今日の夕飯はミートソースパスタ。
 最近食べたなあと思ったけれど、大好きだし、たまにはいいよね……?

 しかも、前回はお姉ちゃんとわたしで作ったのに対し、今回はわたしだけだ。
 料理が壊滅的にできないというわけじゃないけれど、いつもお姉ちゃんに頼ってばっかりいたせいか、少し不安だ。

 お姉ちゃん特製のレシピはここにあるから、その通りに作ればいいだけ。

 パスタが完成したのは、それから20分後のことだった。

 

「お姉ちゃん、ご飯できたよ」

「お、この匂いはパスタかな? 楽しみだあ~」

 出来はいいとは言えないけど、このお姉ちゃんの顔を見られて嬉しかった。
 パスタ以外にはメニューはない。なにか作ればよかったかな、と少し後悔した。

 一品作るだけでもこんなに大変なのに、毎日何品も作っているお母さんはどれだけ大変なんだろう。
 朝からわたしのお弁当の用意までしてくれて、どれだけわたしのために時間を使ってくれていたのだろう。

 作ってくれて「ありがとう」
 食べられる環境であることに「ありがとう」と感謝することが、料理に対する礼儀なのだと、わたしはこのとき初めて知ることになった。



「いただきます!」

 お姉ちゃんがパスタを口に運ぶのを見て、わたしは恐る恐る感想を待っていた。
 口を動かすお姉ちゃんを見守るように、そっとお姉ちゃんの顔をうかがう。

 するとお姉ちゃんの顔がわたしの方を向いて、キラキラと目を輝かせていた。

「おいしい!」


 その言葉が聞けたことでわたしの顔も綻び、フォークにパスタを巻き付けた。
 味はやはり一緒なのだけれど、お姉ちゃんと一緒に作るほうがおいしいな、と思った。

 よく、「自分が作ったからおいしく感じるんだよ」というけれど、わたしは違うと思う。

 誰かと一緒に食べるからよりおいしく感じるのだ。
 これはあながち合っているとわたしは思う。