「それでよかったんだろ?」
林チーフはプシュッと無糖の缶コーヒーを開けながら言う。
「はい」
コーヒーは飲むけど無糖は苦くて飲めない。
前に間違えて無糖のコーヒーを飲んだ時、あまりにも苦くてシロップを二つ入れたのを林チーフは覚えてくれていたんだ。
こういう細かな気遣いをしてくれるのも、いいなと思う要因の一つなんだよね。
プルトップを開け、喉に流し込むとほんのりとした苦みが口の中に広がった。
「あとどれくらいかかるんだ?」
私のパソコン画面を覗き込み聞いてくる。
「残り三枚分です」
取引先の住所の書かれている紙をパラパラとめくる。
私がやっていたのは、新規取引先の住所入力と住所表記の変更があった取引先の住所訂正。
面倒だけどこれをやっておかないと今後、仕事に差し支える。
だけど、それをやるのがどうして今日だったのか?という疑問は残るけど。
「そうか、終わったら教えてくれ」
林チーフはそう言うと自分の席に戻っていく。
コーヒーをもう一口飲んで気合いを入れ直した。
***
ようやく全てを入力し終わり、最終チェックも済みほっと息を吐く。
時計を見ると二十時前。
伸びをして首をポキポキと鳴らした。
もう、お腹が空きすぎて倒れそうだ。
そんなことを考えながらフロアを見回すと林チーフの姿がない。
「あれ?」
静かなフロアに私の声が響く。
「何があれ?なんだ」
不意に聞こえた声に心臓が跳ねた。
もう、急に声をかけるのはビックリするからやめて欲しい。


