わたしは弱い。誇れるような長所もない。

 けど、誰かの光になれるなら、もしわたしが誰かの支えとなれるなら……。
 広瀬くんの光になれたら……。

 この恋は叶わなくても、それでよかった。

 広瀬くんの後ろ姿を思い出す。

 いつも飄々としていて、どこか掴みどころがなくて、それでも優しさが滲み出ている人。
 そんな彼が、「ごめんね」なんて言った。
 きっと彼も、何かを隠していた。わたしと同じように。

 誰かを想う気持ちは、とても優しくて、同時にとても残酷だ。
 その優しさが時に刃になることも、彼は知っている人だった。

 そして、わたしはそれを知っていて嘘をついた。

 ごめんね、わたしって結局いつも自分のためだ。

 さっきまで晴れていた目の前の空はすっかり暗くなり、わたしを責めるような雨が降っていた。
 空を仰ぐと先の見えない雲の隙間から雨が音をたてて降ってくる。傘をさすこともなく、ただ雨に打たれながらわたしは家に帰った。