生徒会が終わり、学校を出ると、私は、本屋に立ち寄った。
学校帰りだし、今日は、新刊のコーナーを見るだけと自分に言い聞かせながら、本を見ていた。
小説の棚に通りかかると、遠くで、いつも、見覚えのあるヘッドホンが見えた。
遠くからでも分かる。柳川君だ。
彼は、棚から代わる代わるに本を出しては、表紙を見ていた。
学校で読む、新しい本を探しに来たんだろう。
柳川君は、学校に居るときは、イヤホンだけど、登下校の時は、紺色のヘッドホンを付けている。
いつも、何を、どんな音楽を聞いてるんだろう。
いつも、どんな本を読んでるんだろう。
聞いてみれば良い。そんなの分かってる。だけど、出来ない。向き合うのが、怖いから。
また、あの時みたいになりたくないから。
そんな事を考えていたら、いつのまにか、本屋を出て、家に帰って来ていた。答えが出ない事を考えても仕方ない。今は、この夜を越えよう。また、自分に言い聞かせて、家に入る。
「ただいま」
今日もまた、夜が始まる。
家族が眠りに就いた頃、自室で進めていた勉強の手を止めて、パソコンとクローゼットに押し込んであった、マイクを出した。
いつもなら、寝られなくても、あの夢を見ると分かっていても、一度は、ベッドに入る。
だけど、今日は、一週間に一度の大切な日だから、そのために、準備を始める。
勉強机に付いた梯子を登り、ベッドの上にある隠し扉を開けて、階段を出す。
そこを、さらに、登ったところへ、慎重に、機材を運ぶ。
ここは、お兄ちゃんと私に一部屋ずつある、屋根裏部屋だ。
完全防音で、なおかつ、広い。
普段の作業は、連日、普通の部屋に居ない事を怪しまれたくないので、録音を大体、この部屋で済ませて、編集を普通の部屋でやっていた。
機材を運び終えると、急いで、運び込んだばかりのそれらを組み立てる。
ヘッドホンを付けて、パソコンとマイクの調整をする。
時間を見ると、二十一時四十五分。
後、十五分か。
部屋の小型冷蔵庫から、備蓄してある飲み物の中で、レモネードを出して、手元に置いた。
賞味期限を気にしないといけないが、コンビニのおにぎりやバランス栄養食、ゼリーも少々入れてある。
歌詞ノートをめくりながら、声出しをする。
時間が、残り五分ほどになったところで、声出しを終えて、画面の確認する。
動画の待機画面には、1の数字が表示されている。
今日も来てくれたんだ。
再び、ヘッドホンを付けて、もう一度、マイクの確認をして、画面の配信開始ボタンをクリックした。
「こんばんは!ソラだよ!」
配信視聴者数は少しずつ増えたり減ったりしていく。
でも絶対ゼロにはならない。
「今日、新曲投稿したけど聞いてくれたかな?」
コメントをちらっとみる。
(ソラの雰囲気にあってた)
そのひとことで胸がいっぱいになる。
コメントの主はアオさん。
配信をはじめてからずっと来てくれているひとだ。
「ありがとう。さて、歌っていこうかな」
この時間だけが、私がなりたい私でいられる時間なんだ。
この世界は私には息が苦しい。
なりたい自分、ありたい自分で居られないことがこんなに苦しいと気づいてしまったら、もうあの頃には戻れないんだ。
私はただ歌いつづける。
誰かに私の歌が届いてほしいから。
私が私を認められるようになりたいから。
色んなこと考えるけど、この時だけは全部忘れて歌う。
私はひとりの女の子。
ありふれてる日常で夢を追いかけるひとりの女の子。
学校帰りだし、今日は、新刊のコーナーを見るだけと自分に言い聞かせながら、本を見ていた。
小説の棚に通りかかると、遠くで、いつも、見覚えのあるヘッドホンが見えた。
遠くからでも分かる。柳川君だ。
彼は、棚から代わる代わるに本を出しては、表紙を見ていた。
学校で読む、新しい本を探しに来たんだろう。
柳川君は、学校に居るときは、イヤホンだけど、登下校の時は、紺色のヘッドホンを付けている。
いつも、何を、どんな音楽を聞いてるんだろう。
いつも、どんな本を読んでるんだろう。
聞いてみれば良い。そんなの分かってる。だけど、出来ない。向き合うのが、怖いから。
また、あの時みたいになりたくないから。
そんな事を考えていたら、いつのまにか、本屋を出て、家に帰って来ていた。答えが出ない事を考えても仕方ない。今は、この夜を越えよう。また、自分に言い聞かせて、家に入る。
「ただいま」
今日もまた、夜が始まる。
家族が眠りに就いた頃、自室で進めていた勉強の手を止めて、パソコンとクローゼットに押し込んであった、マイクを出した。
いつもなら、寝られなくても、あの夢を見ると分かっていても、一度は、ベッドに入る。
だけど、今日は、一週間に一度の大切な日だから、そのために、準備を始める。
勉強机に付いた梯子を登り、ベッドの上にある隠し扉を開けて、階段を出す。
そこを、さらに、登ったところへ、慎重に、機材を運ぶ。
ここは、お兄ちゃんと私に一部屋ずつある、屋根裏部屋だ。
完全防音で、なおかつ、広い。
普段の作業は、連日、普通の部屋に居ない事を怪しまれたくないので、録音を大体、この部屋で済ませて、編集を普通の部屋でやっていた。
機材を運び終えると、急いで、運び込んだばかりのそれらを組み立てる。
ヘッドホンを付けて、パソコンとマイクの調整をする。
時間を見ると、二十一時四十五分。
後、十五分か。
部屋の小型冷蔵庫から、備蓄してある飲み物の中で、レモネードを出して、手元に置いた。
賞味期限を気にしないといけないが、コンビニのおにぎりやバランス栄養食、ゼリーも少々入れてある。
歌詞ノートをめくりながら、声出しをする。
時間が、残り五分ほどになったところで、声出しを終えて、画面の確認する。
動画の待機画面には、1の数字が表示されている。
今日も来てくれたんだ。
再び、ヘッドホンを付けて、もう一度、マイクの確認をして、画面の配信開始ボタンをクリックした。
「こんばんは!ソラだよ!」
配信視聴者数は少しずつ増えたり減ったりしていく。
でも絶対ゼロにはならない。
「今日、新曲投稿したけど聞いてくれたかな?」
コメントをちらっとみる。
(ソラの雰囲気にあってた)
そのひとことで胸がいっぱいになる。
コメントの主はアオさん。
配信をはじめてからずっと来てくれているひとだ。
「ありがとう。さて、歌っていこうかな」
この時間だけが、私がなりたい私でいられる時間なんだ。
この世界は私には息が苦しい。
なりたい自分、ありたい自分で居られないことがこんなに苦しいと気づいてしまったら、もうあの頃には戻れないんだ。
私はただ歌いつづける。
誰かに私の歌が届いてほしいから。
私が私を認められるようになりたいから。
色んなこと考えるけど、この時だけは全部忘れて歌う。
私はひとりの女の子。
ありふれてる日常で夢を追いかけるひとりの女の子。



