ここは主催者用観覧席。
 あれからドラバルトはここにくる。そして部屋に入るなり、自分を攻撃してくる者を倒していった。その後、血を流し床に倒れているマルバルトへと駆け寄る。

 「……フゥー、よかった生きてる。だが……これは、どういう事なんだ?」

 そう言いドラバルトは、持っていた回復薬をマルバルトに飲ませた。
 するとマルバルトは、徐々に瞼を開いていく。

 「ウッ……う、うん。……ドラバルト、か」
 「いったい何があったのです!」

 ドラバルトはそう言い、マルバルトを心配する。

 「すまん……まさか部下の中に、女神崇拝派の者が居るとは思わなかった。それも……一人ではない」
 「なぜ父上を狙う必要が……」
 「ドラバルトを裏切るように言われたのだ」

 マルバルトはそう言い無作為に一点をみつめた。

 「もしかして、それを断ったのですか?」
 「勿論だ。自分の子供を裏切る訳がないだろ!」
 「そのせいで父上は……」

 そう言うとドラバルトは、苦痛の表情を浮かべる。

 「ドラバルト、そんな顔をするな……お前らしくないぞ」
 「そうだな。それで、父上を狙った女神推進派の者たちは?」
 「もしかしったら、ミスズの所に向かったかもしれん」

 それを聞きドラバルトは、マルバルトをみた。

 「やはりそうか……父上、申し訳ないが……俺はミスズの下に向かう」
 「ああ、私は大丈夫だ。早く行けっ!」

 そう言われドラバルトは、頷き駆けだす。そして部屋を出ると、美鈴の下へ急ぎ向かった。
 それを確認するとマルバルトは、ゆっくりと立ち上がる。その後、部屋の中を見渡した。

 (ドラバルトがやったのか? 数名の者が倒れている。見た限り……死んでいない。なるほど……里を出て、かなり成長したようだな)

 そう思いながらマルバルトは、目を細め笑みを浮かべる。そのあと、ゆっくりと歩き出し部屋の片づけを始めた。

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 ここは美鈴とミィレインが居る特別観覧席。
 美鈴とミィレインは、あれからずっとモドルグと話をしている。

 「何度も言うけどね。ウチは女神崇拝派や魔王崇拝派の、どっちにもつく気なんかないから」
 「それは困ります。ミスズ様がスイクラム様を嫌いなのは分かりました。ですが貴女には……勇者として……いいえ、女性ですので聖女ですね」
 「あーえっと、ねぇ。勇者の次は、聖女? どんなに良い言葉を並べても、ウチはその気にはならないよ」

 そう言い美鈴は、モドルグを睨んだ。

 「ああ……ここまで頑固な女性をみたことがない」

 モドルグはそう言い、美鈴の手をとる。そして、ウットリしながら美鈴をみた。
 そこにファルスが部屋の中に入ってくる。と同時に、今ある光景をみて目が点になる。
 そうモドルグが美鈴の手にキスをしていたからだ。
 因みに美鈴は、いきなりのことで困惑していた。勿論、顔は真っ赤である。

 「ハッ、これはいったいどうなっている?」

 その声を聞き美鈴とミィレインとモドルグは、ファルスの方をみる。

 「これは……ミスズ様のお仲間ですね。確か……ファルスでしたか」
 「ああ、そうだが……ミスズをどうするつもりだ?」
 「どうもしませんよ。ただ、ここまで芯の強い女性にはあったことがありません。そのためかは分かりませんが、好きになってしまったかもしれない」

 それを聞き美鈴は、更に困惑する。そう美鈴は、今でもエリュードが好きだ。
 だが先程マルバルトに、ドラバルトは美鈴のことを好きかもしれないと言われた。
 そして今、モドルグの口から好きになってしまったかもしれないと言われる。
 それらが美鈴の頭をグルグルと駆け巡り、どうしたらいいのか分からなくなっていた。

 一方ファルスはそれを聞き、なぜか今までにない感情を抱いていることに気づく。

 (なんだ……この怒りにも似た感情は……)

 そう思いファルスは、無意識にモドルグを睨んでいた。