ここは試合会場。
 開始の合図のあとファルスは、ガブルディグと対峙していた。
 お互い攻撃するタイミングを伺っている。

 (……とりあえずは、力を抑えてある。これなら、気絶程度ですむだろう)

 そう思いながらファルスは、どこから攻めるか考えていた。

 (なんなんだ……隙がねぇ。どこから攻めりゃいいってんだよ……バケモンか、コイツ)

 そう考えガブルディグは、ファルスの隙を探る。

 (ほう……思ったよりも、攻めてこない。時間が勿体ないな……そうなると、コッチから動くか)

 そう思いファルスは、ガブルディグへと突進した。

 「動きが雑だっ!」

 そう言い放つとガブルディグは、素早く右に動きファルスを掴もうとする。
 するとファルスは、ガブルディグの視界から消えた。
 そうファルスは、即座に上にジャンプしていたのである。それと同時に、空中で逆さになりガブルディグの両腕を掴んだ。
 その後、両腕を掴んだまま地面に着地する。

 ――グギッ!!――

 何かが折れたような音が微かに響いた。

 「うがあぁぁあああー……」

 そう叫ぶ声が辺りに響き渡る。そうガブルディグは、肩の付け根から見事に腕が折れてしまったのだ。
 そして両腕は、後ろに反っている。それだけではなく、地面に倒れ動けなくなっていた。
 それをみた審判は、ファルスが勝ったことを告げる。
 それを聞きファルスは、入場口へと歩き出した。

 (フゥー……手加減した方がよかったのか? もう少し楽しみたかったが……)

 そう思いながらその場をあとにする。


 ――場所は移り、控室――

 その頃ドラバルトは、ファルスの試合をみて歓喜の余り壁を破壊していた。……って、おいっ!

 (やはりファルスは強い……本当に何者なんだ? ヒュウーマンにしては、強すぎる。それに……前から、神の臭いがしていた。
 それは美鈴やミィレインのせいもあるのかと。だがこの三日間、二人っきりになり……ファルスから神の臭いが強く……)

 そう思考を巡らせながら試合会場を眺めている。

 「んー……まあ、俺たちに悪意を持っている訳じゃない。それならば、なんであろうとも構わないか」

 そう言いドラバルトは、ニヤリと口角を上げた。

 「何が構わないって? というか、ここで何かあったのか……」

 ファルスはそう言いながら部屋の中に入ってくる。

 「いや、なんでもない。んー……あるか。さっき俺を狙ってきたから、返り討ちにしてやった」
 「ああ、なるほど。そのためか、至る所が破壊され焦げているのは……」
 「そういう事だ。それはそうと、対戦相手がかなり減るかもしれん」

 それを聞きファルスは首を傾げた。

 「どういう意味だ?」
 「恐らく俺を襲ったヤツラの中に対戦相手も居ただろうからな」
 「あーそういう事か。じゃあ下手をすれば、すぐにドラバルトとあたる可能性もあるって訳だな」

 そう言うとファルスは、ニヤッと笑みを浮かべる。

 「そうなる……今から、対戦が楽しみだ」

 ドラバルトはそう言いファルスを見据えた。

 「ああ、オレも同じだ」

 それを聞きドラバルトは、ニヤリと口角を上げる。
 そしてその後も二人は、自分たちの順番がくるまで話をしていた。