夜空に咲く花火の下で

***

ふと気付いた時には、みんな早々と仕事を終わらせて帰っていて、残業しているのは私と林チーフだけになっていた。

花火大会か……。
あ~、艶々光る真っ赤なリンゴ飴が食べたいなぁと机に右頬を付けたまま目を閉じる。
花火大会やクリスマスとかそういうイベントがあるたびに彼氏が欲しいなと思ってしまう。

大島真琴、二十三歳。
私にだってそれなりに彼氏はいた。
大学時代、年下と付き合っていたけど、私が去年就職してからすれ違いが続き向こうが浮気しあっけなく別れて以来、刺激も何もない寂しい生活。
そんな私にも気になるというか憧れている人はいる。

林チーフこと、林政孝、二十九歳、独身。

学生時代は野球をやっていたらしく、髪が長いのは嫌みたいで黒髪の短髪だ。
目は切れ長で鼻筋の通った高い鼻。
ワイシャツを捲った時に見えた腕の筋肉に目が釘付けになった。
スーツの下に隠された身体はどうなっているんだろうと邪なことを考えたこともあったのはここだけの話。
とにかく、何かと目で追ってしまう存在だ。

「何サボってんだ」

「ヒャッ!」

突然の言葉と同時に、無防備な左頬に何か冷たくて固い感触がありバッと身体を起こす。

そんな私の慌てた姿を見てフッと口元に笑みを浮かべた林チーフは、「差し入れ」と言って缶コーヒーを机に置いた。
さっきの冷たいものの正体は缶コーヒーだったのか。
もっと普通に渡してくれてもよかったんだけど。

「ありがとうございます」

机の上に置かれた缶コーヒーは微糖だった。