「ら、藍ちゃん! 今日一緒にお昼、食べれる……?」

 お昼になって、今日はわたしから藍ちゃんを誘った。
 今まではずっと藍ちゃんから誘ってきてくれていた。けれど、今回はわたしから動かないといけない。

 藍ちゃんは目を丸くして、驚きを隠さないまま「いいよ」と言ってくれた。
 
 自分のお弁当を持って、藍ちゃんを待ち、一緒に中庭に行く。
 その間はお互い口を開かずに、無言のまま移動した。

 空いていたベンチに座ると、わたしはとなりを促して藍ちゃんを座らせる。

 しっかり座ったのを見てから……。

「「ごめん‼」」

 誰かと声が重なった。驚いて顔を上げると、藍ちゃんも頭を下げていた。
 あまりにも同時だったのが可笑しくて、わたしたちは二人そろって吹き出した。

「ふははははっ。アハハハハッ……!」
「ふふっ……あははっ」

 藍ちゃんに限っては涙を流している。そんなに面白かっただろうか。
 藍ちゃんの笑いがある程度治まったころ、わたしは改めて頭を下げた。

「ねえ、藍ちゃん。ごめんね。本当にごめん」

「ううん。昴が謝る必要はないよ。あたしも…………昴に謝らないといけないことがあるから」

 藍ちゃんに何かされた記憶はない。
 謝らないといけないことって何だろう。

「あたし、昴のこと悪く言っちゃった……」

 目を潤ませて、「ごめん」と連呼する藍ちゃん。
 
「そんなこと思ってない。ごめんね。あたしのこと殴っていいから……」

 藍ちゃんは優しい子だ。だからこそ、そんなふうに自分を責めさせるのは、あまりにも酷だった。

「ねえ、これからも友達でいてくれる……?」

「うん、もちろん!」

 藍ちゃんの、珍しく弱々しい声に、わたしは明るく返したのだった。