美鈴を襲った魔王崇拝派の一人がドラバルトの妹であるミャルモ・バッセルだった。
 それを聞いた美鈴は、複雑な気持ちになる。
 片やドラバルトは、なんでだと思い頭を抱えていた。

 そして美鈴たちは現在、そのことについて話をしている。

 「ドラバルトの妹が、ウチの命を狙った……」
 「そうらしい……すまん、ミスズ。まさか、ミャルモが……」
 「うむ……ミャルモは、母親のリャルモと別に暮らしている。それ故に、居場所は分かっていても監視ができんのだ」

 そう言いマルバルトは、つらそうな表情で俯いていた。

 「だが、そもそも……なぜ母上と別に暮らしているのです?」
 「ドラバルト……実はな。昔、お前のことで喧嘩したのだ」
 「そういう事か……俺のせいで。でも、それならなんで……ミャルモが魔王崇拝派を指揮している?」

 そうドラバルトに聞かれマルバルトは、ハァーっと溜息をつく。

 「リャルモは、お前を庇って出ていったのだ。そして、ミャルモは……お前をしたっておった。ここまで言えば分かるな」
 「じゃあ父上は……」
 「いや、お前を庇いたい気持ちはある。だが立場上、どちらにもつけぬ」

 そう言いマルバルトは、つらい表情を浮かべる。

 「それで、別居という事か……」
 「ああ……こればかりは、どうにもならんからな」
 「大変だね。ウチにできることがあればいいんだけど」

 それを聞きマルバルトは、美鈴に視線を向けた。

 「うむ……ミスズは、どっちの派閥につきたいのだ?」
 「どっちって……。ウチはスイクラムが嫌い、だからって……魔王を良いと云うのも違うと思う。だから……どっちの派閥も嫌かな」
 「なるほど……だが恐らく女神崇拝派は、ミスズを担ぎ上げるだろうな」

 そう言われ美鈴は、ムッとする。

 「ウチは、そうなったとしても断る。それで、どっちの派閥に狙われたとしても……女神も魔王も嫌だから」
 「ワハハハハッ……ミスズらしい。そうだな……まずは、ミャルモをどうにかする必要がある」

 そうドラバルトが言うと美鈴たちは頷いた。
 その後ドラバルトとファルスは、順番がまわってくるので控室へ向かう。
 それを確認するとマルバルトは、美鈴を見据える。

 「ミスズ……単刀直入に聞く、ドラバルトをどう思っている?」
 「そうだなぁ……乱暴なところはあるけど、優しいなぁと思える時もある」
 「そうか……そうだな。では、好きか嫌いでなら……どっちだ?」

 そう聞かれ美鈴は、ニコッと笑った。

 「それなら、好きかな」
 「それは、男としてか?」
 「……それはないと思う。ウチには、好きな人が居るから……」

 そう言い美鈴は、遠くをみつめる。

 「なるほど……その者は、ミスズの世界の者か?」
 「ううん……違います。この世界に来て出逢った人……スイクラムのせいで、離ればなれになっちゃったけどね」
 「……そのことをドラバルトは知っているのか?」

 そう問われ美鈴は、コクリと頷いた。

 「ドラバルトに逢った時に話しました」
 「そうなのだな……もしドラバルトが、ミスズのことを女性として好きと言ったらどうする?」
 「……」

 それを聞き美鈴の思考が停止する。そう、思ってもいなかったことを言われたからだ。

 「どうした? まあ……本人から聞いた訳ではないがな。ドラバルトのミスズへの接し方が、そのように感じたのだ」

 そう言いマルバルトは、少し考えたあと再び口を開いた。

 「フゥ……ドラバルトも、自分の気持ちには気づいておらんみたいだが」
 「待ってください。もしそうだとしたら……でも……どう応えたらいいか……」
 「うむ、今どうしろという事ではない。ただ、ミスズの気持ちを聞いておきたかっただけだ」

 そう言いマルバルトは、ニコリと笑う。
 しかし美鈴は、なぜか不思議な感覚に襲われていた。

 (ウチはエリュードが好き。だけど、なんだろう……。マルバルトさんに言われてから変だ。どうしよう……真面にドラバルトの顔をみれるかなぁ。
 ……と、いうか。まだドラバルトが、ウチのことを好きって決まった訳じゃない。そう、そうだよね……マルバルトさんの思い過ごしかもしれないし)

 そう思い美鈴は、気持ちを入れ替える。
 そしてその後も美鈴は、部屋の片づけが終えるまでマルバルトと話をしていたのだった。