「綺麗だね……」

「うん、夜空は白色なんかじゃないけどさ、昼になったらきっと見れるよ」

 星が転々と輝いている。
 自分の存在を主張するように、暗さに抗うように。

「昴はさぁ、自分の名前、嫌い?」

「嫌いじゃないけど……わたしには程遠い名前だなってよく思う」

 嫌いじゃない。その言葉は嘘ではなかった。
 お姉ちゃんは全てをわかっているかのように、上を向いたまま独り言のように呟いた。

「昴のことだからさ、きっとキラキラしすぎてるーとか考えてるんだろうけど、そんなことないよ」

 わたしは、ふふっと笑うお姉ちゃんの横顔を見つめた。
 
「自分らしく輝けるようにって、誰かにとっての道標(ひかり)になりますようにって、そう願って付けたんだよ」

「誰かにとっての道標なんて、そんな大層な……」

「あたしの道標(ひかり)は残念ながら間違いなく昴です~」

 わたしの言葉にかぶせるように、軽く言ってのけたお姉ちゃんは、ふはは、と勝ち誇ったように笑った。
 それを見たらなんかムカッとして、無言でお姉ちゃんの腰あたりを叩いてやった。

「イタッ。なにすんのー! こらー!」

「お姉ちゃんがそんなこと言うから」

 そして二人で顔を見合わせて「しーっ!」と指を立てる。
 夜の静かな空気の中を、ただひたすら漂っていた。