世界でいちばん優しい嘘を、嘘つきの君に贈りたい

 残る最終ゲーム。
 緊迫感漂うコートの中で、鋭いかけ声が響き渡った。

「有菜!」

「ハイッ」

 藍ちゃんと有菜ちゃんの見事な連携で、ボールは鋭く相手コートに叩きこまれた。
 ふらつくことなく軽やかに着地してガッツポーズする彼女たちは、すごくキラキラしてる。

 有菜ちゃんと藍ちゃんの両手がわたしの方に向けられて、一瞬ためらった。

 でもさっき言われた言葉を思い出して、勇気をだしてわたしもその手を重ねた。

「こっ、このまま頑張ろうっ!」

 わたしの言葉を聞いた二人は、少し驚いたような顔をすると、「もちろんだよ!」と力強くうなずいてみせた。

 続く後半戦。
 相手チームの方が得点は高いものの、かなりの接戦となりよりいっそう盛り上がりを見せていた。

 一回、二回とボールが上がって、あとはスパイク……! のはずだった。
 ボールが上がったところには誰もいない。

 その近くにいるのは……。

「しも!」

 わたしだ。

 わたしが三回目を任されたんだ。

 みんなの視線がわたしに集まるのを感じる。

 
 すっと上に飛んで、何度も練習したように勢いよく振り下ろした。
 
 相手チームはまさか返ってくるとは思っていなかったようで、ボールを受け止める人は誰もいない。
 体育館の床に静かに打ち付けられたボールを見て、わたしは思わず自分の手を見つめた。


 この場にいた全員が息をのんだ。

 
 そして無機質なブザーが鳴る。第三回戦は、わたしたちの最終試合は、終了だ。


「や、やったああー!!」

「え……。え⁉」

「まじ?」

 
 同じチームのみんなが顔を見合わせてそれからわたしを見た。


「しも‼ やったよ、勝ったんだよあたしたち!」

「今日のMVPはしもちゃんだね! 最高だったよ!」

 
 できるはずがないと思っていた。
 それは挑戦しなかったからだ。挑戦するのを恐れていたからだ。

 わっと歓声に包まれるギャラリーに、見知った人の姿があるのを見つけた。
 その人はわたしと目を合わせるとグッドサインを出して、そのまま出入り口の方へ歩いて行ってしまったのだった。


 ねえ、広瀬くん。見ていてくれたかな。

 わたし、できたよ。楽しむことができたよ。
 挑戦することができたよ。


 そして、周りにどれだけ支えられているのかを知ることができたんだ。