▫︎◻︎




 わたしが今日から働くことになったカフェの看板店員さんが目の前に立っている。その姿を映せば映すほど驚きでわたしの瞳が揺れるのがわかる。


「榊原七緒です。僕が君に業務を教えることになったのでよろしくね」


 ──さかきばらなお。目の前に立つ爽やかな彼から発された名前だ。
 ──榊原七緒。目の前に立つ見目麗しい彼がつける名札に書かれている名前だ。

 ついていかない頭の中で二度、名前を反芻しても全然追いつかない。

 同姓同名の赤の他人、ではおそらくないだろう。きっと、わたしが知る“榊原七緒”に違いない。


 まさかこんなところで、こんな格好の時に、クラスメイトと出会ってしまうなんて。それに加えて榊原くん、あなたは本当にあの“榊原七緒”ですか……!?