季節は移り替わって、もう春は終盤になっていた。
桜はとうに散り、梅雨の幕開けだ。
今日の空は真っ暗で、しとしとと雨が降っている。
四月始めのころみたいに、藍ちゃんと話しながら帰りの準備をしているところだ。
「ごめんね、今日早く帰らないといけないんだ~……」
パンっと手を合わせて申し訳なさそうに謝ってから、カバンを背負って教室を出ていった。
今日は火曜日だ。きっと妹さんの迎えがあるのだろう。
他の人もだんだん散っていって、残ったのはわたしと広瀬くんだった。
わたしは家庭学習用の教科書をカバンに詰め込みながら、となりで頬杖をついて外を見ている広瀬くんをちらりと横目で見た。
「……広瀬くん」
すっと細い瞳がわたしを捕らえて、「何か用?」とでも言うように目を細めた。
いつか言わないといけないと思っていた。
それも、なるべく早くに。これ以上、広瀬くんと関わる前に。
ただのクラスメイトとして、接していけるように。
この気持ちが、今よりも大きくなる前に。
どんなにそう思っても、どんどん好きになっちゃうんだけどね。
雨の雰囲気に教室が呑まれていく。
一瞬、静けさに包まれた。
広瀬くん。あなたのことが好きです。
だからこそ、わたしは言わないといけない。
真っすぐに彼を見つめて、口の端を持ち上げた。
「……大っ嫌い」
その言葉を放った瞬間、彼の顔が歪んだのが見えた。
胸がギュッと締め付けられる。昴は視線を逸らし、唇を噛みしめる。
ごめんね、そんな顔をさせたいわけじゃないんだ。
わたしだって言いたくなかったよ。
あとで嘘つきって言われちゃうかもしれないな。
けどそれでもいいや。
桜はとうに散り、梅雨の幕開けだ。
今日の空は真っ暗で、しとしとと雨が降っている。
四月始めのころみたいに、藍ちゃんと話しながら帰りの準備をしているところだ。
「ごめんね、今日早く帰らないといけないんだ~……」
パンっと手を合わせて申し訳なさそうに謝ってから、カバンを背負って教室を出ていった。
今日は火曜日だ。きっと妹さんの迎えがあるのだろう。
他の人もだんだん散っていって、残ったのはわたしと広瀬くんだった。
わたしは家庭学習用の教科書をカバンに詰め込みながら、となりで頬杖をついて外を見ている広瀬くんをちらりと横目で見た。
「……広瀬くん」
すっと細い瞳がわたしを捕らえて、「何か用?」とでも言うように目を細めた。
いつか言わないといけないと思っていた。
それも、なるべく早くに。これ以上、広瀬くんと関わる前に。
ただのクラスメイトとして、接していけるように。
この気持ちが、今よりも大きくなる前に。
どんなにそう思っても、どんどん好きになっちゃうんだけどね。
雨の雰囲気に教室が呑まれていく。
一瞬、静けさに包まれた。
広瀬くん。あなたのことが好きです。
だからこそ、わたしは言わないといけない。
真っすぐに彼を見つめて、口の端を持ち上げた。
「……大っ嫌い」
その言葉を放った瞬間、彼の顔が歪んだのが見えた。
胸がギュッと締め付けられる。昴は視線を逸らし、唇を噛みしめる。
ごめんね、そんな顔をさせたいわけじゃないんだ。
わたしだって言いたくなかったよ。
あとで嘘つきって言われちゃうかもしれないな。
けどそれでもいいや。
