を出して中から硬貨を三枚イースラの前に並べた。

「ありがとうございます」

「またぜひお越しください」

 イースラは硬貨を受け取るとニッコリと笑顔を浮かべて受付から離れる。

「何をしてたの?」

「お金を交換してもらったんだ」

 イースラは硬貨を見せる。

「ポイントを使ってお金を買う……こうして交換してもらえるんだ。どの国のどんなお金でも交換できる代わりにこうして直接受付に行かなきゃいけないんだよ」

 配信者受付ではポイントを換金することができる。
 換金だけは少し特殊で実際の受付に行かねばならないという変なルールがある。

 その一方で物やお金をポイントに変換することもできて、これは受付に行かなくてもできた。
 ともかく謎なルールなのである。

「とりあえずポイントで出来ることはこんぐらいだ」

 回帰前はこんなことも教えてもらえなかった。
 もしかしたらスダッティランギルドのみんなもちゃんと把握していない可能性すらある。

「色々なものがポイントで買えてステータスも買える。そしてお金だけはギルドに来なきゃいけない」

「その通りだ」

「そんでポイントは半分は取っとくって話だな」

「よくできました」

 サシャとクラインで教えた内容を軽く復唱する。
 難しい内容でもないので二人ともすぐに理解してくれた。

「んじゃついでに用事済ませて……買い物行くぞ」