とある月曜日のジャーナル ~佐久間~

 北御門は面白い。
 北御門って言うのは俺の一つ年下の後輩にあたる、一緒に生徒会をしている人間の一人なんだけど。
 とにかく、こいつは面白い。
 別に俺は初めからそれを望んで、狙って北御門を会計に任命した訳じゃない。
 ただ単に日々の負担を減らしたくて、余計な考え事に時間を取られたくなくて、それだけの理由で例年通り、成績トップを任命しただけだ。
 でも、それは結構大正解だった。というか、運が良かった。
 まず何より、クソ真面目。こっちが嫌味かって思う位に真剣に仕事をする。
 おかげで適当にゆるくやっている生徒会も何とか機能を果たしている。
 北御門を生徒会に入れた――その点においては、俺は自分を最大限に褒めたいと思う。
 昔から自分で言うのも何だけど、要領のいい方だとは思っている。
 まず生まれからして父はちょっとした名の通った政治家なんかをしているし、経済的に困窮した事がない。
 本人たちが自由勝手気ままに生きているのもあって、俺も自由に自分の生きたいようにさせて貰えているし、今の所さしあたっての不満はない。
 世の中には明日食う物にも困っていたり虐待を受けていたりする子供もいる中、本当にラッキーだと思う。
 でも、傍から見たら俺のこの今いる環境は普通ではない、捉えようによっては『可哀想』ともいえるものなのかもしれないと時が経つにつれて思う様にもなって来ていた。
 それはそれで間違いない意見なのだと思う。
 つまり、どんな事象が起ころうとも、捉え方なんて人それぞれ、千差万別。
 人生なんて全部自分がどう思うか次第。それが俺の信条。
 とりあえず俺は今この与えられた人生を与えられた中で楽しんでいきたいと思っている。
 少し話は逸れたけど、そんな俺から見て、北御門は最初言った通り、本当に面白い。
 例えば俺が自分の好きな様に都合よくシステムを変えようとすると、いちいち真面目にそれに反発してくる。
 またある時には自分の生きやすさを犠牲にしても――つまり自分の意に反しても秩序を守ろうとする。
 真面目なくせに自覚無いうちに周りに結構喧嘩を売っているケースも多々ある。
 本当に見ていて飽きない。
 いつも何かと戦っているようだ。
 もっと楽にやればと先輩として忠告した事は一度あるけれど、一向に変化が見えない辺り、余り響いていないようだ。
 今日も城咲とたまたま並んで歩いている時、模試の試験結果を見ているのを見かけたのですこしからかってやったら、想像通りに食い掛かって来てくれて面白かった。
 何度も言うけど、北御門は本当に面白い。
 ちなみに城咲と組ませたのも良かったな、と思っている。色んな意味で。
 最初は単純にどっちも計算に強いタイプだからそうしただけだけど、思ってもいない方向でそれがいい結果を生んでいて俺としては万々歳、といった所だ。
 城咲は基本的にいつもうるさい。
 そしてそれを宥めるように奮闘する結果、北御門もうるさい。
 多分北御門は俺達の事をうるさいと思っているかもしれないけれど、俺に言わせれば北御門もそこそこ――というか、大分うるさい。自覚は無いんだろうけど。俺は俺達とは違う、何て思っているかもしれないけど。
 とはいえ、誤解のないように言っておくが、俺は北御門をかなり高く評価している。
 最初言った通り今の生徒会が回っているのはあいつが真面目に仕事をこなしてくれているおかげだ。
 おかげで俺は自由に動きが取れている。
 まあ、その為に上手くアイツを利用している所もあるんだけど。
 あ、そうそう、あと名前をからかうとムキになる。そこも面白い。
 でもここは流石にからかい過ぎると礼を失するという自覚があるので、ある程度の節度を守るようにしている。
 城咲が『きたみー』と呼んでいるのを見て俺もそう呼んでいいい?と訊いたけど、速攻で拒否された。
 冷たいやつだ。
 俺にだけそうじゃないんだって信じたい。うん、これは希望的観測での結論ではない。
 アイツがきたみ―呼び許しているの、城咲だけだし。
 とりあえずそう結論付けておこう。