しばらくしてピタッと花火が上がるのが止まる。
次の花火の打ち上げの準備をしているんだろうか、そんなことを考えていると林チーフが口を開いた。
「そろそろいい時間だし、降りるか。最後まで見てもいいけど腹、減ってるだろ」
「はい」
そこは素直に返事した。
お腹が空きすぎて今すぐにでもベビーカステラを食べたい気分だったからだ。
屋上の鍵を閉め、エレベーターに乗り込み一階まで降りる。
そして、会社を出ると林チーフが私の方に振り返り一言。
「大島、飯、食いに行くぞ」
「へっ……」
目を見開いたまま、思考回路が一時ストップする。
今のは聞き間違いだろうか。
都合のいい夢でも見てるのかな。
林チーフが私を食事に誘ってくれるなんて予想外で驚いた。
「そのアホ面は何だよ。まさか嫌とか言うんじゃないだろうな」
私の表情から何かを読み取ったのか、林チーフが眉間にシワを寄せる。
「そんなことは言いませんけど……」
「なら、早く来いよ」
一瞬、ホッとした表情を見せたあと、スタスタと会社裏の社員専用の駐車場に歩いていく。
ねぇ、林チーフ。
少しは期待してもいいですか?
今日、素敵な笑顔を見せてくれたこと、食事に誘ってくれたこと。
それと、花火にかき消されたあの言葉……。
『お前と一緒に花火が見たかったんだ』
取りあえず、食事が済んだら私の気持ちを伝えてみようかな。
これから何かが始まりそうな予感を胸に、林チーフのあとを小走りで追った。
END.


