夜空に咲く花火の下で

***

「真琴、手伝ってあげたいけど今日は子供と約束してるから」

ごめんね、とすまなそうに言う高木さん。
高木さんは既婚者で可愛い一人息子の和哉くんがいる。
今日は家族で花火大会に行くという話を前々から聞いていた。

「いえ、大丈夫ですよ。和哉くん、花火楽しみにしてるんですよね。だから早く帰ってあげてください」

「ありがとう。じゃあ、お先にね」

高木さんはフロアを後にした。
その後ろ姿を見送っていると、どこからか視線を感じる。

「あの~、私は用事があって……」

一年後輩の馬場さんが私をチラチラ見ていた。
さっきの視線は彼女だったのか。

「大丈夫、最初から馬場さんに手伝ってもらおうとか考えてないから」

「ホントですか?よかったぁ。今日は一度家に帰って浴衣を着てのデートだから定時には帰りたかったんです」

私の嫌味もさらっとスルーし、鼻歌交じりで片付けを始めた。
このリア充め!
私だって用事はないけど、定時で帰りたかったのにと心の中で文句を垂れる。

「それにしても災難でしたね。大島さんだって予定があったかもしれないのに、林チーフもひどいですよね。私、前から思ってたんですけど絶対、林チーフは彼女いませんよ!顔はカッコいいけど口は悪いし性格も歪んでますもんね。大島さんもそう思いません?」

馬場さんは同意を求めてきた。
どうせ私はデートする相手なんていないよ!っていうか、彼女の口から出た言葉は完全に林チーフの悪口なんだけど。

「えっ、いや……」

返答に困っていると、

「俺がなんだって?」

私の背後から聞こえてきた声に殺気を感じ、心臓がドキリと跳ねた。
これはまずいでしょ。